先生のお庭番 | |
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徳間書店 |
朝井まかてさんの新刊が出たらしいと聞いて本屋に行くと夏にも新刊がでていたじゃないですか。
さて、この作品、今までと違うのがその登場者。
時代小説には変わりありませんが、歴史上の人物の周りにいた人物を通して物語が紡がれていきます。
その歴史上の人物とは「シーボルト」。長崎の出島を舞台にしています。
長崎は今週も出張に行きますが、縁がある場所。言葉も場所も頭に浮かべながら読みました。
植木商で丁稚奉公をしていた熊吉は、出島のオランダ人シーボルト(作品中ではしぼると先生)が作ろうとしている薬草園の世話をするために召し出されます。
しぼると先生はやぱん(日本)の豊かな草木を本国に送ろうしているので熊吉がアイデアを出すのです。
地の果てのやぱんの豊かな自然と文化をヨーロッパに紹介したいと願うしぼると先生、
遊女から愛され結婚した子どもっぽいけどまっすぐな奥方、
アフリカから連れてこられた召使のおるそんは長崎弁を話し…、
熊吉と奥方とおるそんの生活が愛おしくていつまでも続いて欲しいと願いました。
反面…しぼると先生ぇえええ。
↑この微妙な距離感(しぼると先生と読者のか)が、史実の事件に向けてがちゃがちゃと
ずれていくのを感じて、そして…。
読み手の私はハッピーエンドを願いながらも、虫の音を嫌う先生に越えられないものを
感じ、この後の展開を思ったのでした。
切なくも暖かいものを感じ読み終える一冊です。