来年1月に行われる台湾総統選挙の民進党予備選で、現職の蔡英文総統との一騎打ちが予想される頼清徳元行政委員長(首相)が、日本行脚を行っている。
台湾の現状は、与党の民進党が台湾の独自性ないしは独立を掲げているのに対し、野党の国民党は親中国ないしは中国による香港式の併合さえも容認するもので、総統選は両者伯仲の情勢と伝えられている。頼清徳氏は現職の蔡英文総統よりも「より独立派」と評価されており、現在の世論調査では蔡英文氏をリードしているが、5月末の予備選は両者拮抗とされている。予備選終盤の大事な時期に頼清徳氏が来日して日本の指導者と会うことには、日本とのパイプを有権者にアピールするのが狙いと分析されているが、インタビューで語った内容には総統選挙は別にしても耳を傾けるに値するものと思った。頼清徳氏は、国民党が提唱する中国との平和協定締結は、香港の轍はおろかチベット併合の轍を踏むものであるとしている。考えてみれば香港は中国と敵対した歴史はなく住民も漢族であるために、紆余曲折はあるものの人種的な抑圧はなく中国に同化されつつある。しかしながら台湾は、国共内戦に敗れた蒋介石率いる漢族が侵攻・樹立したことに加えて、高砂族は長らく漢族と敵対関係にあった国であるために、中国に併合された場合には香港よりもチベットやウイグル自治区に近い扱いを受けるであろうことは想像に難くない。対中平和協定を提唱する国民党の支持者の多くは本省人(漢族)であるために中国同化によっても失うものは少ないであろうが、高砂族や日本統治に協力した人々にとって中国の統治は圧政と人権無視の恐怖に怯える日の到と思う。国民党は中国同化による経済発展をも標榜しているようであるが、中国の狙いは台湾が持つ技術であり、新植民地政策といわれる債務漬けによる台湾経営であろうと考える。
台湾政権の帰趨については台湾人の選択を待つとしても、韓国と手を切るよりも台湾が中国化されることの方が日本の損失は遥かに大きいと考える。韓国が北朝鮮と一体になっても厄介な隣人の二つが一つになるだけであり無視することも可能であるが、台湾の中国化は友邦の1国を失うもので尖閣諸島問題は直ちに複雑・急迫の問題となる。頼清徳氏の結論もまさにその点を衝いたもので、台湾の帰趨は日本と東アジアの安全保障にとって極めて重大であることを日本人にも理解して欲しいとの願いが込められている。アメリカは台湾旅行法を制定して要人の渡航を可能にし、最新兵器の売却を行い、台湾海峡に自由の航行作戦を行っているが、対米従属外交との批判が多い日本は中台関係に積極的に関与しようとしない。韓国と袂を分かつとともに台湾との関係を進化させることが日本にとって重要と思うのだが。
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