どっと屋Mの續・鼓腹撃壌

引き続き⋯フリーCG屋のショーモナイ日常(笑)

黒澤作品4本(生誕100周年記念上映)、鑑賞

2010年04月09日 15時12分21秒 | 映画
一昨日昨日と連続で観てきました(^_^) いやーやはりモノクロスタンダードとは言え、スクリーンで観ると迫力がありますねぇ…。あらためて溜飲が下がる思いです。

・姿三四郎
監督第一回作品です。黒澤さんの師匠である山本嘉次郎監督の下から離れ、「達磨寺のドイツ人」や「敵中横断三百里」などの脚本を書きながらも、戦時中の諸事情によりお蔵入りにされ、苦渋の果てに映画化を実現させた作品です。

さすがに今の視点でみると、テンポもゆるいし、?な演出もあるのですが(^_^;、スクリーンで観るとなかなか迫力ありました。やはり最後の決闘シーンは画角の取り方がすごくカッコ良いです(^_^)

面白かったのは、他の観客の反応。やはり高齢者の方が多いのですが、笑うところが意外で。門馬との試合で、三四郎に背負い投げされて壁にぶち当たるところで声を上げて笑っている人が何人もいました。ここ笑うとこ?と不思議な気持ち(^_^;

・蜘蛛巣城
「影武者」や「乱」などの後期戦国モノ大作のエッセンスが、すでにこの作品で完成されているのに驚かされます。馬の戦慄き、ティンパニーを鳴らしての重み付けなんか、みていてウットリします(*^o^*) 合戦シーンの壮大感やスピード感は物凄いです。

シェ-クスピアのマクベスをベースにしているのですが、今風にみると完全にホラー映画なんですよね。森のお婆さんが恐いです(^_^;

・どん底
ロシア文学のゴーリキーを原作として、日本の江戸時代幕末にアレンジし貧困な庶民を描いています。今までDVDでも何回みても良く判らない作品でした。映画音楽らしいBGMはまるで無し。淡々と会話劇が続くので、テレビでみていると途中で辛くなるんですよね。いつの間にか寝ていたり(^_^;

でもスクリーンで観ると、まるで違う!これは舞台演劇なんですね。群像劇でもあるので、明確な主人公はいません。そうかなと思えるのが、左卜全さん演じるお遍路のお爺さん。これが凄く良い味を出しているキャラで、見入ってしまいました。卜全は後々この作品が代表作と言っていたそうですが、頷けます。きっと過去には悪い事や嫌な事ばかりだったと仕草やセリフの端々で臭わせて、周囲の人に惚けたり、慰めたりしていく様に圧倒されました。これまで判らなかった作品の良さが少しわかったのは、スクリーンのせいか、私も年を重ねたせいなのか(^_^;

・羅生門
言わずと知れた、氏の代表作の一つですね。これも何回観たかわからないほどです。唯一のセットらしいセット、羅生門自体の巨大感に圧倒されます。存在感が半端じゃないです。

宮川カメラマンを起用しての、光と影のコントラストの効いた絵作りが素晴らしい。スクリーンでさらにフィルムで観ると、グラデーションも自然だし、色さえ感じ取れますね。モノクロ映画の美しさは、下手なカラー以上の豊かさを持っているとあらためて思わされましたねぇ。

もうホントに、どの作品もすごいスケール感があって見応え十分です。氏の凄さをあらためて感じさせられます。公開当時にリアルタイムで観ていたら、斬新で、実験的な映像もありで、観る度に楽しかったんだろうなぁと思いました。