「お台場少年」は、1978年に「ポポロクロイス物語」で漫画家デビューした旧東海道品川宿で生まれ育った田森庸介さんが、昭和35年頃の品川宿界隈の探検記を記したものである。色々な経緯があって、なかなか出版出来ていなかったが、地元の人達の支援もあって、この1月に発刊されたばかりである。この本のことは、シナガワのチカラとして、ユーチューブでも紹介されていたので、興味を持っていたものである。図書館にも置かれていたので、早速借りて読ませてもらった。
今は「品川宿交流館」となっている場所に「玉晶堂」という時計屋さんがあり、そこの長男として生まれ育った作者は、近くの台場小学校に通っていた昭和35年頃の町の様子を少年の目を通して生き生きと描いている。作者とほぼ同じ年代なので、当時の品川宿の様子は容易に想像できる。品川宿に引っ越して来てから、40年も経つが、時計屋さんの看板は何となく覚えている。本には昭和35年当時の町の地図が掲載されていたので、大変分かりやすく、本を手にして界隈を歩いてしまった。お台場とか品川富士とか馴染み深い地名や場所名が出てくるので、親しみが沸く。
「北の吉原、南の品川」と言われ、品川宿には遊郭《貸座敷》があったことは有名である。品川は「美南見」とも呼ばれていた。落語の「居残り佐平次」「品川心中」、映画の「幕末太陽傳」に出てくる「相模屋」(土蔵相模)は特に有名で、高杉晋作、伊藤博文ら幕末の志士たちが密儀を行った場所として知られている。文久2年の長州藩士による英国公使館焼き討ち事件の際は、ここ土蔵相模から出発。安政7年(1860)には桜田門外の変で襲撃組主体をなした水戸浪士17名がここで訣別の宴を催したといわれる。
本のメインは、まさに品川宿の探検記であるが、随所に品川宿の歴史的事項が解説してあり、歴史書にもなっているので、興味深い。まさに解説付の戦後復興期の下町の面影を少年の目線で描いた町探検物語といえる。一気に昭和35年にプレイバックして、懐かしい気分となった。
しながわのチカラ「児童小説『お台場少年』の出版をめざして」: https://youtu.be/cnwIqrIkaGw
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