青春タイムトラベル ~ 昭和の街角

昭和・平成 ~良き時代の「街の景色」がここにあります。

感激!アーノルド・パーマーとの対面!

2022-12-14 | 素晴らしかった興行・イベント

その出来事は1993年3月28日のことでした。僕が従弟の結婚式に招かれ、成田の日航ホテルに前日入りした時のことです。せっかく東京(成田は千葉なんですが、関東は全て東京と思っていました)に来たのだからと、東京に住む友人をホテルまで呼び出し、旧交を温めようとしていました。

待ち合わせロビーに向おうと、階下に降りるエレベーターに。扉が開き、正面にあった花屋さんに目がいった瞬間、まるで雷に打たれたような衝撃が身体中に!そのお店の前にウインドブレーカーを着て立っている人物の後姿を見ただけなのに、衝撃を受けてしまったのです。横に回り込んで顔を見ると、何と!ゴルフ界の王様、アーノルド・パーマーでした。(彼なくして、1970年代以降のゴルフ界は無かったでしょう。彼の人気がツアーを盛り上げ、TV放送が始まり、賞金が上がり、ゴルフ場が作られ、競技人口が爆発的に増加し、世界中でゴルフが愛されたのです。)



体格といい、どう見ても本物です。緊張感に耐えられなくなり、視線をそらした先にはゴルフのシニアツアーの大会のポスターが。開催日は・・・今!ポスターにはパーマー、リー・トレビノ、ゲイリー・プレイヤーの世界の3強の顔が…。心臓はバクバク!身体は硬直!ゴルフの生きる伝説、歴史が自分の目の前に立っている!決して周囲を威嚇するような雰囲気ではないのですが、自分の尊敬する人物だけに、その風格・威厳というものに圧倒されました。

当時60歳前後というのに熊のような腕。TVで見て想像していたより遥かに大きな体躯。でも表情は人の良さが滲み出ています。ほんの数秒でしたが足が震えて動かない。こんなチャンスは人生で二度とないと思っても、固まってしまっている自分。

パーマーも変な若者(当時は)が、自分の横にいるのに気が付いたのでしょう。何と彼の方から「どうしたんだい?」と言葉をかけてくれたのです。おかげでやっと自分の口が動いた!「ミスター・アーノルド・パーマー?」と言うのが精一杯の私に、「YES」という答えが返って来ました。

私は躊躇いもなく、「お食事ですか?」と質問。「そうだよ」と言う彼に、「ぜひご一緒させて頂けませんか?僕はあなたを1975年にTVで見て以来の大ファンです。あなたを見て、ゴルフを始めました」とお願いをしました。パーマーの熊のような大きな手で、私の背中を叩き、「OK!小雨の中の試合で身体が冷えているんだよ。」と言ってくれたのです。テーブルに向かい合って、パーマーはサンドイッチとコーヒーを。僕も同じものを注文しました。

私は迷惑も顧みず、1975年、学生時代にラワンの木材とかまぼこ板でパターを作り、自宅近くの田んぼでゴルフらしきものを始めたときから、今日までのゴルフ歴を語りました。パーマーは時々声を出して笑ってくれました。

そこへ今度はグランドスラマー、ゲイリー・プレイヤー選手が「楽しそうだね。私もいいかな?」と席につき、奇蹟のようなコーヒータイムを僕は過ごしたのです。そして言いたくても言えなかった一言が、ついに私の口から飛び出しました。

「僕のスイングを見てくれませんか?もっと上手くなりたいのです!」

 

アーノルド・パーマーがどれほど偉大で人気者だったかを示すエピソードは山ほどありますが、最近のゴルフファンはご存じないでしょう。僕の好きなエピソードを1つご紹介しましょう。1962年のコロニアル・ナショナル・インビテーションで、パーマーは18ホールのプレーオフを戦っていました。9番でグリーンを外し、リードを保つためには難しいアプローチが残りました。彼が打とうとした時、完全に沈黙していたギャラリーの中で小さな男の子が母親に話しかけたのです。パーマーはボールから離れ、その子を見つけ、にっこり笑った。他のギャラリーは、その母親を睨みつけ、「しーっ」とやった。パーマーが再びアドレスした時、ばつの悪い思いをした母親が男の子を叱りつけた。パーマーが打とうとした時、叱られた子供が泣き出した。パーマーはまたボールから離れ、あたりを見回してクスクス笑い出した。今度はパーマーの気分に合わせて、ギャラリーも一緒に笑った。

子供が静かになったので、パーマーはプレーを再開。ところが、ショットを打つ動作に入る前に、背後から息が詰まったような音と、助けを求めるくぐもった叫び声が彼には聞こえた。パーマーが振り向くと、さっきの男の子が顔を真っ赤にしている。困り切った母親が、男の子の口と鼻をがっちりと手で塞いでいたのです。パーマーはまたもあの有名な笑顔を浮かべて、歩み寄ってその子の頭を撫で、母親に向かって言った。「窒息死させないでね。そんなに大したことじゃないんだから。」ギャラリーはみんな声を上げて笑った。息が出来るようになった少年は静かになった。パーマーはボールの所に戻り、カップから数センチの所に見事に寄せてパーを取り、勝利に向かって進んだのです。



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