立憲民主党が来年度予算に約4兆円の修正(歳出増)を求めることが報じられた。
今回の修正案では、修正の前提である財源確保の方策も併せて示されていることが特色で、民主党政権時の「財源を考慮しないコンクリートから人へ」の失敗反省が図られている。さらに、政局的には国民民主が絵図を描いた年収の壁で「財源は政府・与党が」の無責任さを強調する色合いも有るように感じられる。
歳出の修正事項は給食費の無償化、年収の壁引上げ高額医療費負担額の低減などで評価できるものの、財源確保については年金等の政府基金取り崩しや予備費の圧縮などで手当てし、国債の発行はしないとされているが、とても継続事業を支える恒久的な財源確保とは呼べないものである。政府基金の取り崩しにあっては数年でギブアップであろうし、災害対策が主眼の予備費を圧縮することは小規模な災害対策でも補正予算が必要となって時宜適切な対処や復旧に支障を来すであろう。中国コロナ禍に際して、東京都が国に先行して手厚い支援や対策が採れたのは、石原知事が蓄積した積立金であったとされることを思い出す必要があるのではないだろうか。
更には、ガソリン税の廃止も主張しているので、実現すれば歳入不足⇒国債の乱発の出来も見え見えである以上に、高度経済成長期に建設した高速道路などの老朽化不安が叫ばれる現状から、果たして適当であろうか。となれば新税も視野の片隅に現れ、主としてガソリン税という受益者負担の変形であった道路行政も広く国民が負担することになるだろう。
蛸は、飢えて獲物が採れない場合は、自分の足を食って生き延びるという。
与党の過半数割れと云う事態で出来した、腐肉を争うハイエナのごとき野党の姿、更にはそれに快哉を叫ぶメディアの姿を目の当たりにすると、まさに蛸足状態に見えるが、他山の石としてイギリスのトラス内閣を思い出すべきである。
人心一新として2022年9月6日に政権を握ったトラス内閣は、矢継ぎ早に大型減税、エネルギー価格高騰対策、所得税率の撤廃、法人税引き上げの中止等を打ち出した。この「歳入減と歳出増が国家財政を危うくする」蛸足的経済政策では多くの国民が余慶に預かるであろうことが期待されたが、世論調査の政権支持率では支持7%、不支持77%と惨憺たるものであった。この惨状からトラス政権は成立後わずか44日後の10月25日に瓦解した。思うにイギリス国民とメディアは、一時的余慶に惑わされることなく国家百年の存続を選択したものであろう。
ガソリン税を含む石油税については、道路行政や温暖化対策のためにも必要であり、物流を担うトラック用軽油の減税は有としても、ガソリン税は暫定措置ではなく恒久税として存続させるべきであり、マイカー保有者も”お国のためと我慢しましょう”と締め括って終演。