ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

ベストソーダ

2011年03月18日 | 飲食:飲物・嗜好品

 最高のソーダ

 高校からの友人で、今でも月1回は会っている仲間たちがいる。ここ数年は行っていないが、まだお互いの子供たちが小学生だった頃まではよくキャンプに行っていた。キャンプは、女房子供を入れて総勢30名、多いときは40名ばかりになった。

 浜辺でバーベキューをやる。泳ぎ疲れた子供たちが寄ってくる。子供たちは、それまでに何度もオジサンたちと会っているので、それぞれの名前を知っている。それぞれ「○○のオッチャン」と姓名の姓か、または「○○オジサン」と姓名の名で呼ばれる。しかし、ただ一人、名前では無く、「ソーダのおじさん」とあだ名で呼ばれる男がいた。彼はビール大好きオジサンなので、私は彼がソーダを飲んでいるところを見たことが無い。何故、子供たちは彼のことを「ソーダのおじさん」と呼ぶのか。子供たちに訊いた。
 「だって、いつも、そーだ、そーだと言っているんだもん。」ということであった。言われてみると確かに「そーだ、そーだ」は彼、Yの口癖のようだ。Yは温厚な性格で、彼の「そーだ、そーだ」はおそらく、「和をもって尊しとする」の精神であろう。
 「お父さん、タバコ吸いすぎ」
 「そーだ、そーだ」
 「お母さん、お肉、もっと焼いて」
 「そーだ、そーだ」
などとなる。子供たちの味方である。自分の意見を出さずに他人の意見に乗っかているだけ、との批判もあろうが、多数の意見を後押しするには効果的な「そーだ」である。物事が楽しく、上手く、速やかに流れて行くようにとの彼の心の表れであろう。最高とまでは言えないが、お付き合いのためにはベターな「そーだ」と言えよう。

  沖縄には昔、といっても復帰(1972年の本土復帰)の頃だから、ちょっと昔の頃まで、庶民に親しまれた最高のソーダがあった。こちらのソーダは飲み物のソーダのこと。レモン味とかストロベリー味とかラズベリー味とか何種類もあった。子供たちにとってはコカコーラよりペプシよりファンタよりミリンダより馴染み深く、親しみ深いものであった。沖縄産のそのソーダは、残念ながら復帰後の物価高騰などの影響もあって営業不振となり、1975年に休業となる。しかしながら当時、1本5セントという安さもあって、庶民にとっては最高のソーダなのであった。その名もベストソーダといった。
      
 ベストソーダ(『沖縄大百科事典』より)
 戦後ハワイから引き揚げてきた屋比久孟吉が1953年11月、宗元寺の一角で営業を開始、(中略)最盛期の70年ころには県内シェア17%、(以下略)

 記:ガジ丸 2005.7.19 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行


シークヮーサーのお酒

2011年03月18日 | 飲食:飲物・嗜好品

 クエン酸たっぷり

 もう10年以上も前の話になるが、大人30人余り、子供20人ばかりを集めてペンションでパーティーを開いた。ペンションの台所は長いカウンターが付いていて、そこを居酒屋風にし、そこで酒の肴とカクテルを販売する模擬店を作った。
 カクテルを趣味にしている仲間が数人いて、彼らがシェーカーなどの道具と、ジン、テキーラ、ラム、ウォッカ、ライム、トニックウォーターなどの材料を準備した。私の担当は数種の肴と数種の果実酒。果実酒作りを趣味にしているわけでは無かったが、たまたまその年の春に、桜の実をホワイトリカーに漬け込んだ物を作っていた。パーティーの開催は一ヶ月前には決まっていたので、その一ヶ月間でコーヒー、パイナップル、スモモなどのリキュールを作った。パイナップル酒に人気が集中する。甘さが受けたのだろう。

  それ以来、毛生え薬用に使っているアロエ酒(効果あると思う)と香辛料に使っているコーレーグスを除いては自家製リキュールを作ることは無かったが、一昨年からシークヮーサーのお酒を作るようになった。職場のシークヮーサーがその年からたくさんの実を付けるようになったからである。毎年9月頃に収穫して、泡盛の古酒、アルコール度数43度に漬けている。翌年の正月明けからの楽しみになっている。で、去年も漬けた。
 私のリキュールは氷砂糖を入れない甘くないリキュール。シークヮーサーも青いうちに収穫する甘さの無い、酸っぱいものを使うので、私のシークヮーサーのお酒は全然甘くない。シークヮーサーを皮付きのまま丸ごと入れるので、中の酸っぱさが溶け出すことも無い。で、酸っぱい酒にもならない。私のシークヮーサーのお酒は、つまりシークヮーサーの皮の味と香りが溶け出したお酒となる。皮は渋い。よって、渋い酒となる。
      
      
 その渋い酒を何人かに飲ませたが、評判は悪い。「なんで、せっかくの泡盛の古酒を不味くするんだ。泡盛への冒涜だ!」と泡盛愛好家に怒鳴られるかもしれないくらい渋い。そんな渋い酒を毎年作っているのには理由(わけ)がある。じつは、その渋さはとても癖になる味なのだ。私はたまらなく美味しいと思っているのだ。余人には理解されていないが、シークヮーサーのお酒の旨さ、作った私だけがその味を深く理解している。
 その旨さを深く理解しながらも、去年漬けたシークヮーサーのお酒、今年の口切は先週の土曜日(16日)となってしまった。ガジ丸や畑仕事に追われて、すっかり忘れてしまっていた。が、長く置いたからといって不味くなるわけでは無い。その日、久々のシークヮーサーのお酒、久々に味わう渋さは私の好みにピッタリはまり、幸せを感じる。
 シークヮーサーのお酒、水割りでも旨いが、ソーダ割りだとなお良い。サイダーなどで割るとその糖分により、いくらか渋さが緩和される。私はいずれも大好き。もちろん、酒好きの方ならご承知の通り、ストレートで味わうのが一番良い。口切の日は、愛用のカラカラ(泡盛を入れる酒器)に愛用のぐい呑みで、ストレートを味わった。
      
 記:ガジ丸 2005.7.18 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行


ゴーヤーカリカリ

2011年03月18日 | 飲食:食べ物(料理)

 我が創作の一品

 5月の初めに梅雨入りして以来、ずっとジメジメとした鬱陶しい日々が続いている。沖縄の梅雨明けは概ね6月23日前後。今日は6月22日。多少の遅れはあっても、ジメジメとした鬱陶しい日々からオサラバするのももうすぐである。
 今日、つまり、今これを書いている今日6月22日は水曜日。水曜日は、週に3日ある私の休肝日。休肝日なんだけど今、泡盛を飲んでいる。理由(わけ)がある。梅雨明け間近を予兆させるかのように昨日から晴れ間が覗き、今日の夕方には久々に爽やかな夕風が吹いた。長ーくジメジメが続いていたせいか、今吹いている夜風がとても心地良く感じられる。たぶん、雪国に春を告げる風がやってきたようなものだ。こんな風、めったにあるもんじゃない。めったにない風に敬意を表しての酒となった。

  もう一つ、酒を飲んだ理由(わけ)がある。昨日、スーパーへ寄ったら、新鮮そうなゴーヤーがあった。何の考えも無かったが思わず買ってしまった。買ったゴーヤーは中くらいの大きさが2本パックされていた。家に帰って、とりあえず、そのうちの1本はチャンプルーにして、その日の晩飯にした。もう1本は、酢の物にでもしようかと、スライサーで薄くスライスして、キッチンペーパーで包み冷蔵庫に入れておいた。
 そのスライスゴーヤー、さっき、晩飯のおかずとして料理した。薄切りゴーヤーの天ぷらを作る。この料理は、だいたい年に2、3回はゴーヤーの時 期になると作っている。私の好物である。天ぷらとはいっても、普通の沖縄風(フリッターみたいな)天ぷらでは無い。弱火でじっくり揚げ、水分を飛ばしたカリカリの天ぷら。これを私はゴーヤーカリカリと呼んでいる。琉球料理にそんなものは無い、私のオリジナル料理である。
 薄くスライスしたゴーヤーを、いつもならすぐにゴーヤーカリカリにするのだが、今回は冷蔵庫に一晩寝かせたゴーヤースライスを使った。これが大成功だった。冷蔵庫に寝かせた分、ゴーヤーの水分が飛んでいて、揚げるとさらに水分が飛んで、いつもよりもさらにカリカリのゴーヤーカリカリができあがった。これが旨かった。風は涼しいし、ゴーヤーカリカリは旨いし、これでは、酒を飲まずにいられようはずがないのであった。
 
 

 記:ガジ丸 2005.6.22 →沖縄の飲食目次


オキナワモズク

2011年03月18日 | 飲食:食べ物(材料)

 海のモズクとなりにけり

 オキナワモズクのフコイダン含有量は、九州以北に産するモズク(イトモズク)の約3倍、コンブの約5倍と言われている。フコイダンとは何?どういうふうに健康にいいの?などといったことはよく解らないが、南西諸島特産のオキナワモズクが、日本国民の健康の役に立っているのかと思うとちょっと嬉しい。スーパーの店頭に生モズクが出回る頃、いわばオキナワモズクの旬の頃になると、週に1回は私の酒の肴にもなっている。

 2月の終わり頃だったか、モズクが旬だと聞いたので、スーパーへ生モズクを買いに行った。店には生モズクと書かれてあるパックが売られていた。買う。
 パックにはモズク用のたれも付いていた。モズクをさっと水洗いし、たれをかけ、おろし生姜を少し加えて、口の中へガっと放り込む。・・・死ぬかと思った。
 口の中に放り込んで二口ほど飲み込んだ後、強烈な刺激があった。それはワサビよりカラシよりもずっと強烈な刺激であった。昔、海水浴に行って、よく海の水を飲んだものだが、その海水よりもはるかに塩辛いものを口に入れ、いくらかは飲み込んでしまった。塩そのものを大量に口に入れたような感じ、・・・死ぬかと思った。
  パックの表には生モズクと書かれてあったが、スーパーの担当者が塩モズクと間違えてしまったのだろう。塩漬けのモズク、しょっぱいわけなのだ。 死ぬかと思った私は、口の中に残ったモズクを吐き出し、水を大量に飲む。普段、血圧を気にしていて、塩分の取り過ぎにも注意していたのだが、たった2口で1週間分くらいの塩を取ってしまったかもしれない。これで健康を害したら、スーパーへ損害を求めることができるだろうか、死んでしまったら、スーパーは過失致死罪だろうかなどと考えた。
 器に残っていたモズクは塩抜きして食ったが、私の口から吐き出された海のモズクは、流しのパイプから下水溝を流れ、海の藻屑となりにけり、となったであろう。
 
 オキナワモズク(沖縄水雲・沖縄海蘊)
 ナガマツモ科の褐藻類。奄美大島から西表島の海域に分布。方言名:スヌイ
 モズクというと沖縄では主にこの種を指すが、いくつかの文献を見ると、モズクという海藻は別にあるようだ。それは九州以北に産し、ホンダワラ類という藻に着生する、藻に付くからモヅク(藻付く)という名になったらしい。
 オキナワモズクは藻に着生しないが、モズクに似ているのでモズク。オキナワモズクをフトモズク、モズクをイトモズクという別称があるように両者は太さが違う。ので、食感も違う。が、しかし、最も大きな違いは両者の属する科。モズクはモズク科でオキナワモズクはナガマツモ科とのこと。オキナワモズクはフコイダンの含有量が多いらしい。
 
 
 

 記:ガジ丸 2005.6.21 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行


ゴーヤーチャンプルー

2011年03月18日 | 飲食:食べ物(料理)

 夏の暑さにも負けぬ

 雨(豪雨除く)にも風(台風除く)にも負けないウチナーンチュは、降った試しの無い雪にも当然、負けたことは無い。が、夏の暑さは、あまりにも厳しいので、勝てないんじゃないの?負けてもいいんじゃないの?戦わない方がいいんじゃないの?などという対応になってしまう。宮沢賢二の境地にはなれない。
 脱サラ農夫の友人Tによれば、ハルサー(ハル=畑、サー=する人。農民のこと。ハルアッチャー(歩く人)とも言う)は、夏の暑い日には朝早く畑へ出掛け、昼前には戻り、しばらく昼寝などして、夕方からまた畑へ出掛け、作業するらしい。ガンガン照り付けるギラギラ太陽とは戦わないのだ。私は午前中で終わる。

 暑さを避けるということは、日射病になるのを防ぎ、健康を維持するという意味でも大事。朝夕の比較的涼しい時間に作業を行えば能率も上がる。健康的で合理的なのである。スペイン(その他のラテン系の国も)にもシエスタ(siesta)なんていう良い習慣(昼食後に十分な昼寝をする)がある。しかしながら、聞いた話ではその良い習慣、現代ではいくらか廃れているらしい。復活させた方が良いですぜアミーゴ。
 そんな良い習慣は沖縄でも、少なくとも(一部の)農夫以外の生活ではもはや見ることができない。生活が本土化されて久しい今では、昼休みに3時間、4時間なんて取っていたら落伍者となってしまう。人生は競争なのである。社会は戦場なのである。
 灼熱の太陽がギラギラしている真夏、内勤の多いサラリーマンは、クーラーの効いた部屋の中で過ごせるからまだいいが、外働きの肉体労働者は命懸けの仕事となる。太陽の下で穴掘り作業などといった重労働をしていると、30分ほどでシャツもズボンもパンツも汗でびっしょり濡れる。体は干からびる。ゴミ拾いなどの軽作業でさえ、太陽に背を向けてやっていると、胸や腹からは汗が流れ出し、着ている服の胸や腹は濡れる。逆に、服の背中側は乾く。ギラギラの太陽が背中にアイロン掛けをやってくれているからだ。襟元から腰までたっぷりとアイロンをかけられ、体が干からびる。

  さて、そんな肉体労働者の大きな味方は、何と言ってもビール。仕事が終わって、一風呂浴びて、ジョッキに注いだビールをゴクゴクやる快感は何より勝る。その次には泡盛の水割り。喉の渇きが落ち着いた後に、ゆっくり味わう泡盛もまた格別。そして、夏、肉体労働で疲れた体を癒してくれる上等の野菜がある。これがまた都合良く、夏が旬ときている。その野菜とは、今や全国的に有名になったゴーヤー、倭語でばニガウリ。
 酒の肴には生ゴーヤーの酢の物なども良いが、何と言ってもゴーヤー料理の王道はゴーヤーチャンプルー。これには、豆腐、肉なども入っていて、栄養学的に言っても満点の料理。酒の肴にも相性抜群。しかし、ゴーヤーチャンプルーの最も美味しい環境と条件は、夏の日の、肉体労働の最中の昼休みに食うことだ。どんなに悪条件でもゴーヤーチャンプルーがあれば食欲が湧く。午後からの仕事へ向かうエネルギーとなってくれる。ウチナーンチュの肉体労働者が、夏の暑さにも負けぬ丈夫な体でいられるのは、ゴーヤーチャンプルーのお陰であるといっても言い過ぎでは無い、と私は思う。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 記:ガジ丸 2005.6.10 →沖縄の飲食目次