ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

ヒラヤーチー

2011年03月11日 | 飲食:食べ物(料理)

 おやつになる主食

 子供の頃、盆、正月を含め年に数回は母方の実家に遊びに行っていた。車で2、30分のところだったので、遠出というほどのことでも無かった。
 夏休みになると2泊3日、あるいは3泊4日の滞在となった。その間、母親が一緒でないときは、祖母が我々(姉と私)の食事の世話をした。ご飯、味噌汁、チャンプルーなどといった普通の食事の他に、祖母が決まって出す料理が二つあった。それらは、今でも私の舌の記憶に残っていて、祖母の料理と言えばこれだと言えるものであった。

 その二つとはソーミンプットゥルーとヒラヤーチー。ソーミンプットゥルーについては既に書いたので、今回はヒラヤーチーについて少し。ヒラヤーチーとは、和語で言うと平焼きという意味になる。薄いお好み焼きのようなもの。小麦粉を水で溶いて、玉子とニラ(青ネギでも可)を加える。水溶き小麦粉はお好み焼きと同じくらいの緩さにする。フライパンに薄く油を敷き、タネを回し入れ、薄く敷き詰める。途中、ひっくり返して、焼き色が付いたら出来上がり。醤油、またはソースをつけて食う。
 ヒラヤーチーは、おやつとして出されることもあったが、朝食の主食として出されることも多かった。味噌汁とヒラヤーチー2、3枚といったところ。私も姉も喜んで食べた。美味しかったからだ。ニラしか入っていない薄べったいお好み焼きであったけれど、祖母の作るヒラヤーチーはとても美味しかった。私は好きだった。

  その後、大人になってから、自分でヒラヤーチーを作る機会は何度もあった。今でもたまに作って食べている。祖母の味を懐かしんでのことだ。自分で作ったヒラヤーチーは美味しい範囲に入るのだが、しかし、祖母のそれとは何か違う。小麦粉が薄力粉なのは母が作るのを見て知っていた。ちなみに、母の作るヒラヤーチーも祖母のとは違う。母のものは私のものに近い。祖母のより1ランク落ちる。いったい何が違うのか?
 今、従姉が来たので、その話をした。彼女も、
 「そういえばあのヒラヤーチーは美味しかったね。オバーのソーミンプットゥルーも美味しかったね。」と言う。二人でしばし協議した。
 「もしかしたら油なんじゃないの。ラードを使っていたんじゃないの?」と私。
 「そうだねぇ、ラードかもねぇ。ソーミンもそうだねぇ。コクがあったもんねぇ」と彼女も肯く。というわけで、祖母の作るヒラヤーチーやソーミンプットゥルーの美味しさの秘密はラードにあり、という結論に至った。ヒラヤーチーはラードを用いて焼くと旨い、という実験、及び検証は後日行い、報告することにしましょう。
 

 記:ガジ丸 2004.11.19 →沖縄の飲食目次


サーターアンダギー

2011年03月11日 | 飲食:果物・菓子

 各家の味

 先日、家賃を払いに行った。玄関の前まで行くと甘い匂いがした。サーターアンダギーの匂いだ。玄関のドアを開けると天ぷらを揚げている音がした。
 家賃を払った後、大家の奥さんが
 「サーターアンダギー作っているから少し持っていって。」と言う。
 「ありがとうございます。でも、1個でいいですよ。」と応えると
 「どうして?いっぱい作ったのよ。たくさん食べてよ。」と奥さんは台所に戻って、キッチンペーパーにサーターアンダギーをいくつも乗せていく。
 「甘いものは、そう食べれないんですよ」と奥さんの背中に向けて言うと、
 「そうなの。でも、小さいから4個ぐらいは大丈夫でしょ。」と4個のサーターアンダギーをくれた。揚げたての4個は、まだほくほくしていた。
  奥さんの作ったサーターアンダギーはゴルフボールよりちょっと大きいくらい。部屋に持って帰って、暖かいのを1個口に入れる。サーターアンダギーは私の好物では無いのだが、これが予想以上に美味しかった。サーターアンダギーを食べるのは数年ぶりくらいだと思うが、こんなに美味しいものだったかと少し驚いた。年取ると酒が弱くなって、甘いものが好きになるらしい。ここ数年来、酔いの回りが速くなったと感じていたので、いよいよ俺もそういう歳なのかと思いつつ、もう1個を口に入れたのだった。
      
 サーターアンダギーは、正確にはサーターアンダアギーと発音する。直訳すれば砂糖油揚げとなる。小麦粉に卵、砂糖などを加えて、練って、丸くして、油で揚げたお菓子。ふくらし粉(って最近聞かないけど、死語か?)を加えないのでドーナツのように軟らかくは無い。大きさは普通テニスボール大。大家の奥さんが作ったような小さいものは、私の母親もよく作っていた。家庭の小さな天ぷら鍋では、その方が揚げやすいのだろう。四角い形のものもある。これはサングヮチグヮーシ(三月菓子)と呼ばれている。

 今年7月、鹿児島の友人Nが、高校生の娘を伴って沖縄旅行をした。帰り、二人を空港まで送って行ったのだが、車内がサーターアンダギーの匂いで満ちていた。見ると、大量の、スーパーの大きな袋いっぱいのサーターアンダギーがあった。
 「いくらなんでもこんないっぱい。いったい誰が食べるの?」と娘に訊くと
 「クラスのみんな」と答える。ミスタードーナツなどに比べればさほど美味しいものでは無かろう。お土産なら他に嵩張らなくて、沖縄らしくて、なおかつ美味しいものがいくらでもあるだろうと不思議に思って、そう訊くと、
 「ダパンプがテレビで紹介していたから」とのこと。なるほど、女子高生にとってはサーターアンダギーがどうこうなのでは無くて、サーターアンダギーを紹介したカッコいい男たちが問題なのであった。彼女たちにとっては、サーターアンダギーが美味しいかどうかよりも、"ダパンプの"という形容詞が付くことが大事なのであった。 

 記:ガジ丸 2004.11.12 →沖縄の飲食目次


ゲンマイ

2011年03月11日 | 飲食:飲物・嗜好品

 栄養満点飲料

 先月中旬、みちのく一人旅パート2(パート1は一昨年春の福島、仙台、山形)に出掛けた。今回の目的は宮沢賢治を肌で感じること。
 沖縄から空路、仙台直行便を使い、仙台からは鉄道。3泊のうち1泊は盛岡近辺にし、小岩井農場見学をと思ったが、盛岡のホテルが取れなくて予定変更。平泉手前の一関に宿を取り、平泉の毛越寺、中尊寺見学となった。それはそれで得る所も多かったので、結果オーライとなった。

 さて、宮沢賢治。花巻を歩いていてよく解ったことは、賢治が地元の人々に深く愛されているということ。街のあちこちに賢治の匂いが感じられた。駅、観光案内所、ホテルなどに賢治に関する情報の載ったパンフレットがいくつも置いてあった。
 賢治への私の興味は童話では無く、あの有名な詩、「雨ニモ負ケズ 風ニモ負ケズ・・・」にあった。今さら何で?なのだが、人のために生きる、そのために丈夫な体が欲しい、などという崇高な境地に本当に至れるものかどうか確認してみたかった。賢治が作り、今尚、花巻の街に受け継がれている賢治の世界に触れれば、何かしら解るのではないかと思ったのだ。結果、ほとんど何も解らなかった。宗教心とか、病弱だったからとかいろいろ情報はあったが、「そうなのかなあ」と半信半疑。崇高な境地、グータラオジサンにはなかなか理解できるものでは無かったようだ。

 グータラオジサンにはしかし、賢治と共通点がある、と威張って言う。三年前から玄米食にしているということ。しかも、賢治は一日四合と書いているが、私は一日一合しか食しない。「どうじゃい!」とさらに威張って・・・言いたいところだが、肉や魚についてはおそらく賢治の十倍以上食ってるに違いない、酒に至っては賢治の百倍以上は飲んでいるだろう。崇高な境地なんて、遥かかなたの人生だ。へへん、だ。

 沖縄にはゲンマイという名の"飲み物"がある。ゲンマイという名は「元気な舞い」では無く、玄米から来ている。玄米を粉にして、黒糖やら生姜やらと一緒に煮て、醗酵させたりしてできた自然健康飲料。栄養価も高い。死んだ祖母が好きで、よく飲んでいた。私もご相伴でよく飲まされた。沖縄にしか無い飲み物なのかしらんが、トロトロっとしていて気味悪いと言う倭国の友人たちも多くいる。こんなもんだと思えば、味そのものは悪くない。ウッチン茶などに比べればはるかに旨い。懐かしさで、時々飲みたくなる。
  ゲンマイと似たようなものに、白米を用いて作ったミキという飲み物もある。私は飲んだ記憶が無いのだが、これも栄養価の高い健康飲料と聞いている。沖縄には飲み物にも食い物にも体に良いものがたくさんあって、お陰で私は丈夫な体なのかもしれない。宮沢賢治も沖縄で暮らしていれば、もっとずっと長生きできたかもしれない。
      
 沖縄産の賢治だったなら、80歳過ぎてもなお「雨ニモ負ケズ 風ニモ負ケズ・・・」の丈夫な体。ゲンマイを飲み、ゴーヤーを食い、フーチバーを食い、泡盛を少々飲む。東へ西へ、北へ南へテクテク歩いて行っては、ニコニコ笑いながら、風に吹かれて帰ってくる。寒さに怯えなくていい。時間はのんびり流れている。ものごとを深く考えなくてもいい。ものごとを深く考えなくてもいいので、「雨ニモ負ケズ・・・」なんて詩も生まれないだろうが・・・。それでいいさ、明日は明日の風が吹く。ナンクルナイサだ。
 沖縄産の賢治はやはり、ノンキなオジーになる可能性が高い。 

 記:2004.11.12 ガジ丸 →沖縄の飲食目次

 生兵法の訂正
 素人のくせにテキトーに調べて書くものだから、時々間違いを書いてしまう。上記の文にも間違い(ゲンマイ・・・発酵させたり)があったので、その訂正。
 「ゲンマイとミキ、作り方は違うよ」と知人に言われて、調べた。実物を買って、その原料を調べればいいだろうということで、買いに行く。ゲンマイはどの店にもあったが、ミキが無い。そういえば、月1で会う10人ばかりの友人たちの中で、ミキを飲んだことがあるっていう人は一人もいなかった。ウチナーンチュたちの間でも、ミキはあまりポピュラーではないようだ。それでもやっと、5軒目のスーパーで買うことができた。
 ゲンマイの原材料:玄米、砂糖、黒糖、しょうが、食塩
 ミキの原材料:白米、砂糖、もち米、麦、乳酸
原材料も違うが、知人の言う通り、作り方も違う。ミキは醗酵させるが、玄米はそうしないとのこと。ちなみに、ミキという名は神酒からきているらしい。
 記:2004.11.19 ガジ丸

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行


シマラッキョウ

2011年03月11日 | 飲食:食べ物(材料)

 忘れられた美味

 主に台風とホームページ作りのせいで、約2ヶ月の間、畑仕事をサボっていた。おかげで、今、畑から収穫できるものが何も無い。去った日曜日にやっと、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、二十日ネギ、島ラッキョウの植付けをやったばかり。
 私の畑の作物はご飯のおかずというより、ほとんどが酒の肴になることを目的として植えられている。キャベツはチャンプルーになったりもするが、漬物にされて日本酒の肴にもなる。カリフラワーやブロッコリーはワインの肴。そして、シマラッキョウは日本酒にもワインにも泡盛にも合う肴となる。沖縄の草木「シマラッキョウ」でも述べているが、シマラッキョウは酒の肴としては上級。独特の風味と辛味が酒に合う。焼いたり、揚げたり、漬けたりして、シマラッキョウだけで一晩の酒の時間を過ごすことができる。

  シマラッキョウ、ご飯のおかずとしては塩揉みしたものや浅漬けにしたものに鰹節をふり、醤油をたらして食うことが多いが、数年前からシマラッキョウの天ぷらも流行りだした。他の野菜や豆腐などと一緒に炒めたチャンプルー料理もよく見かける。他所では見たこと無いが、私はスパゲッティーにも使う。シマラッキョウを細かく刻んで、ベーコンなどと一緒に炒め、茹でたスパゲッティーを和える。
 酒の肴としては、生のままマヨネーズをつけて食っても旨い。七輪で炙ってレモンと塩をつけて食っても良い。細かく刻んで納豆と合えたものも酒の肴として申し分ない。
 
 
  数年前に、初めてシマラッキョウを植えて、その収穫時期となった翌年の4月か5月、ひょろひょろした細長い、半分枯れかかった葉を雑草と思って抜いた。葉は根元から千切れて根が残った。翌週、耕しついでにその根を取り除こうとスコップを入れたら、ザックザックとシマラッキョウが出てきた。何しろ植えてから半年以上も経っていたのだ。オジサンはすっかりシマラッキョウを植えたことなど忘れていたのだった。
 その日から一週間、休肝日も返上してオジサンはシマラッキョウを楽しんだ。忘れられた美味は、予想以上の旨さだった。で、その年からは毎年、シマラッキョウは私の畑に植えられるようになった。そして、その収穫を忘れられることは二度と無かった。
 
 
 
 
 
 記:ガジ丸 2004.11.12 →沖縄の飲食目次


ルートビア

2011年03月11日 | 飲食:飲物・嗜好品

 子供も飲めるビール

 A&Wというファーストフードのチェーン店がある。ヤマトゥ(倭国)には無いようだが、沖縄には古くからあり、オジサン世代にはマクドナルドより馴染み深い。A&Wもマクドナルドやケンタッキーフライドチキン同様、元はアメリカのファーストフード店。アメリカへ行けばA&Wを見ることができる。沖縄にあるのと同じ看板だ。

 A&Wで売っているものは、マクドナルドとケンタッキーフライドチキンを合わせたような内容。ハンバーガーも売っていれば、フライドチキンも売っている。フライドチキンはチャビーチキンという名、皮がカリカリっとしていて、脂の滴るケンタッキーに比べるとサッパリした感じ。実がパサパサという意見もあるが、私はチャビーの方が好き。
 と言いつつ、もう何年も私はチャビーチキンを食っていない。ついでに言うと、ケンタッキーも食っていない。そもそもファーストフード店に行く機会があまり無い。ここ20年だと、1年に1回も行っているかどうかというくらい。A&Wは2、3年前に確か、トイレを借りるついでにルートビアを飲んだっきりだ。
 そんなわけで、以下に挙げるものが今でも存在するのかは不確かなのだが、A&Wには他のファーストフード店に無い面白いメニューがいくつもあった。

 コニードッグ、チリドッグ、ジャンボポークテンダロイン、ロングフートドッグ、オニオンリングなどなど。ジャンボポークテンダロイン、ロングフートドッグにはその大きさで驚く。味で驚くのは、それら食い物では無く、飲み物のルートビア。ビアとはあるが、アルコールは入っていない。ルートは根っこ、植物の根などから取れる薬効成分や、他の薬草などのエキスをブレンドして作られた飲み物とのこと。
  ウチナーンチュにとっては馴染み深い味で、違和感も何も無いのだが、観光客で初めて飲んだ人の中には、「ガムを飲んでいるみたい。気持ち悪い。」と言う人もいる。ガムを噛んで、その味の付いた唾液を飲むということに比べれば、気持ち悪さレベルはずっと下のランクであろうと私は思うのだが・・・、人の感性は人それぞれ。
 いつごろからあったのか記憶は定かでないが、たぶん、復帰(1972年)前までは無かったと思うが、ルートビアはA&W銘柄の缶入りも販売されている。
      
 ちなみに、『沖縄大百科事典』によると、沖縄でA&Wが開業したのは1963年とある。日本でファーストフード店が初めて開業したのはマクドナルドとケンタッキーの1971年だ。ピザやタコスの専門店も古くから沖縄にはあって、ファーストフードは倭国より一足速く、沖縄の食生活の一部となっていた。  

 記:ガジ丸 2004.11.5 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行