どっと屋Mの續・鼓腹撃壌

引き続き⋯フリーCG屋のショーモナイ日常(笑)

Perfume、彼女たちから感じる「いき」と「中空性」

2015年01月04日 19時29分37秒 | TV
NHKで2日に放送していた「100分 de 日本人論」と言う番組を面白く見ました。

松岡正剛・赤坂真理・斎藤環・中沢新一ら各論者が、日本人の本質を解くオススメの一冊を紹介・解説し、議論するという構成。

収録場所は、都内某所、「本樓」と称する松岡氏の仕事場。

見るからに物凄い蔵書数に圧倒されます(^_^;

番組を見進めていく内に、これ、なんだかPerfumeに日頃感じていることだなぁと(^_^)

特に強くそう思えたのは二冊。
まずは松岡氏が紹介する『「いき」の構造

哲学者・九鬼周造が欧州留学から帰国して間もなく著した最初の作品とのことです。

外国にいることで、反って日本人であることを強く意識し、「いき」と言う美意識を哲学的な観点から掘り下げ大系化したもの。

「いき」を媚態・意気地・諦めという三つの要素で解き明かしていくという...。


それだけではなく、さらに微妙なニュアンスをもつ「いき」を解明するため、その他の要素や言葉をどんな関係にあるのか探っていったという。


ここで全てを紹介していく力量も理解力もない私ですが(^_^;、この内の「媚態」の解説に惹かれた次第。

本では『「いき」の身体的表現』として具体例を示している部分となります。

番組では、芸者や遊女のどこに「いき」な色気を感じるのか?下記のように解いていきます。
(1)姿はホッソリ柳腰(ただ立っているだけでなく、ちょっと姿勢を崩すのがポイント)
(2)ほそおもて
(3)流し目(過去の憂いを感じさせる光沢、軽やかな諦めと、凜とした張り)
(4)口は緊張と緩みの絶妙なところを狙う(憂いを感じさせて)
(5)ホンノリ薄化粧
(6)髪型はピチッとさせず、ちょっと崩したモノ
(7)着物はうすもの、下地が透けているモノ
(8)着崩し(襟足を見せるように引き下げた抜衣紋)
(9)湯上がりシチュ(上気した肌に浴衣を羽織って、ほつれ髪)

欧米人の示す、これ見よがしでアグレッシブなエロティシズムは野暮で下品と切り捨てます(笑)

この9項目を見ていると、Perfumeが浮かび上がってきませんか(*^o^*)

Perfumeの掟や、MIKIKO先生が創出・指導するダンスや演出に通底するものを感じます。

彼女たちに置き換えてみると...
(1)は美しく音さえも感じさせる姿勢とダンスに、(2)は他のアイドルにはない大人びた顔立ちに、(3)(4)(6)はパフォーマンス中に見せる表情と乱れた黒髪に、(5)はナチュラルメイクに、(7)はサラッとして薄めの生地を主に使う衣装に、(8)は下品にせずツボを抑えた露出に、(9)は激しく舞い踊るうちに上気して滴らせる汗に...。

江戸時代までの芸者や遊女って、今風に考えれば俳優やアイドルなどの芸能人に置き換えることもできると思うんですよね。

ファンだからそう思うのかもしれませんが、その根源的な日本人のDNAが好む要素をPerfumeはしっかりと守っているんじゃないかと(^_^)


もう一つは斎藤氏の紹介する『中空構造日本の深層

著者は心理学者である河合隼雄。

本は、日本神話から日本人の精神と、社会の特徴を読み解いていると。

彼はスイスのユング研究所に学び、心理療法を日本に根付かせた功績のある人。その療法のベースにある民族固有の昔話や神話に深層心理の構造が現れていることを踏まえ、河合は日本人と日本神話に当てはめて考察し研究したもの。

面白いなぁと思ったのは、古事記などの神話に登場する"謎の神"の存在。

神話では、神様が三神で一組みたいな登場をすることが多いんですよね。

例えば、イザナギから生まれたアマテラス・ツクヨミ・スサノオ

アマテラスやスサノオにはエピソードがたくさんあるのに、なぜかツクヨミは極端に少ないと。

同じような例が複数存在し、「それぞれの三神は日本神話体系のなかで画期的な時点で出現しており、その中心に無為の神をもつという、一貫した構造をもっていることが解る。これを筆者は「古事記」神話における中空性と呼び、日本神話の構造の最も基本的事実であると考えるのである」と分析。


確かにその通り(^_^;

「古事記」に代表される神話が好きで、関わるいろいろな本を読んできましたが、存在感たっぷりに登場し重要そう神様なのに、なぜか一人何もせず、そのままぞんざいにスルーの扱いをされているキャラクターが多数いらっしゃるんですよね。

そしてそれが、三神の内一神のみ登場するだけで何もしない存在を中空構造であると。日本人は、天と地・海と山・白と黒、そして今風でいえばデジタル的な0と1のように、二元論的だけでは世界が成り立たないのだと解いていきます。

その中心に曖昧で中性なものを起きたがる。触媒のように両極を結びつけて、何かを生成する役割を欲すると...。

Perfumeにおいて考えると、最初あ~ちゃんとかしゆかの出会いから始まったワケですが、広島アクターズスクール時代は、二者はあまりに似たもの同士で、互いに牽制し、時には嘘をつくほどのライバル関係であったということです。

おそらくこの二人だけでは長く保つとは思えないのですが、メンバーチェンジを経て、異質とも言えるのっちを迎え、結果的にこれが大きく作用・窯変し、奇跡的で強固なチームワークになっていったワケです(^_^)

ありがちなセンターポジション争いや目立ち加減を巡っての争いを、のっちは一人冷めた目で見続けていたというエピソードもあるように、この三人になってから徐々に固執しなくなり、Perfume全体をどう良くしていくかという発想にシフトできたからこそ、今があると思うんですよね(^_^)

あ~ちゃん・かしゆかから、ルーズで物事に固執せず、遅刻魔、そして今でも謎の多い存在として見られるのっち。自らも中身からっぽでPerfume以外長続きできるものがなく、これがなかったら野垂れ死にしているんじゃないかと言う彼女ですが(^_^;、彼女いてこそ成立したチームだったと思うし、中空的な存在として両極である二人を良い具合に馴染ませてきた役割なんだよなぁと思った次第です。

「いき」と「中空性」、浅い理解と部分的にしか見ていないとは思うのですが、この二つの要素を強く彼女たちから滲み出ていることを感じることができるんです。

世界的にも、これらがどこにも存在しないオリジナリティとなって、強くアピールしなくても欧米の人達にも伝わっていったのだと。

なかなか正月にふさわしい、味わいのある番組を拝見した次第でございます(*^o^*)