もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

木下優樹菜氏騒動に見る相互監視社会

2019年11月20日 | 芸能

 木下優樹菜氏がインスタグラム記事とDMの内容拡散から、芸能活動自粛に追い込まれた。

 木下氏の行動の細部については割愛するとして、既にSNSの社会では相互監視体制ができつつあるように感じられる出来事である。相互監視社会といえば、過去には戦前日本の隣組制度、戦後中国の五人組制度や紅衛兵、独裁ルーマニアの秘密警察、等が思い出される。また、現在でもイランの革命防衛隊による密告奨励等、社会規範維持のための国の監視網を補完する制度を公然と行っている例は多い。木下氏の例に戻れば、法律上では罪に相当するか否かは微妙な程度であるとされているが、芸能(経済)活動自粛という大きな制裁を受け入れざるを得ない状態に追い込まれたものと考えている。日本をはじめとする西側社会にあっては、現在中国で行われているようなweb管理や監視カメラと顔認証システムを連動させた国家権力による国民監視体制には大きな危機感と忌避感をもっている。しかしながら、木下氏の例に見られるように、国民すべてがweb上の検察官や風紀係となって他人を糾弾し、相応の若しくは刑法以上の対価を支払わせるという現在進行形のweb上の相互監視は果たして適正なのだろうか。更には、前述の検察官や風紀係の多くが匿名であるために、彼らの中立性が保証されていないことも問題であり、既に、「ガラ携女」に関して誤った情報と主張を拡散したために、罪に問われたweb検察官が出ている。現在、web記事の削除権限やドメインの停止に関する改正議論が行われているために、早晩この問題については進展があるものと思われる。更にはITとAI技術の進歩によって匿名が瞬時に暴かれる時代が来た場合には、web検察官は相当の覚悟とリスクを以て告発に加担することが要求されることになるものと思う。また、SNS上の書き込みについても、なんと汚い言葉が多いことかとも感じている。少なくとも他人の言動に関して告発若しくは告発に加担する以上、冷静・正確で、誰が読んでも理解できる表現を心掛けてほしいものである。

 社会秩序維持や文化伝承のために、ある程度の相互監視は必要であると思うが、過度の相互監視や相互監視に国家が介入することは絶対に起きてはならないと思う。「クマのプーさん」と書いただけで警官が踏み込んでくる社会は、物質的に豊かであっても、極めて貧しい社会と云えるのではないだろうか。