ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

アンダカシー

2011年03月14日 | 飲食:加工品・薬草・他

 お菓子には不向き

 久高島へ渡る船の発着場安座間港で船を待つ間、「ビールでも飲むか」となって、売店でビールを買う。酒があまり強くない友人のNも付き合って1缶買い、そして、何かつまむものを探した。売店の総菜コーナーで彼が目をつけたのがアンダカシーという揚げ物。1個が2センチ角くらいのさいころ型が、1パックに30個ばかり入っている。揚げ餅みたいなきつね色は、見た目は旨そうに見える。
  上手に作ったアンダカシーは、見た目通り旨いもので、私もたまに、数年に1回程度は自分で作ることがある。私の作ったものは、母が作るのに比べるとちょっと劣るが、まあまあいけている。下手に作られたアンダカシーはきつい。脂がきつい、ので、多くは食えない。鳥の皮をカリカリっと揚げたものも苦手だというNに、私は勧めなかった。

 豚のバラ肉の脂身(良いものは純白に近い色をしている)をさいころ型に切って、フライパンでカラ炒りする。火加減はとろ火。カラ炒りは最初の数秒だけ、脂身から脂が出てきてすぐに豚脂身の脂炒めになる。さらに時間が経つと、豚脂身の素揚げになる。私の母親はそうやって、さいころ型の脂身が小さくなって、カリカリになるまで揚げて、取り出す。さいころ型を取り上げて鍋に残ったものは純正ラード。保存し、様々な料理に使う。取り上げたさいころ型のから揚げがアンダカシーとなる。アンダカシーは漢字で書くと油粕。といっても肥料にはしない。食い物である。
 揚げ立てに塩を振り、そのまま酒の肴になる。脂が抜けた脂身だが、旨みは残っているので美味しい。食感も良い。ただし、脂分が十分に抜けきっていないアンダカシーは、口の中で噛んだとたん、脂が口の中に広がり、溶かしたラードを飲んだ感じになる。舌に重く感じ、胃に重く感じ、気分も重くなる。しばらくすると体も重く感じるようになる。脂酔いの極地といったところ。2、3個食って、食傷する。
 アンダカシーは味噌汁などに入れたりもする。味噌汁の水分を吸って、カリカリがフニャフニャになるが、汁の味にコクが出る。この場合は、多少脂分が残っていても大丈夫。豚脂の旨味が味わえる、豚汁と思えば良い。
      
 記:ガジ丸 2004.12.3 →沖縄の飲食目次


オーハンブシー

2011年03月14日 | 飲食:食べ物(料理)

 祖母の得意

 たまにしか会わなかったが、母方の祖母の料理はヒラヤーチー、ソーミンプットゥルーなどよく覚えている。彼女の作る魚の沖縄風天ぷらも美味しかった。
 それに比べ、一緒に住んでいた父方の祖母はあまり料理をしなかった。普通に味噌汁とかチャンプルーとかをたまに作ってはいて、それらを何度も食べた覚えはあるが、オバーの料理はこれだ、と印象に残っているものがほとんど無い。

 「ガジー(本名では無いが、一応ここでは私の名前としておく)、玉子てんぷら作ったから食べなさい」と、ある日、オバーに声を掛けられた。"玉子てんぷら"とは初めて聞く名前だったので、ゆで卵、あるいは卵焼きに衣を付けて揚げたものなどを想像し、オバーのもとへ行く。揚げたての丸っこい天ぷらが皿の上にいくつもあった。一つつまんで食べる。半分ほど齧っても中から何も出てこない。衣だけを揚げた天ぷらのようだった。
 「オバー、玉子天ぷらって言ってたけど、中に何も入ってないよー」と言うと、
 「はっせ、何言ってるのあんたは、メリケン粉の中に玉子が入っているさー、分からんのねぇ?」と澄ました顔で言う。
 「えっ!」と驚いた。沖縄風天ぷらはヤマト風と違って、天ぷらの衣に生卵を加える。西洋料理のフリッターに近い、衣が厚く、食感がフワフワした天ぷらになる。だから、メリケン粉の中に玉子が入っているのは普通だ。オバーのは、天ぷらの種が無いから衣だけを揚げただけに過ぎないものだ。中身の無い天ぷらだ。全然、美味しくない。

  もう一つ、これも私の好物では無かったが、彼女はよくオーハンブシーを作った。オーハは葉野菜全般を指す。ウブシーは、イリチー、プットゥルーなどと同じく料理方法の名前、少量の水で材料に火を通す料理方法。蒸し煮するといった感じ。
 オバーのオーハンブシーは葉野菜に山東菜、シマナーなどを使い、少量の出汁の中に島豆腐をちぎり入れた味噌仕立て。見た目は具沢山の味噌汁。仕上げにアンダカシー(ラードを搾り取った残り、詳しく説明したいが、長くなるので別項で)を入れた。子供の頃なので、野菜が好きというわけではなく、豚の脂身は気持ち悪いという部類に入っていた。だから、オバーのオーハンブシーは好きではなかった。汁碗一杯で十分だった。

 玉子天ぷらといい、オーハンブシーといい、その他チャンプルーなどを含め、祖母の料理を私はあまり好きではなかった。美味しいとは思わなかった。おそらく彼女は、料理上手な人では無かったんだろうと思う。母に言わせると「オバーは昔から料理はあまりしなかったねぇ。遊び好きな人だったからねぇ・・・」とあっさり切り捨てる。子供には見えないところで、嫁姑の確執が我が家にもあったようだ。

 「メリケン粉の中に玉子を入れたぞ」と言いたくなるほどに、祖母が大事なものと扱った玉子、当時はおそらく高価だったのかもしれない。だが、今は安い。昨今、玉子の値段が高くなったとマスコミが煩い。1個10円が20円になったとしてもだ。1日1個食って、月に300円の違いしかない。300円がさほど騒ぐことか、と思うのだが。
 

 記:ガジ丸 2004.12.3 →沖縄の飲食目次