ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

アメイジング・グレイス

2011-03-06 18:57:51 | あ行
あの名曲に、こんな背景があったとは
まったく知りませんでした。


「アメイジング・グレイス」68点★★★


18世紀イギリス。

裕福な商人の家に生まれた
心優しき青年
ウィリアム・ウィルバーフォース(ヨアン・グリフィズ)は

聖職者になるか
政治家として世を変えるかの選択で
悩んでいた。


迷った彼は恩師である
牧師ジョン・ニュートン(アルバート・フィニー)を訪ねる。

かつて奴隷貿易船の船長をしていた
ニュートンは

その経験と懺悔の気持ちを
名曲「アメイジング・グレイス」の歌詞で
表した人物。

ニュートンは
ウィルバーフォースに告げる。

「政治家として、イギリスから奴隷貿易船を一掃しなさい」

師の言葉にしたがい
奴隷貿易廃止のために
活動を始めたウィルバーフォースだったが
その道のりは、想像を絶する困難の連続で――?!



奴隷貿易廃止に生涯を捧げた
政治家ウィリアム・ウィルバーフォース。

意外とイギリスでも知られていないという
この偉人の闘いを
濃い密度で描いた作品です。


冒頭、疲労した馬に容赦なくむちを打つ男を
通りすがりのウィルバーフォースが
止めに入る、というシーンがあるんですが

これが実に象徴的で
うまい導入だと思いました。


ああ、この人は
弱者を見過ごすことができない優しさ

理不尽に虐げられるものがいる現実への
怒りに満ちており

それが政治活動の
モチベーションになっているんだなあ、と。


法案を出してはくじかれる
彼の苦しみは
「動物好きな人間が、殺処分問題を直視できるか」
という苦しみにも似ていて

善を尽くそうと挑むほど苦痛に陥る
「心の善き人」に
かなり共感してしまいました。



世の中を変えようするときに
法案がなかなか通らないといって
諦めたり、投げ出したりしちゃいかん!という
喝でもありますな。

この映画、見るべき人は
いっぱいいるんじゃないでしょうか。



★3/5から銀座テアトルシネマで公開中。ほか全国順次公開。

「アメイジング・グレイス」公式サイト


そして
この映画のもうひとつの見どころは
牧師ジョン・ニュートンとウィルバーフォースの関係。


おなじみ
週刊朝日「ツウの一見」で
日本基督教団の総会議長で牧師の
石橋秀雄さんにお話を伺い

名曲「アメイジング・グレイス」が生まれた背景が
より明確になりました。

3/15発売と思います。
ぜひご一読を!
コメント (2)
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