ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

イリュージョニスト

2011-03-22 21:48:33 | あ行
本年度アカデミー賞では
惜しくも「トイ・ストーリー3」に破れましたが
私はこっちを推しますねえ。


「イリュージョニスト」80点★★★★


自ら監督・主演した
「ぼくの叔父さん」(1958年)で
主人公ユロ氏を演じ
いまも世界中に愛されているジャック・タチ(1907~1982)。


彼が遺したオリジナル脚本をもとに
作られたアニメーションです。


1950年代のパリ。


手品師のタチシェフは
手品の小道具でもあり
唯一のパートナーであるウサギとともに

各地を旅しては
マジックを披露していた。

ある日、彼はスコットランドの離島で
貧しい少女アリスと出会う。

タチシェフのマジックを見た彼女は
彼を「魔法使いだ」と信じ
島を離れる彼を追いかけてくる。


そして二人の
奇妙な同居生活が始まるのだが――。



もう、ジャック・タチファンとしては
泣き笑いなほどに嬉しい映画でした(笑)


フランスらしくセンスのいい
シックな絵も美しいし


印象はハッピーというより
どちらかというとほろ苦い。

でも
コミカルで、優しさにみちている。


そんなジャック・タチのスピリットが
ちゃんと継承されいるんだもん!


映像の美しさは
実写世界を完全に凌駕してますね。


またタチシェフ氏が驚くほど
動きもテンポも
ユロ氏にそっくりなんですよ。



のっぽな体にトレンチコートの
ひょうひょうとした風情。

街から街へと旅をし
私生活の見えない、つかみ所のなさ。


子どもとの距離感は
あくまでも父さんでなく
叔父さん。


今回は旅先で出会った少女が
彼についてきて
一緒に過ごすようになるわけですが

そんなおとぎ話性が
アニメになることでより生きている感じ。


まあ唯一気になるのは
この娘が
ちょっといけすかないところなんですが(笑)


手品師、というある種の道化としての
タチシェフの立場と
もの悲しさもバッチリ表れている。

これぞリスペクトの完成形!

お見事でした。


★3/26からTOHOシネマズ六本木ヒルズほかで公開。

「イリュージョニスト」公式サイト
コメント
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