ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ソフィアの夜明け

2010-10-21 15:55:07 | さ行
「おれの明日は、まだかよ」
このコピー、すごくいいと思う。

「ソフィアの夜明け」72点★★★


昨年の東京国際映画祭で
満場一致でグランプリを取った作品です。


ブルガリアの首都、ソフィア。

家庭に居場所がない
17歳の少年ゲルオギ
なんとなく流れで
地元のギャング団に加わる。


いっぽう38歳のイツォは
アーティストを目指しながら
木工職人として働く
アルコール浸りの男。


どうにも人生うまくいかない
しょぼしょぼな2人は実は兄弟だった。

そして2人は
あることがきっかけで再会するが……。


描かれているのは
未来の見えないいまの時代、万国共通な
「若者のもがき」。

よくあるテーマではあるんですが
でもなんかこの映画には
ハッとさせられる「澄んだ」感覚があります。


このゲルオギのシーンとか
画としてみるだけで
伝わりませんかね、なんか。


映画の印象が
朝焼けの前の、澄んだ空気というか

そう、村上龍の
『限りなく透明に近いブルー』って感じ!


これは
ブルガリアという国の空気なのか

町のギャングや貧しい社会層を描いているのに
どこか整然と、透明な印象がある。

で、いつまでも記憶に残るんです。


また兄役のイツォを演じるフリストは
監督の幼なじみで
主人公のモデルなんだそうです。


自分で自分自身を演じているようなもので
そのラフさや自然さが
すごく魅力的なんですが

なんと彼は、撮影終了間際に
不慮の事故で亡くなってしまったそう。

なんだかここにも
不思議な運命を感じます。

ブルガリアって年間制作映画数が
7~8本なんだそうで、
確かにブルガリア映画って
初めて見たかもしれない。


乱立する無味乾燥な団地群
番長が生息する豊洲に似ていたり
風景を見ているだけで新鮮でもありました。


さらに驚いたのは
団地にあるエレベーターの構造。

見たら絶対「えっ?!」
なると思いますハイ。


★10/23からシアターイメージフォーラムで公開。

「ソフィアの夜明け」公式サイト
コメント (2)
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