新参の豆
去年出来が悪かったので、今年は植えていないが、それまでは毎年、枝豆を小さな畑の一角一角に交互に植え、その収穫を楽しんでいた。一角一角に交互に植えたのは、大豆が連作を嫌うと聞いていたからである。去年は、1年置きにも限度があったみたいで、不出来であった。で、今年は全面的に休ませることとした。
枝豆に限らず、私は豆類が好きである。枝豆が熟した大豆もよく食べる。加工された豆腐も大好きである。今年初挑戦して、出来は悪かったが、いくらかは収穫できたソラマメも大好きである。今が旬のソラマメはスーパーでもたびたび購入している。
マメだけで無く、莢ごと食うインゲンもよく食べる。煮ても炒めても、天ぷらにしても美味しい。キヌサヤは、あまり買わないが、でも、好きである。
去年、初挑戦した莢ごと食うマメがある。シカクマメという聞き慣れない名前。おそらく新しい野菜なのだと思う。最近になってスーパーでよく見かけるようになった。
天ぷらで美味しいという噂を聞いていたが、天ぷらは油が撥ねて、コンロ周りが汚れるので、私はめったにやらない。年に数回と数えるほどしかない。シカクマメのためだけに天ぷらはやりたくなかったので、その時は炒めて食うことにした。牛肉と一緒に炒め、すき焼き風の味付けにした。・・・成功とは言えなかった。次回に期待する。
シカクマメ(四角豆):野菜・豆
マメ科の蔓性多年生草本 熱帯アジアに分布する 方言名:なし
莢に4枚の翼を持っていて、断面が4角形に見えることからシカクマメという名。
分布する熱帯地方では多年生だが、温帯の日本では一年生草本となる。亜熱帯の沖縄では多年生なのであるが、栽培上は一年生として扱われるとのこと。
蔓性で、ものに絡み付いて伸び、分枝が多く、大きく広がる。淡青色、または桃色の花は総状につき、形はマメ科植物に多い蝶型。秋から冬にかけて咲く。
夏に種を蒔き、秋から早春にかけて収穫できる。莢の長さは15~30センチ。中に8~17個の球形の種子を持つ。種子は蛋白質と脂肪を多く含む。
若い莢、新芽、若葉、花は野菜として、熟した種は豆として、澱粉を含む塊根は生食でき、煮物などにも利用される。また、飼料や緑肥にも利用される価値の高い作物。
記:ガジ丸 2007.4.23 →沖縄の飲食目次
子供の頃の想い出
私が子供の頃、沖縄はまだ復帰前で、アメリカ軍の統治下にあった。そのお陰で、アメリカの産物が身の周りに溢れていた。飲み屋には泡盛は少なく、日本酒はもっと少なく、洋酒(主にスコッチ、一部にバーボンやブランデー)がほとんどであった。煙草も、沖縄の煙草(バイオレット、うるま、ハイトーンなど)と日本の煙草(ハイライト、セブンスターなど)と並んで、洋煙(ウィストン、ケントなど)も愛煙家の口に咥えられた。
アメリカの産物は嗜好品だけでは無い。沖縄の一般家庭の日常の食卓にも多くやってきた。今や、本土の観光客にも土産品として人気のあるポークランチョンミートや、コンビーフハッシュ、ストゥー、ポークビーンズ、キャンベルスープなどの缶詰類が日常食に加わった。フライドチキンもハンバーガーもやってきた。
そして、子供のお菓子にもアメリカ産は溢れていた。ガムと言えば、倭国ではロッテ、不二家などであろうが、当時の沖縄でガムと言えばスティングレーチューイングガムであった。フィリップス風船ガムなんてのもあった。チョコレートと言えばハーシーチョコレートであり、フライドポテトと言えばポパイのフライドポテトであった。
私は甘いものが好きではない、と再三このHP上で書いているが、それを、「甘いものが苦手」と捉えられると正しくない。甘いもの全般を苦手としているわけでは無い。より正確な表現をすれば、「(油と砂糖の塊であろう)ケーキと、甘過ぎる甘いものは苦手だが、そう甘くない甘いものは嫌いでは無い。むしろ、好きなものもある。」ということになる。最近流行のビターなチョコレート、レーズンクッキーなどはコーヒーの時によく口にしている。お茶の時は和菓子も食べる。甘納豆も時々食べている。
というわけで、上に述べたアメリカ産お菓子の中で、最も好きだったのは塩味のフライドポテトであったが、チョコレートもクッキーもガムも、子供の頃はよく食べた。キャンディーも飴玉(ドロップと言った)もよく食べた。
強く記憶に残っている飴玉がある。赤や青や黄色といった目立つ色で模様のついた飴玉である。今思えば、あの色は合成着色料でつけたものに違いない。体に悪そうな色であった。体に悪そうなので、健康ブームの今はそんな飴玉、どこのスーパーでもお目にかかることは無い。私も、もうずいぶん長い間見てなかった。が、先日、たった1個だが、ひょんなことから手に入れることができた。
「そうだ、これだ!これがアメリカだ。」と、私はとても懐かしく思った。
記:ガジ丸 2007.4.2 →沖縄の飲食目次
参考文献
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
昔ながらの匂い
古い水彩絵の具と、古いパレット、古い絵筆を抽斗から出して、去年の6月頃から私は絵も描いている。このHPを見ている人なら判ると思うが、さほど上手では無い。ではあるが、その辺りにいるオジサン100人を適当に集めて、絵を描かせ、それらを比較したならば、トップ20位に入る程度には上手なのではないかと自分では思っている。
古い水彩絵の具や古いパレット、古い絵筆が部屋にあることからも察しがつくように、私はこれまで全く絵に係わってこなかったわけでは無い。高校生の時、ほんの1年間であったが美術クラブに私は所属していた。1年のうちのほとんどを陶芸に時間を使っていたが、油絵を2枚、水彩画を10数枚は描いている。描いた絵についてはあんまり褒められた記憶も無く、自分で気に入ったものも無かったので、即座に処分している。
ある日、顧問の先生が「うちには轆轤もあるし、楽焼できる窯もあるよ。」と言い、それらを出してくれた。それから私は粘土遊びをするようになる。私の絵を褒めることはこれっぽっちもしなかったA先生であったが、私が轆轤を回して作った碗や壷のことはえらく褒めてくれた。粘土代も援助してくれた。焼く時はつきっきりで見てくれた。お陰で私は、以降、陶芸に熱中し、絵を描くことはほとんど無くなったのであった。
A先生には、確か5、6年前に、美術クラブの先輩がやっている飲み屋でお目にかかっている。もう既に定年退職したであろうが、元気そうであった。以来私は、その飲み屋に顔を出していないが、先生が今も元気であることは風の噂で聞いている。
A先生で思い出すのは、先ず陶芸のことである。それは前述の理由から。その次に思い出すのは、たびたび臭かったことである。オジサン臭い(加齢臭)ということでは無い。先生は酒飲みだったのである。前夜たくさん飲んだんだなと判るくらいに、酒の匂いをぷんぷんさせることがたびたびあったのである。先生が飲んだのは泡盛だな、ともすぐに判った。今でこそ爽やかな匂いの泡盛だが、当時の泡盛は臭かったのである。
浪人の頃、予備校にI先生という人がいた。この人も酒飲みであった。で、この人もまた、たびたび臭い匂いを発していた。当時、授業が終わっても私は、予備校の遊び仲間たちと学校の前でキャッチボールしたり、おしゃべりなどをしてすぐには帰らなかった。夕方暗くなっても、その辺にたむろしていた。そんな時、担当の授業を終えたI先生に呼ばれてお使いをしたことが数回ある。泡盛を買いに行かされたのである。
などということがある前から、泡盛は臭いものという認識を私は持っていた。祖父も酒飲みだったし、父も酒飲みだったし、何人かいる叔父、伯父たちも皆酒飲みだったからである。彼らが飲む泡盛はすべからく臭かった。
臭くない泡盛が出だしたのはいつ頃からだろうか。昔、バーやスナックの酒はウィスキーが主流で、泡盛を置いてある店はほとんど無かったはず。それが25年位前(正確ではない)から、そのような店でも泡盛が多くを占めるようになった。ということは、その頃から泡盛が臭くなくなって、多くの人に好まれるようになったのかもしれない。
去年、ある飲み屋で、昔ながらの製法で作った泡盛というのがあった。飲んでみた。祖父の顔を思い出し、A先生やI先生の顔が浮かんだ。感動した私は、店の人にその酒の銘柄を訊き、後日、酒屋でそれを手に入れて、友人のH夫婦に味見させた。女房のE子が感想を述べた。「フクターカジャがする」とのことであった。タンスの中に長い間しまっておいた服の匂いということである。昔ながらの泡盛は、そんな匂いがした。
記:ガジ丸 2007.2.25 →沖縄の飲食目次
南の島の旨い刺身
概ね大雑把なウチナーンチュは、物事を細かく分類し、それぞれに名前をつけるなどという面倒なことをあまりしないみたいである。バッタの類はひっくるめてシェーと呼び、チョウ、ガの類はハベル、トンボの類はダーマーとかアーケージェーと呼ぶ。「虫けらごときに名前なんぞ」という気分なのかもしれない。
鳥にはそれぞれに名前がついている。虫は、害虫対策の必要な農夫か、虫に興味を持っている特殊な人でないとなかなかその姿に気付かないが、鳥はその姿をよく目にし、チョンチョンとかピーヨピーヨとかの鳴き声もよく耳に入る。なもんで、「あれは何、これは何」と日常的に会話し、その名前を特定する必要があったのであろう。
魚にもそれぞれに名前がついている。一般人が、「今日はクルキンマチが食べたい」とか「タマンが食べたい」とかいった会話を日常的にするとは思えない。せいぜい、「今日の夕飯は魚にしようね」くらいであろう。だけど魚にはいちいち名前がある。
魚の名前はきっと、漁師がつけている。名前をつけないと漁の計画が立てづらい。名前をつけないと市場で売りづらい。一般人が市場へ魚を買いに行って、値段を見て、名前を見る。「クルキンマチは安いけど、アカマチは高いね」、「タマンはまあまあの値段だけど、マクブは高いね」などと会話しつつ、魚の名前を覚え、漁師のつけた魚の名前が普及していったのではないかと思われる。
漁師でもなく、趣味の釣り人でもない私だが、和名は知らないが方言名なら知っている魚はいくつもある。上記のクルキンマチ、アカマチ、タマン、マクブの他、マーマチ、シチューマチ、ミーバイ、イシミーバイ、クレーミーバイ、アカジンミーバイ、ガーラ、ユダヤガーラ、カーエー、ミジュン、ガチュン、グルクン、グルクマー、チン、チヌマンなどなどなど、本を開かなくてもこの程度の名前はすぐに出てくる。
本と言えば、先日図書館から借りた魚図鑑は、『方言で調べる沖縄の魚図鑑』というタイトル。魚についてはその方言名が大事なのである。
その本の中に「沖縄の三大高級魚の一つ」という文章が3箇所出てくる。当然、その3箇所とは三大高級魚のそれぞれの説明文の中ということである。三大高級魚とはマクブ、アカマチ、アカジン。美味しいもの好きの私は、アカマチ、アカジンが美味い魚であることは、若い頃から知っていて、もう何度も食べているが、マクブの存在を知ったのは3年ほど前のこと。それからは数回口にしている。いずれも美味いことは確かである。
沖縄に来て、美味しい魚が食べたいと思ったら、アカマチ、アカジン、マクブなどを選べば間違いないと思う。ただし、いずれも、私が東京で食べたヒラメに比べると少し落ちる。南の海で育った魚より、冷たい海で厳しく育った方が旨味が増すのかもしれない。
アカマチについては既に、沖縄の飲食『アカマチなど美味刺身3種』で紹介済みであるが、後日、アカマチの皮をカリカリにソテーして(美味いです)食べた写真と、アカマチは煮物でも美味しいので、その写真を今回紹介する。
アカマチ(和名ハマダイ:浜鯛):海産の食用魚
フエダイ科の海産硬骨魚 全長1m 生息場所100m以下の水深 食性は魚類
マクブ(和名シロクラベラ):海産の食用魚
ベラ科の海産硬骨魚 サンゴ礁域に生息 体長1m 甲殻類を食べる
アカジン(和名スジアラ):海産の食用魚
スズキ目ハタ科の海産硬骨魚 全長1m 生息場所はサンゴ礁域
なお、私は食べたこと無いが、ヨナバルマジク(ヨナバルは与那原、沖縄島南部の与那原町のこと。マジクは鯛の一種を指すらしい)という魚がとっても美味しいという噂を聞いている。めったに獲れないらしい。三大高級魚よりも美味しいらしい。食いたい。
記:ガジ丸 2007.2.4 →沖縄の飲食目次
参考文献
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『方言で調べる沖縄の魚図鑑』横井謙典著、(有)沖縄出版発行
味の濃いアジケー
1月7日に、友人Yの家でパーティーがあった。新年会では無く、KとKの恋人であったMの入籍祝い。二人は10年以上付き合って、お互い十分にオジサンオバサンになってからの結婚。KとMの友人たち、その子供たちを含めて20人ほどが集まった。
友人たちはKのテニス仲間とMのダイビング仲間。10年ほど前までは私もKと同じグループでテニスをやっていたので、そのほとんどは顔見知り。Mのダイビング仲間は、私も参加しているキャンプ仲間でもあるので、全員(彼女らの子供を除いて)顔見知り。キャンプ仲間はまた、テニス仲間のほとんどを含んでいる。去年一昨年とキャンプをやっていないので、模合仲間でもあるKとその新妻M以外はみな3年ぶりとなる。
Mのダイビング仲間は彼女を含めて6人いる。イイ女ばかり揃っている。大人になってからの付き合いのようで互いの年齢差は5、6歳。出会った頃は年長のMを含めみな二十代。若く可愛い女性たちが加わるキャンプはとても楽しかった。
キャンプでは、私は概ね炊事当番。バーベキューの準備をし、ダイビングをするMたちを待っている。海女が獲物を持ってくるのを待っている親父なのである。実際には、その頃の彼女たちはまだ、ダイビング初心者で、彼女らと一緒に潜るダイビングオジサンMやSが獲物を獲る。獲物は主にサザエ。たまにシャコガイがある。
サザエは普通にサザエで、炭火で焼いて食う。普通に美味しい。サザエについては別項で紹介するとして、ここではシャコガイを紹介しよう。
シャコガイは独特の風味があり、酒の、特に泡盛などの強い酒に合う。これは生で、わさび醤油の刺身で食う。シャコガイの沖縄名はアジケーと言う。名前の正確な由来は不明だが、アジコイ(味濃い)から来ているのではないかと想像されるほどに、その味は濃くて、独特である。癖になる味。本土ではあまり見ないが、沖縄では居酒屋でもよく目にする。漁獲量がさほど多くないのか、値段は少々高い。
シャコガイはシャコガイ科の二枚貝の総称で、ヒメジャコ、シラナミ、シャゴウ、ヒレジャコ、ヒレナシジャコ、オオジャコなどの種類がある。ヒメジャコガイは殻長15センチほどだが、ヒレナシジャコ、オオジャコは1mを超えるとのこと。
沖縄で、食用とされるシャコガイは主に以下の2種。
ヒメジャコガイ(姫硨磲貝)
シャコガイ科の二枚貝 熱帯、亜熱帯の珊瑚礁域に生息 方言名:アジケー
殻長15センチ シャコガイの仲間では最も小さな種。
ヒレジャコガイ(鰭硨磲貝)
殻長30センチ 殻が厚く、表面に多数のひだがある。
記:ガジ丸 2007.1.12 →沖縄の飲食目次
参考文献
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行