先日、3月16日、ジャクソン・ブラウンのコンサートに行って来ました。場所は大阪のフェスティバルホールです。大阪の方には馴染み深いフェスティバルホール。大阪のコンサート会場と言えば、昔は四ツ橋の大阪厚生年金会館の名前がすぐに上がりました。
サンタナの傑作ライブ「ロータスの伝説」が収録された場所であり、エリック・クラプトンが初来日から暫く大阪と言えばここを使いました。厚生年金会館が庶民的な大阪のコンサート会場であれば、より立派な大阪が誇るコンサート会場がフェスティバルでした。
水の都・大阪は中之島にあるのがフェスティバル。カラヤンとベルリンフィルがここで演奏していますし、1976年のオリビア・ニュートン=ジョンの初来日もここでライブ盤の収録が行われています。シカゴの初来日を収録した日本だけの企画盤「ライブ・イン・ジャパン」もここでの録音。演奏の合間に「オオキニ!」とメンバーが言っているのも確認できます。(笑)
また、ディープ・パープルの世界的に有名になった「ライブ・イン・ジャパン」も、ジャケット写真のおかげで武道館ライブだと思っている方もいるのですが、実は半分以上がこのフェスティバルホールの録音なのです。ジャズにおいても、マイルス・デイビスの「アガルタ」「パンゲア」の両盤の録音が、ここでされています。
このフェスティバル、実は2008年に閉館となり、取り壊わされました。その際、山下達郎が「ここを壊すのはカーネギーホールやオペラ座を壊すのと同じこと。愚行です」と語ったのは有名です。その後2013年に現在のホールがオープンしたわけですが、僕はこの新しいフェスティバルに行くのはこの日が初めて!
阪神・淡路大震災を経験して新築した家にダメージを負った僕。その後長らく関東で暮らし、東日本大震災をも経験し、現在大阪に戻って来た僕は2年前に、これまた建て替えられた大阪厚生年金→現オリックス劇場にも足を運びましたが、これで大阪の二大ホールの現在の姿にやっと触れることができたのです。
さて、ジャクソン・ブラウンですが、彼はウエスト・コースト・サウンドを代表するアーティストであり、イーグルスのグレン・フライやJ.D.サウザーと同じアパートに住んでいたこともあります。イーグルスのデビュー曲「テイク・イット・イージー」は彼の作品であり、ブルース・スプリングスティーンとは、長い交友があります。ジャクソン・ブラウンは「70年代最高の詩人」と呼ばれ、男女のロマンス、心の機微を詩的な言葉で表せば、この人の右に出るものはそういない。心の奥深くにまで届く歌。それが彼の持ち味です。
それなのに、ロックの殿堂入りまで果たしているのに、1度もグラミー賞には縁がありません!
来日直前に発表したニューアルバムについて、「海はプラスチックのゴミだらけ、放射能汚染水は平気でたれ流し、グリーンランドの氷壁は溶け続ける。貧しい者と富める者の格差は広がり続け、抗議の声をあげれば要注意マーク。僕なんかいつ消えても不思議じゃないよ。でも、どんなに遠回りになっても、あの愛と平和の理想を僕らは探していかなきゃね。このアルバムを聴いたら昔からのファンは怒るかな? だって僕は言いたかったんだ。もう気楽になんて言ってられない時代だって。たとえ自分の大ヒット曲のイメージを修正してもね」と、語っていました。
前回の来日は2010年でしたが、待望の単独公演は7年ぶり。僕の青春時代には欠かせなかったアーティストの公演を、もう1度観ることができて良かった。この日のチケットは1日で完売したそうです。大阪にファンが多いと言われるだけあって、昔ながらの彼のファンが集まるのだろうと思っていましたが、50代を中心としたファンで超満員でした。彼が暗転したステージに登場した瞬間、ものすごい拍手でした。
ジャクソン・ブラウンのコンサートは、身体で感じるコンサートではありません。歌の歌詞の意味を感じ、いろいろなことに思いを巡らせる時間なのです。「日本に来るたびに、みんなが僕の歌や話を理解してくれているだろうかと思う・・」と、彼自身が今回のコンサートでも、聴衆に向って語っていましたね。
オープニングは、96年のアルバム「ルッキング・イースト」収録曲「The Barricades of Heaven」。3曲目「The Long Way Around」の前には、「小さいころ、家の近くに鉄道が通っている橋があって、そこでよく遊んだよ。そこを通過する時に列車が減速するので、飛び乗る人たちがいてね。列車に無賃乗車しながら移動する“ホーボー"と呼ばれるたくさんの人が、そこで電車に飛び乗って行った。大恐慌もあって、無賃乗車しながら、みんな仕事を探していたんだ。次の曲はそんな彼らに捧げる曲。」と、曲紹介を。彼は普通のスピードで英語を話すので、どれだけの人数の人がMCを理解しているのだろう?彼はステージでも話をするのが、とても好きなのです。
数曲を演奏したところで、次の曲のためにギターをチェンジした時、場内から彼のコンサートならではのリクエストが飛びました!「Late for the Sky」。一瞬考えた後、ギターを置いてピアノに向かってリクエストに応えてくれました。場内大歓声。この後「For A Dancer」「Fountain of Sorrow」の2曲を続けて演奏。大いに盛り上がったところで「Thank you. 15分の休憩をはさんでまた戻ってくるよ。」と、前半を終了しました。
第二部では彼がこれまで一貫して発して来たメッセージを伝える、コンサートのハイライトとも言える、ニューアルバムから「If I Could Be Anywhere」「Which Side?」「Standing In the Breach」の3曲が続きました。
「次はニューアルバムからの曲。カリフォルニアも日本も同じ海に囲まれている。海は地球の2/3を占めているし、僕たちが呼吸をする酸素も海から来る。しかし、海の中には死にゆくところ、生き物が生息できない所もある。だから自分たちを守るには、海も守らなければならない。」と、「If I Could Be Anywhere」の演奏をスタート。
続いて「Which Side?」を、感情を抑えるように演奏し、淡々と歌う。
「Standing In the Breach」の冒頭では、「大災害にあった時、世界がどんな対応をするのかを書いた曲。フクシマのような災害があったことや、原発への疑問などを話すことすら規制するような法律が最近はある。人間の歴史の中で一番大きな大災害は貧困なんだ。世界中の問題として解決しなければならないことだ」と語りました。
大地が激震に襲われ
自分たちが踏みしめる土台がまっぷたつに裂けたとしても
私たちはみんなで集まって、また元に築き直すことだろう
そしてすぐそばにいる生き残った者たちを助けようと駆けつけ
自分たちの世界を取り戻そうとするだろう
難局にあたって
貧困に苦しむ人たちがあまりにも大勢いる一方
王様のように暮らしている人たちもいる
現実の人生を全て受け入れることで
安らぎを見出す者もいるだろうが
彼らがどれほど覚悟をしようと、私は決して理解することはない
誰かの命を助けるために他の誰かの
命を奪ったりするようなことがどうして出来るのか・・・
ラストはもちろん、「Running on Empty」。そしてアンコールに時間一杯応えての10時ギリギリまでの3時間のコンサートでした。
昔はアンコールの拍手が鳴り響いたら、会場内が明るくなっても拍手を止めなかったのが、彼の大阪のファン!明るい中、彼が出てきてもう1曲歌ったこともありましたが、さすがにみんな大人になって体力的にきつくなったのか、アンコールの拍手もあっさりと終わりました。
もう1度、次にはいつ来日してくれるのだろう。そう思うファンは僕だけではないと思います・・・。
ジャクソン・ブラウン大阪公演2015 3.16
SET LIST
PART1
O1 The Barricades of Heaven
02 Something Fine
03 The Long Way Around
04 Leaving Winslow
05 These Days
06 Late for the Sky
07 Shaky Town
08 I’m Alive
09 You Know The Night
10 For A Dancer
11 Fountain of Sorrow
PART2
12 Your Bright Baby Blues
13 Rock Me on the Water
14 If I Could Be Anywhere
15 Which Side?
16 Standing In the Breach
17 Looking East
18 The Birds of St. Marks
19 The Late Show
20 Doctor My Eyes
21 Running on Empty
Encore
22 Take It Easy〜
23 Our Lady of the Well