歩くたんぽぽ

たんぽぽは根っこの太いたくましい花なんです。

瞼の裏の丘

2017年12月06日 | 空想日記
寝ようと思って布団に入る。

電気を消し目を閉じる。

眼球が右往左往して瞼がぴくぴくしているのがわかる。

ごそごそと何度も何度も寝返りを打つ。

体の位置が定まらない。

手が違和感を覚え、足が痛い。

横になってみたり仰向けになってみたりして呼吸を意識する。

鼻が詰まっていて息がし辛い。

交感神経との折り合いがうまくいかない。

寝たい寝たいと強く思えば思うほど眠気が遠ざかっていく。

寝るのってこんなに大変だっけ?



仰向けで目を開く。

最初は真っ暗で何も見えないが、時間が経つとうっすら天井が見えてくる。

目を開けたままぼーっとする。

思考の川から何かを救い上げるでもなくただ眺める。

しばらくすると視界がぼやぼやして目を開けているのか閉じているのか分からなくなる。

それでもまだ寝ていないという意識はある。



また目を閉じる。

脳、頭蓋骨、額、眉毛、目、鼻、口、頬、耳の力を抜く。

そこではじめて顔の細部にいたるまで力んでいたことに気づく。

外側へ広がって行く瞼の裏の世界。

暗いはずなのに白い光が満ちていく。

そこに最初はうっすら、そしてだんだんはっきりと丘が見えてくる。

真緑の雑草に覆われた海の見える小高い丘。

そよそよと風が吹いている。

たまに現れるそこはいったいどこなのだろう。

その景色が見えれば大抵そのあとの記憶はない。


熊本城の近くにあるクスノキ
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