衝撃的で印象深いタイトルは
主人公の少年がウェブ上に書いている
詩に登場する人物たちのことです。
「名前のない少年、脚のない少女」57点★★
ブラジルのなかでも
移民の歴史によって
ドイツ文化が残る田舎町。
都会から遠いその町に住む少年は
自分の詩を
ネットに投稿している。
そんな彼は町である青年と出会う。
彼は恋人の少女とともに
自殺を計ったものの
彼女だけが死に
自分は町に戻ってきたのだ。
少女は生前、ネット上に
自分が撮った映像を遺していた。
もうこの世にいない彼女の笑顔が
ネットのなかで
何百回も何千回も再生され
生き続けている……。
少年は次第にそのバーチャルな世界に
引き込まれていき――。
監督のエズミール・フィーリョは28歳、
原作者であり、少女の恋人役の
イズマエル・カネッペレは32歳。
若い作り手による
みずみずしく類のない
ティーンエイジャー映画でした。
特に
ネット世代の感性をとらえた点が新しく
自分の残像をネット上に置いたまま
死んでしまった少女、というのは
ドキンとする設定でした。
最近、よく思いますもん。
自分を含めて
書き手が死んだあとも
ブログやYouTubeの画像はネット上に残り続ける。
あと何十年かすると
ネット上はそうした人たちの
墓場のようになるのかな……と。
あと
おもしろかったのが監督が
出演者たちを探すのに
舞台となるドイツ村地域に住む子たちの
ブログやフォトログなどを
調べたという話。
地元にいることの
リアリティが欲しかったと同時に
彼らがどのように自分を見られたがっているか
また
書かれたブログで
どのような心情にいるか、などが
わかったんだそう。
これは新しいオーディション方法ですねえ。
ただ
若々しい作品だけに
青春は遠くなりにけり、な身には
伝わりにくい感覚もあり
少々うつらうつら……
試写室には
より青春から遠い年配のかたがたの
大いびきも響きわたってました。
若い時代に見たかったなあ。
★3/26からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。
「名前のない少年、脚のない少女」公式サイト