立憲民主党最高顧問の菅直人議員(元総理)のツイートが話題を呼んでいる。
ツイートは、「維新の巧みな弁舌はヒットラーを思い起こさせる」としたもので、弁舌巧者の橋下徹氏、維新共同代表の馬場伸幸氏と松井大阪市長、吉村大阪府知事を念頭に置いたものであろうか。
このツイートに対して、維新は立憲民主党に抗議文を送り付け謝罪を求めているが、立民は沈黙し、当の菅議員は「私宛に抗議文は来ていない。私は別に党の指示で意見を言ったわけじゃない」と開き直っている。
「イラ菅」と綽名される瞬間湯沸かし器で、過去にも失言・放言の舌禍に事欠かない菅氏であれば深い思念に基づくものではなく、また維新の向けた矛先にも疑義を感じるので、まァ子供の喧嘩と思うべきかもしれないが、些かに考えさせられる事柄を含んでいる。
他人の人格や事績を古人に比定することは一般的であるが、公人が公党攻撃に「史上稀な事績(悪行)を持つヒットラー」を用いるのは大人の常識ではないように思う。
また、大臣の失言には総理の・下僚のそれには大臣の・所属議員には総裁の、責任と首を要求することを慣わし・生業としていた立憲民主党が、最高顧問とは云え所属議員の常識外れ失言に「ダンマリ」を決め込むのも不思議である。いや、民主党の最高顧問であった鳩山元総理が韓国で土下座し、クリミヤを訪問してロシア擁護を述べても不問にしていた執行部が看板を架け替えただけの立憲民主党であれば当然とすべきであろうか。
ネット上の意見を拾い読みすると、菅氏擁護の論調が散見されるが、その多くに「政権または政権に近い人・勢力に対しては何を言ってもよいが、反対のケースは許されない」とのニュアンスが感じられるし、大方のメディアも同様の報道姿勢であるように思えるが、このような二重基準は改められるべきであると思う。
先に挙げた橋本氏や維新諸氏の弁舌は、理路整然として澱みがない。翻って、自民・立民執行部を始めとする他党議員の言には些かの牽強付会の趣と奥歯に挟まった異物を感じさせることが多い。
理論明晰・言語不明瞭と揶揄されながらも実績を挙げた大平正芳氏の例もあるが、時代の一大潮流を創出した中野正剛、田中角栄、小泉純一郎各氏は演説・口舌によって大衆の心を掴んだ。
菅直人氏には「巧言令色鮮矣仁」の意を込めて他党を口撃する前に、過去の失政贖罪を込めて「沈黙は金」と放言を噤むことを勧めるものである。