有事において防衛相がする海保統制の具体化が進んでいる。
有事における防衛相の海保統制については自衛隊法第80条(昭和29年制定)に定められているものの、これまで具体的な統制要領は定められていなかったが、その主な原因は海上保安庁法25条に「海保の非軍事性」が定められていることと理解している。
既に海警局を人民解放軍さんとしている中国を除く列国でも、有事にあっては海上における司法権を持つ機関(沿岸警備隊等)を軍の指揮下に置くのが一般的で、その際には当該機関所属の艦船は軍艦、乗員は軍人としての権利・義務と責任が課せられる。
今回の統制要領では、防衛相の統制下であっても海保は従来通りに警察機関として活動して、自衛隊への編入や軍事行動は行わないことが明記されるとともに、行動海域も戦闘海域以外に限定し、住民輸送などで危険海域を行動する場合には国際法に定める標識を掲げるとしている。
今回の統制要領作成は、長年の懸案について半歩の前進かとも思えるが、有事における司法警察活動が平時のそれとは大きく異なるであろうことを考えれば、未だ途半ばであるようにも思える。
戦闘地域からの住民輸送だけを考えても、赤十字や緑十字の標識(塗装)を掲げて航行しても軍艦型の船型を考えれば安全であるとは言えず、大戦末期の「阿波丸」「対馬丸」の悲劇が起きる可能性も危惧される。あくまでも海保25条の精神を全うするのならば、もっと単純に有事にあっては大型艦は病院船や住民輸送船に転用すると内外に示して国際法上攻撃してはならない船舶とする方もあるように思う。
今回の統制要領策定を機に、自衛隊と海保の共同訓練等を積み重ねることで、新たな問題点や不備が認識されることで更なる改正が図られると思うが、その際には、住民の安全すら担保できない専守防衛下にあってGI(政府の雇われ者)が一般市民以上に保護されることがあってはならないことを前提に考えて欲しいものである。
酷なようであるが、海上保安庁や保安官にも国防の一翼を担う気構えを期待するものである。