駐車場利用証：県が交付申請受け付け 障害者ら対象に－－あすから ／徳島

　身体障害者らの専用駐車スペースの適正使用を図るため、県は利用証制度を始め、７月１日から交付申請を受け付ける。利用証は妊産婦らも対象で、専用スペースに駐車する際、車外から目立つ位置に掲示してもらう。

　車いすマークなどが表示される障害者用駐車スペースには健常者が駐車する場合も多く、是正を求める声が県にも寄せられていた。県は他県の取り組み事例を参考に、許可証の交付を検討。スーパーや銀行、市町村の公民館などに専用スペースを明示する標識の設置を依頼した。

　利用証は縦２７センチ、横１４・４センチ。駐車時に車内のルームミラーに掛けて使う。各種障害者や要介護の高齢者ら歩行困難者に緑色の利用証（有効期間５年）を交付。妊娠出産やけがで一時的に歩行が難しい人にもオレンジ色の利用証（同１年７カ月未満）を発行する。

　申請には身体障害者手帳など証明書が必要。問い合わせは、県地域福祉課（０８８・６２１・２１７１）

企業の技術 障害者に伝授

厳しい雇用　能力向上支援
　不況で障害者の雇用が厳しさを増すなか、「雇用」の形ではなく、施設やノウハウなど、企業が持つ「資源」を、障害者の職業能力向上に役立てる試みが相次いでいる。（梅崎正直、写真も）

パティシエから


野沢孝彦シェフ（右）に技を学ぶ障害者（東京都中央区、日清製粉小網町ビル）　おそろいのエプロン、緑色の三角巾(きん)を着用すると、満面の笑みがこぼれた。

　今月中旬、東京・日本橋小網町の日清製粉社内施設を開放して行われた「神戸スウィーツ・コンソーシアムｉｎ東京」（主催・社会福祉法人プロップ・ステーション）。作業所などで菓子作りに励む知的・精神障害者たちに、菓子職人（パティシエ）たちが一流の技を伝授する試みだ。

　この日は全６回のうちの初回。書類審査で選ばれた受講生８人が集まった。講師は、洋菓子店「モロゾフ」のテクニカル・ディレクター、八木淳司さんら４人だ。

　マドレーヌの材料を計量し、合わせる。型に入れオーブンへ。みんな同じ形や焼き色になるはずが、うまく生地が膨らまなかったり、焼き色にムラがついたり。

　受講生の１人、森田栄一さん（３９）は「出来栄えはちょっと残念でした。普段作っているお菓子とは、手順が全然違う。すごく勉強になります」。横浜市のウィーン菓子店「コンディトライ・ノイエス」の野沢孝彦シェフは「参加者が持つ特性に合わせて作業を工夫すれば、将来、菓子店としても十分にやっていける」と指導した手応えを話す。

　受講生たちは、ここでプロの技術を学び、作業所などで作る菓子の質の向上、販路の開拓に役立てる。それを支援するのが日清製粉（東京都）、日東商会（大阪府）などの協力企業だ。

　粉や会場は日清製粉、その他の材料や製品の販路に関しては日東商会が受け持つ。本業の力を障害者の能力向上につなげる形で、社会貢献を行っている。

緑地管理


緑地管理を学んで就職を目指す（千葉県船橋市のサッポロビール千葉工場）　施設や原材料、人材、ノウハウなど企業が持つ力を障害者のスキルアップに役立てようとする試みは、ほかにも出てきている。

　サッポロビール（東京都）は０７年から「いちばんぼしプロジェクト」と称する取り組みを続けている。アメリカで園芸療法を学んだ社員の発案によるもので、知的障害を持つ人たちに会社敷地内の緑地管理をしてもらい、そこで学んだ技術を就労につなげようというものだ。現在は本社など３か所で行われている。

　千葉工場では、通所施設「あかね園」（習志野市）の５人が週１回、工場内で草刈り機や竹ぼうきを使った作業を学んでいる。５人は、社員食堂のカツカレーを楽しみにするなど、社内にもすっかり溶け込んでいる。プロジェクト参加者の他社への就職が決まったり、地域の別な企業でも緑地管理の仕事を頼まれたりするなど、成果も表れてきた。

　障害者雇用は法律で義務付けられ、その推進は本人はもちろん社会にとっても重要だが、昨年度に解雇された障害者が前年度の１・８倍に上るなど、情勢は厳しい。解雇された障害者が再就職する難しさを考えると、職業能力そのものを高めていくことが欠かせず、そこに企業の力が役に立つ。

　日本フィランソロピー協会（東京都）の高橋陽子理事長は「工夫次第で、様々な支援が可能になる。社会貢献を有効に進めるには、企業側のチャレンジも必要だ」と話している。

オープン３カ月 精神障害者らメンバー、厳しさと楽しさ実感 ／奈良

　◇生き生き「働く場のない仲間に知ってほしい」
　障害者らの働く場の確保や拡充を進めようと、大和高田市池田の高田温泉さくら荘内に「レストラン咲咲（ささ）」が４月にオープンしてまもなく３カ月になる。精神障害者らが運営する県内初のレストラン。メンバーらは「しんどいが、楽しい」と生き生きと働いている。

　さくら荘は９４年に開設され、４月から市社会福祉協議会が指定管理者として運営。レストランと売店は、配食サービスで実績がある社会福祉法人萌（もえ）が担当している。

　咲咲には現在、精神障害者６人を含めた１１人が勤務。代表の高谷恵子さん（３３）によると、５月からメンバーにレジを任せている。お客さんからは「頑張ってるなあ」「おいしかったよ」などと声をかけられ、接客もできるようになった。市食生活改善推進員の知恵を借りて、栄養バランスのいい新メニューも考えている。

　常連客の男性（５４）は「定食はご飯のおかわりが自由で、おいしい」と満足そうだった。メンバーの佐藤肇さん（４９）は「働くことの厳しさとともに楽しさを実感している。自分たちの姿がより多くの人に伝わり、まだ家に閉じこもらざるを得ない仲間や、このような働く場を知らずに孤立している仲間に伝わることを期待したい」と笑顔で話している。

夏休みを中・高生の障害者と活動、ボランティア募集－－名張 ／三重

　障害児の親などでつくる「名張市手をつなぐ育成会」は夏休み期間中、障害のある市内の中学・高校生と一緒に活動する「タイムケア事業」のボランティアスタッフを募集している。

　事業は、障害者の活動の場を広げ、保護者の介護負担を軽減しようと、０５年から夏・春休みに実施している。７月２７日～８月２８日（１８日間）の午前９時～午後４時、県立特別支援学校・伊賀つばさ学園（美旗町南西原）で、球技や、音楽の演奏・鑑賞など、障害の度合いに応じて、一緒に活動してもらう。昨年は大学生や主婦ら約１００人が参加した。

　資格は高校生以上で経験不問。報酬を支給する。同事業担当の佐伯政雄さんは「共働きの家庭もあり、障害児を長い夏休み中、ひとりぼっちにさせないようにしたい」と積極的な応募を呼びかけている。申し込みは７月１０日までに、同育成会事務局のもみじの家（０５９５・６５・９５７７）

障害者に優しい鳥羽の海 特製車いすや透明カヤック導入

　障害があっても、海で水遊びを楽しみたい－。そんな障害者のニーズに応えようと、鳥羽市の３団体が共同し海のバリアフリー事業を進めている。鳥羽は海の町。「障害の有無に関係なく、楽しんでほしい」との思いは強い。

　３団体は、無人島探検や磯遊びなどのエコツアーを企画する「海島遊民くらぶ」▽伊勢志摩地方へ観光に訪れる障害者や高齢者へバリアフリー情報などを提供する特定非営利活動法人（ＮＰＯ法人）「伊勢志摩バリアフリーツアーセンター」▽市社会福祉協議会。

　きっかけは昨年の夏。３団体で地元の障害者を連れ、離島の菅島で海遊びへ出掛けた。車いすの障害者も楽しめるようにと、タイヤが太く、砂浜でも走行できる特製の車いすを借りて実施したところ好評だった。

　バリアフリーツアーセンターは以前、修学旅行で伊勢志摩を訪れた車いすの子どもに、同級生と一緒に海岸で地引き網体験をさせたいとの相談があり、特製車いすを使用して対応した経験がある。

　「海のきれいな鳥羽に来てもらっても、障害のある子だけ別メニューというのではかわいそう」（野口あゆみ事務局長）と今年、特製車いすを３台購入した。

　シュノーケリングのツアーで海藻豊かな鳥羽の海を見てもらうツアーを企画している海島遊民くらぶも、交流をきっかけに「浜辺からさらに一歩進んで海の中の美しさも知ってほしい」（江崎貴久代表）と、艇全体が透明なクリアカヤックを３艇導入した。

　障害者の安全が第一なため、市社協にも協力を依頼。車いすの乗り移りや、カヤックの上で障害のある人をどのようにして安定させるかなどの検討を重ねている。

　今月中旬に開いた体験会では、身体・知的障害の７人がカヤックや特製車いすで海遊びを堪能した。

　障害者からは「浜辺は車いすも動かしづらく、障害者には海遊びは難しかった。こうしたサービスが増えればうれしい」と期待も大きかった。
　海島遊民くらぶはクリアカヤックを使用した障害者向けエコツアーを、ツアーセンターは特製車いすの貸し出しなどを、１年かけて安全性などをチェックし、行いたい意向だ。

　市社協の飯田雅信さんは「障害に関係なく海を楽しめるようになれば鳥羽観光の新たな目玉になる。地域活性化にもつながる。社協としても支援も惜しまない」と話した。

　江崎代表は「ハンディがあってこれまで参加できなかった人も鳥羽を楽しんでもらえるようにしたい」と語った。