三菱電機子会社の40代男性社員の自殺が、月間100時間を越える時間外労働に起因するとして、労災認定されたことが報じられた。
これまでも長時間労働に起因する過労死や罹病の例が数多く報じられていたが、これまで残業手当をもらった経験がないこともあってか長時間労働の概念がうまく把握できない。本日は、以下の記述で海上自衛隊入隊や艦船乗り組みををためらう若者が出ないことを願いつつ、艦船乗り組みの海上自衛官の勤務時間と対価を紹介・考察する。いささか暴論であることは承知のうえで、以下、拘束時間=勤務時間として述べる。艦船勤務者の勤務時間は、昼食休憩を加味して0745~1645までの9時間が標準とされている。しかしながら階級によって異なるが週1~3回・24時間の当直勤務があり、平均して週2回(月8回)の当直と仮定すれば、15時間×8回で120時間の時間外労働、うち56時間は深夜労働となる。現在、海賊対処に行動中の乗組員を想定すれば、ほぼ30日間連続して航海することから15時間×30日で450時間の時間外労働(うち210時間は深夜労働)という計算になる。勿論、乗員の労度軽減のために長期航海中にあっては適当な間隔で艦内休養日を設けているが、その日にあっても航海立直は必要であるために世間一般の休養とは異なることは言うまでもない。他方、残業手当?に該当するかもしれない各種手当は、艦船勤務者には基本給の33%(潜水艦45.5%)の乗組手当、航海する海域と階級で異なるが日額590~3980円の航海手当があり、海賊対処等の任務には日額2000円の特殊勤務手当が支給される。非管理職と考えられる基本給25万円の1等海曹が海賊対処に出動している例で試算すれば、乗組手当:82,500円、航海手当:1,950円×30日=58,500円、海賊対処の特殊勤務手当:2,000円×30日=60,000円、合計201,000円となり相応の処遇を得ているように見える。しかしながら、この金額を先の時間外労働(拘束時間)450時間で割れば1時間あたり446円となり、安いか・高いかは議論されてしかるべきと思わざるを得ない。兵士組合もなく連合のバックアップもない”鬼っ子”自衛官の給与は、かっての「俸給」であり、定量的に勤務・労働実態を反映したものではないのでは?と考える所以である。
自分がカンボディアPKOに参加した頃は、乗組み手当も少なく特殊勤務手当もなかったが、それでも国家の施策に挺身できることを光栄に思い、文字通り公に奉職する”俸給”の気持であったように思う(きれいごと過ぎるかも)。自衛隊退職後20年となって、改めて自衛官の各種手当を調べてみたが、総じて5%程度上昇しており、改善されていることに安堵した。ホルムズ海峡周辺の船舶護衛が本決まりとなり、特殊勤務手当は海賊対処並みの日額2,000円とされる公算と報じられているが、小火器対処で良かった海賊対処に比べて、大型の近代兵器を保有するイラン革命防衛隊を相手とすることも予想される今回の任務、果たしてどうであろうか。