ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

スーチキー

2011年03月17日 | 飲食:加工品・薬草・他

 沖縄風ベーコン

 「本土(倭国のこと)から新鮮なタケノコが届いて、調理したから取りにおいで。」と母から電話があり、土曜日(7日)、実家へ行った。今期はまだ美味しいタケノコを食っていない(例年は食っている。今年はいろいろあって・・・)ので、楽しみであった。
 母ちゃん味付けのタケノコはたくさんあって、その3分の1を貰う。「頂き物の無農薬のニンジンがたくさんあるから持っていきなさい。」と母は言い、それも5、6本貰う。さらに、「スーチキーの塊もあるよ。父さん食べないって言うから、あんた持って行ってくれない。」と言うので、それもまた貰っていく。帰り際、「あんた健康診断受けているの?母さん心配よ。健康には気をつけてね。」と声を掛けられたのだが、「スーチキーみたいな健康に悪いものをあげながら、気をつけてねは無いもんだ。」と心では思いつつ、「あー、気をつけているよ。ありがとう。」と言って別れる。

  スーチキーとは豚肉の塩漬けのこと。主に三枚肉(皮付きのバラ肉)が使われる。冷蔵庫が無かった頃の保存食で、沖縄風ベーコンといったところ。沖縄の伝統的食い物だ。
 ウチナーグチ(沖縄口)で塩のことはスと言い、塩に漬けているという意味でスーチキーという名前。たっぷりの塩に漬かっているのですごくしょっぱい。ウチナーグチで“強い”ことをチューサンと言い、しょっぱいものを塩が強いという意味でスーヂューサンと言う。スーチキーはまさに、そのスーヂューサンの代表のような食い物。中年という歳になってからは血圧が気になるので、私はあまり しょっぱいものを口にしなくなった。スーチキーもベーコンも好きな食い物ではあるが、最近は、飲み屋などで誰かが注文したものをつまむくらいで、自分で買って食べるなんてことはほとんど無い。

 母ちゃん味付けのタケノコは美味しかった。土日の酒の肴となって、全て腹の中に消えた。ニンジンはその半分をニンジンチャンプルーにして、同じく土日の酒の肴となった。めったに食べないスーチキー、すっかりその存在を忘れていたが、月曜日になって冷蔵庫の野菜室にしまってあったことを思い出す。さっそくその夜、調理する。
  スーチキーを薄くスライスしてフライパンに敷き、火にかける。火はできるだけ弱火にする。スーチキーの両面が狐色になるまでの時間が長ければ長いほど良い。火にかかっている時間の分、脂が抜けていく。塩もその分抜ける。健康に悪い脂と塩は少なければ少ないほど良い。また、カリカリにしたほうが美味しいでもある。
 20分ほどでカリカリのローストスーチキーができあがった。料理している最中から部屋が異常に臭くなって「スーチキーってこんな臭かったっけかな」と気になりつつも、その夜4切れ食った。今朝(10日)、台所に臭さは残っていたがスーチキーそのものはそれほど臭くない。3切れ食う。昼、職場から家に戻ると、部屋のドアを開けた途端臭いと感じる。排便中の雲子の匂いはあまり気にならないが、いったんトイレを出て、1、2分して戻るとすごく臭く感じるのと同じ現象である。スーチキーを焼いたときの匂いが部屋に染み付いているのだ。フライパンに残してあった脂の匂いを嗅ぐと臭かった。
  「いやいや、スーチキーの脂はこんな匂いでは無かったはず。」と思いつつ、ゴミ箱からスーチキーの包装を取り出して確かめる。包装にはボイル済みとあり、加工日6日、消費(賞味では無い)期限7日とあった。いったん火を通したスーチキーは日持ちがしないようだ。2時間ばかりは車の中にあったスーチキー、少し傷んでいたようである。
 消費期限を気にせず「健康に気をつけてね」と言った母のいい加減さを、私はなじることはしない。消費期限を確かめることなく食った自分もまたいい加減だからだ。消費期限を過ぎたものを食っても下痢しない私のお腹もいい加減なので、昼飯にも3切れ食い、さっきも3切れ食った。そして、明日もまた食うだろう。臭いたって、クサヤほどは臭くは無い。味は完璧に“旨い”という範疇に入る。少々傷んでいてもなお、その旨さがさらに増す。そんな沖縄の伝統食スーチキー、なかなか侮れない奴なのである。
      
      
      
 スーチキー
 豚肉料理の盛んな沖縄といえど、昔はそう頻繁に豚肉を口にすることは無かった。庶民が新鮮な豚肉を口にできるのは正月くらい。年末に豚をして正月に使うが、その時全部食するわけでは無く、余った肉は保存した。大量の塩で漬けておくことで長くもたせ、その後、行事などの際に必要な分を取り出して使っていた。これがスーチキー。独特の風味があるので、新鮮な豚肉がいつでも入手できる現在でも、飲み屋などに肴として置いてあるし、スーパーでも売られている。ただ、各家庭で作ることは、現在は少ない。
 スーチカーとも発音される。私の友人たちの間でもスーチキー派とスーチカー派に二分される。スーパーのパックにはスーチカと書かれてあった。微妙にニュアンスが違う。チキーは「漬けたもの」で、チカーは「漬かったもの」という感じ。
      
 記:2005.5.10 ガジ丸 →沖縄の飲食目次


ソーキ汁

2011年03月17日 | 飲食:食べ物(料理)

 タケノコの復讐

 前回、手抜きのタケノコ料理でエライ目にあった。自業自得なのではあるが、その復讐に昨日(29日)タケノコを買い、タケノコの美味しい料理に再挑戦する。
 タケノコは生のでは無く、茹でられたものを買った。絶対失敗しない、その目的を果たすためには、多少のインチキには目を瞑ることにした。どうも、あのエグミのきつさはしばらく記憶から消えそうも無い。二度と経験したくないと強く思う。
 茹でられたタケノコを、いつも通りの煮物にしてはあまりにもハードルが低すぎる。「よーし!旨いもの作るぞ」っていう気合が入らない。そこで、普通は材料として用いない料理に、タケノコを使ってみようと思い立った。料理は、フランス料理、中華料理、日本料理など私の力の及ばない面倒な料理では無く、沖縄料理にした。慣れた土俵で戦えば、勝ち目も大きいと言える。しかし、経験の無いことなので勝ち負けの行方はやってみないと判らない。なわけで、ハードルは高からず低からずの戦いと言えるだろう。

  スーパーでタケノコ水煮1袋の他に、豚ソーキ(スペアリブ)と厚揚げを買う。豚ソーキを湯通しし、水から煮る。こまめにアクと浮いてきた油を掬いながら、沸騰後30分ほどコトコト煮続ける。大方の油を掬い終えたら酒を加え、さらに30分ほど煮る。そこに一口大に切ったタケノコ、水で戻した昆布、厚揚げを加え、10分ほど経ったら塩で味付けして出来上がり。沖縄の伝統料理ソーキ汁のタケノコ入りバージョンとなる。
 ソーキ汁には普通、タケノコは入れない。結び昆布の他にはニンジンや、夏にはトウガン、冬にはダイコンが入る。かつて、タケノコ入りソーキ汁を私は食ったことが無いし、見たことも無い。さて、その出来栄えなんだが、まあまあであった。高からず低からずのハードルを越えてゴールした結果は、美味からず不味からずといったところ。まあ、人生とは概ねこのようなものであろう。ローリスクローリターンというわけだ。

 ソーキ汁
 ソーキは骨付き豚あばら肉のこと。ソーキ汁はその塩味の汁物。
 中味(豚の腸)やテビチ(豚足)を料理するときは下茹でする。一回目の茹で汁は捨ててしまう。私の母や伯母などはソーキの場合もそうする。しかし、私は、中味やテビチほどソーキにアクは無いと感じているので、下茹ではしない。表面にさっとお湯をかけるだけで済ましている。その代わり、茹でながらのアク取り、油取りはしっかりやる。
 沖縄の多くの食堂にソーキ汁はメニューとしてあり、もっとも有名なのはソーキそば。沖縄ソバの上に煮付けたソーキを乗っけたもの。ソーキは煮付けでも美味しい。バーベキューでソーキを焼いたりもするが、焼いた場合は固さが少々気になる。私は好きだが。
 
 
 
 

 記:ガジ丸 2005.4.30 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行


ナーベーラーンブシー

2011年03月17日 | 飲食:食べ物(料理)

 美味しい酒の肴、2品

 「突然、電話があった」・・・なんて言いようはおかしいかもしれない。「これから電話するからね」なんて事前に電話する人は、まあ、そうはいないので、電話はいつも突然だ。が、特に用も無いのにかかってくる電話は、突然って感じを受けてしまう。

 昨日(26日)夕方、新婚の友人Mから突然、電話があった。彼の職場からだった。特に用は無し。ただ、誰かと話がしたかったからという理由での電話。女子高生じゃあるまいし、大の男が「人恋しい」なんて気分にでもなったのかと訊いてみると、仕事が大変でストレスが溜まっているとのこと。休肝日の私だったが、特に用の無い突然の電話、よほどストレスを感じているのだろうと、飲みに行くことにした。ストレスの原因は仕事以外にもあるようだが、それが何かはだいたい予想もつくが、会ってからのお楽しみ。
 私の住まいの近くにある居酒屋で飲んだ。Mは新妻と一緒だった。新妻といっても我々とそう離れた歳では無い。お互いオジサン、オバサンだ。二人は新婚でありながら、既に中年夫婦でもある。その中年夫婦は、私の前で口喧嘩を遠慮しない。喧嘩というよりお互いの心をチクチク傷つける皮肉の言い合いといった方が正しいものであった。
 この夫婦喧嘩が仕事以外での彼のストレスの原因。二人の皮肉の言い合いは、でも、私は聞いていて楽しかった。Mは「お前がそんなこと言うたびに心が痛むんだ。仕事で疲れて、家に帰ると心が疲れてしまうんだ」などと泣き言を言うのだが、彼は彼でまた、新妻の心をチクっと刺すようなことを言う。新妻はもちろん、それを倍にして返す。新婚とはいっても中年夫婦、 人生経験は多い。澄ました表情での辛辣な言葉は多種多彩。美味い酒の肴となった。そんな楽しい飲み会は、平日だというのに12時過ぎまで続いた。
 
 もう一品、その夜の美味い酒の肴はナーベーラーンブシー。倭語だと、ナーベーラーはヘチマ、ンブシーは炒め煮のこと。炒め煮はその通りヘチマを油で炒めてから煮ることなんだが、味噌味なので、出来上がったものはヘチマの味噌煮といったものになる。
 食堂などには、ナーベーラー味噌煮とかヘチマの味噌煮という名前でメニューにある。私の大好物はこれからが時期。沖縄の夏野菜としてゴーヤーと双璧を成す。
 
 
 
 
 
 
 

 記:ガジ丸 2005.4.27 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行


アーサ汁

2011年03月17日 | 飲食:食べ物(料理)

 海の匂いの澄まし汁

 何年か前に渡名喜島を訪れ、しばらく滞在した。宿泊した民宿の食事に私の好きな汁物がたびたび登場した。海の匂いがする澄まし汁。名をアーサ汁という。アーサはウチナーグチ(沖縄口)で、和名をヒトエグサといい、ヒトエグサ科の海藻。渡名喜島はその産地であり、また、ちょうどその収穫時期であった。観光地化されていない渡名喜島の海はとてもきれい。その海で育てられた採りたて生のアーサ、旨くないはずが無かった。

  今からだいぶ前、アーサ(ヒトエグサ)の収穫が始まったとのニュースをテレビでやっていた。アーサはワカメより、コンブより、モズクよりも私の好きな海草だ。しかも、渡名喜島で生アーサの美味しさを覚えている。それにも関わらず、ニュースを聞いてからたぶん2ヶ月以上が過ぎた昨日(24日)、やっと生アーサを買った。
 スーパーに行くと生アーサ、以前からあるにはあったが、そのパックの表に「解凍」と書かれてある。つまり、いったん冷凍したものであることを示している。つまり、ひょっとしたら去年のものかもしれないのだ。今時期なんだから、そのうち「解凍」と書かれていないアーサも出てくるに違いないと信じ、ずっと買わずにいたのであった。ところが、2ヶ月以上が過ぎても「解凍」の書かれていないアーサは出てこない。そして昨日、ついに諦めて、「解凍」と書かれてある生アーサを買ったのであった。

 生アーサは酢の物にしても美味しい。単独でもいいが、キューリやレタス、ダイコンといった野菜、またはマグロ、タコ、帆立貝などの魚介類と和えた酢の物にしても良い。しかしながらやはり、アーサ料理の王道はアーサ汁。海の匂いがする汁物は、人によってはキツイと感じるかもしれないが、さっぱりしていて旨い。私の大好物となっている。
 時期でないときにもアーサ汁は食卓にのぼる。乾燥アーサを使う。乾燥アーサは年中スーパーにある。私もアーサが食べたい時は主に乾燥アーサを使っている。海の匂いは乾燥アーサの方がどちらかというと生アーサより強い、と私は感じている。太陽に干されて、その海の成分をより凝縮しているからに違いない。それもまた、私は好きである。
 
 アーサ:和名ヒトエグサ(一重草)
 ヒトエグサ科の1年生海藻。四国、九州の太平洋沿岸、沖縄、台湾などに分布する。採取期は2月から4月。その名前からアオサと混同されたりするが、私も今までそう思っていたが、広辞苑によると、アオサは青海苔の代用となるアオサ科の海藻とあった。
 
 
 
 記:ガジ丸 2005.4.25 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行


中味汁(ナカミジル)

2011年03月17日 | 飲食:食べ物(料理)

 一度で二度美味しい

 学生の頃、吉祥寺北口の、通称小便横丁といわれている中に、好きな店が2軒あった。1軒はコノワタ、メフン、クサヤなどの珍味や東北地方の旨いものを置いてある、少し値段の高い店。仕送りがあった時とか、バイト代が入ったときなどに飲みに行っていた。もう1軒は焼鳥屋。そこの軟骨塩とモツ煮が、私の好物であった。
 私は年に2回ほど旅(主に国内)に出るが、旅先ではその土地土地の旨いものを食う。そして、たいてい最後の夜には焼鳥屋へ入る。軟骨塩とモツ煮を食いにだ。沖縄にも旨い焼鳥屋はあるが、そこにも軟骨塩とモツ煮があって旨いのだが、私の家からその焼鳥屋までは交通の便が悪い。バスを乗り換えなければならない。面倒。なので、めったに行くことは無い。旅先だと、駅前に行けばたいてい焼鳥屋があるので、楽なのである。

  軟骨は手に入りにくいし、また、焼加減が難しいので、自分で作ることは無いが、モツ煮はたまに作る。モツは年中、どこのスーパーへ行っても置いてある。大腸だけのパックと、大腸、小腸をミックスしたパックがあり、1パックは小さいものでだいたい200から300グラム入っている。私はミックスのパックを買う。
 モツの他にゴボウ、ニンジン、白ネギなどを買い、また、これはモツ煮には使わない材料だが、コンニャク、干シイタケ(ストックが無い場合)も買っておく。調味料の類、味噌、日本酒、味醂、唐辛子、生姜なども家に無いときは買っておく。
 モツを塩で揉んだ後、水でよく洗い、鍋に入れ、たっぷりの水で茹でる。沸騰したらモツをザルにあけ、1回目の茹で汁は捨てる。新しい水でモツを煮直す。沸騰したら酒を加えて、弱火にしてトロトロ2時間ばかり煮る。そうしたら、茹で汁と中身の3分の1を別の鍋に移す。その鍋にゴボウ、ニンジンを加え、火が通ったら味醂、味噌で味付けして、さらに数分煮込んで、最後に白ネギを加え、モツ煮の出来上がり。
 
  煮込んだモツの残りの3分の2も同時に料理する。一晩水に漬けて置いた干シイタケを短冊に切って、イナムルチコンニャクという名の短冊に切られたコンニャクと一緒に鍋に加える。もちろん、旨みたっぷりのシイタケの漬け汁も加える。塩で味付けし、ほんの少しの醤油で香り付けをし、出来上がり。器に盛ってからおろし生姜を加える。
 実は、モツ煮はこの料理の副産物であって、メインでは無い。モツを買う時はこの沖縄の伝統料理、中味汁(ナカミジルと読む)を主たる食い物とする。モツ煮は酒の肴でしかないが、これは食事になる。寒い夜は体も温まる健康料理。私の好物である。副産物のモツ煮もまた、私の好物である。その夜の酒の肴となり、私を幸せにしてくれる。なわけでモツは、私にとって一度で二度美味しい食材となっているのである。
 
 中味汁(ナカミジル)
 正確には、ナカミは豚などの小腸を指す。中味もおそらく中身と書いた方が正しいのであろう。ナカミジルも正確に言えば、ナカミ ヌ(の) シームン(汁物)となる。
 
 
 

 記:ガジ丸 2005.4.25 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行