Dalla Cucina

イタリアの旅の記憶を中心に
あれこれ書いています。

アッチデンティーな物語☆長い長い夜

2011-10-11 01:26:00 | ☆イタリア 記憶の風景


 ↑はドブロヴニク、城壁の崖にある人気BAR。
 突き出た崖のその先では 青い海にむかってダイビングをする若者たち。
 中にはへっぴり腰で、何度も引き返す気弱な若者もいて
 それを叱咤激励するBARのお客や、観光船の人々で賑わっていました。

 

 と、前日まではこんな優雅な気分を味わっていた私たち。
 一夜明けてまたもう一夜が過ぎるその頃、
 Veneziaをめざした列車の中ではえらいことになっていたのです。

 この先の写真は当然ながら無く、想い出いっぱいのドブロヴニクの写真を
 順不同に織り交ぜながら 話を続けてまいります。



 さて、食堂車の人からこの電車の行き先を聞いてたまげた私と相棒は
 ひとまず自分たちの車両へと戻りました。
 「この電車はショーペロでVeneziaには行かない」
 という情報は 徐々に伝わっていたらしくざわめく車内。

 私たちと反対側の席には Veneziaへ行くというクロアチアのご夫婦がいました。
 幸い、英語で話してくださるので、クロアチア語で話す車掌さんの言葉を
 教えてもらったり、ずいぶんとお世話になりました。
 我々のグループには英語を勉強している友人もいて助かったのも事実。
 彼女が丁寧に感謝の言葉を語り、クロアチアのご夫婦は
 「よっしゃ、まかしとき! いざとなったら止まったところから
 タクシーを手配するさ」と 頼もしい限りです。



 車掌さんも、みんなから質問攻めです。
 これは国際列車だし、切符を売っているのだから、何とかなるよね?と
 言われても「さあ、わからない」と答えるばかり。

 「とにかくこの電車はイタリアには行かないのだ」と言うのです。

 窓の外は真っ暗。でも電車は走り続けています。
 「どうか このままVeneziaへ連れてって。でないと友人はローマから飛行機に
 乗れない!」

 だんだん口数が少なくなる友人、きっと心配で心がはりさけそうになって
 いたのでしょう。



 灯りが少し暗くなって 夜行列車特有の静けさが訪れたころ、
 後方車両から ダッダッという複数の足音が近づいてきました。

 パスポートコントロールのようです。
 でも 調べる人たちは軍服を着ているように見えました。
 腰には重そうなものを身につけています。
 え?ひょっとして武器?・・・
 アーミーカラーの彼らは背が高く、私の記憶の中では
 暗い緑色一色に包まれた 一シーンとして残っています。

 映画みたい・・・

 そして ひとつ国を超えたのだ、と実感しました。



 親切な隣の席のクロアチアのダンナさんが 何やら情報を得たようで
 私たちに言います。
 「この電車が次に止まったら、乗り換えるので荷物を用意しておくように」
 「ええっ、その先は?」
 「わからない。そして乗り換えた電車が止まったら、すぐ降りるように。
  私が合図するから。」
 とのこと。

 
 


 電車は走り続けています。
 いつ止まるのかわからない状態での睡眠はできるわけもなく、
 疲れだけがたまっていく、そんな感じでした。

 そして、何時間か過ぎたころ、キシ~ンとブレーキがかかり、
 電車は停車しました。
 「降りるぞ。早く!」とクロアチアダンナ。

 私たちの電車には、想像以上のたくさんの人が乗っていました。(びっくりするほど)

 彼は次の電車がどんなものか知っていたのかもしれませんが、
 「早く!」と促してくれたおかげで、コンパートメント車両の一室に
 無事に座ることができました。
 実はこの部屋には外国人男性(当たり前ですね)が先客で座っていて、
 アジア女性のグループが荷物ごと入り込んできたので、ずいぶんと驚いたようすでした。
 (次の停車まで無言で固まっていました。)
 入口のカーテンを閉めて、ほぼ真っ暗な中で次の停車まで待機です。

 
 


 乗り換えに手間取った人々が廊下を荷物を持って行きかう物音が
 長い間聞こえていました。
 乗り換えた電車は たぶん車両が少なかったのでしょう。
 廊下にも人があふれ、荷物で通路は塞がれ、クロアチアのご夫婦とも
 離れ離れになってしまいました。

 でも 乗り換えるとき
「次に降りるときまた合図できたらするね。チャオ!」と言ったクロアチアダンナ。
「チャオ」はもはや、世界共通語になっているのですね。

 コンパートメント席では、さすがにうとうととしてしまいましたが、
 何時間かの夢うつつをまたしてもブレーキのきしむ音が打消しました。

 電車を降りなければなりません。
 こんなにも人が乗っていたのかとびっくりしながら、どこだかわからない
 小さな駅に降り立った私たちを待っていたのは何と2台のバスでした。
 たった2台では当然全員が乗れるわけはありません。
 「とにかく乗って」というバスの人に、このバスはどこへ行くのかと聞いたら
 「トリエステ」という答えが返ってきました。

 トリエステはイタリアの街。
 ということは、このバスでイタリアへ入れるということ!

 積み残しの人もいたけれど、30分ほどバスに揺られて着いた「トリエステ」。
 夜明けの紫色に染まった坂の街は、どこか淋しげに見えました。

 バスを降り、人の流れに沿って行くと、そこは駅でした。
 Venezia行きの電車が私たちを待っていて、みんながそれに乗り込みます。

 「よかったね」とはいえません。
 だってVeneziaは まだまだ先なのです。

 なので、次回へまだ続きます。
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4 コメント

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Unknown (けいこちゃん)
2011-10-11 20:47:58
まるで戦時中の話のよう!!

どうやって戻ってこれたかまだどきどきなのね!

そうそう10月末に妹を連れて駆け足旅行でヴェネツイア、フィレンツエに行くのだけれど、この電車がね、、、やっぱり心配よ。

1月の旅行のときもフィレンツエ、ミラノ間が2時間遅れ。

長い距離ほどどんどんずれて、ローカル電車の方が心配ないそうよ。

もっともどれだけ遅れてもよいように計画を立てているのでまあいいかーーという感じね。
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Unknown (forchetta)
2011-10-13 00:26:22
♪ けいこちゃん

今日「世界の車窓から」で ちょうどザグレブあたりが放送されました。
のどかな田園風景がどこまでも広がっている感じ。
それが夜なら真っ暗って、当たり前なんですよね。(笑)

昔ですが、ユーロスターが大幅に遅れ、
それなのに乗り継ぎのローカル電車はちゃんと発車したため目的地にうんと遅く着いたことがあったなあ。



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Unknown (risonetta)
2011-10-15 01:20:39
forchettaさん、こんばんは。

トリエステ!なるほどそこへたどり着かれたのですね。
でも、それもクロアチアのダンナさんがいて、無事乗換えができたから...
こういう出会いがあるから旅はやめられない!ですね。

それにしても臨場感たっぷりで。
ドキドキしながら読んでいます。
Veneziaへ、無事たどり着いて!!
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Unknown (forchetta)
2011-10-16 22:46:50
♪ risonettaさん、こんばんは。

トリエステにはまだ行ったことがない私でしたが、この旅の前に観ていた映画で とても暗いイメージを受けていたので、
イタリアだと言ってもとんでもなく遠い感じに思っていたみたい。
ザグレブとトリエステに謝らなくては。(笑)

クロアチアのご夫婦には感謝です。
頼もしかったですよ。

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