東日本大震災の被災地で、睡眠障害を抱えたり、心の健康度を示す指標で「重い心理的苦痛状態の疑い」と判定されたりした被災者の割合が高いことが、専門家の調査で分かった。震災から10カ月を迎える中、被災者は仕事や住居を失った現実を直視する境遇に置かれ、生活の不安が大きくのしかかっている。
東北大の辻一郎教授(公衆衛生学)らは昨年9~10月、仙台市の仮設住宅で18歳以上を対象に調査。440人のうち50・2%で、夜に目が覚めるなどの睡眠障害が疑われた。心の健康状態では▽絶望的と感じたか▽何をするのも骨が折れると感じたか▽自分は価値のない人間と感じたか-といった6項目の質問の点数評価で、重い心理的苦痛の疑いとされた住民も1割を超えた。
辻教授は「睡眠障害は全国調査の3割弱を大きく上回る。失業で生きがいをなくしたり、仮設住宅になじめず孤立したりすることが影響しているのでは」と分析する。
坂田清美岩手医科大教授(同)のグループは昨年9~12月、岩手県の津波被災地のうち3市町で18歳以上の約1万人を調べた。解析中だが、山田町では睡眠障害の疑いが4割程度、重い心理的苦痛の疑いがある住民も1割が見込まれるという。坂田教授は「震災直後の緊張から解放され、将来を客観的に見られるようになり不安が増幅した」ことを要因に挙げる。
福島県は今月から、東京電力福島第1原発事故の警戒区域などに指定された13市町村の約21万人を対象に心の健康調査を始め、睡眠や飲酒などの生活状況も調べる。福島県立医大の丹羽真一教授(精神医学)は「原発事故では遠方への避難が多く、文化や気候が違う土地での生活は特に心と体の負担が大きく長期に及ぶ」と懸念する。
国立精神・神経医療研究センターによると、新潟県中越沖地震(2007年)から1年後の調査で、重い心理的苦痛の疑いとされた人は6・7%だった。東日本大震災の被災者で高い割合を示している点について、鈴木友理子災害等支援研究室長は「身近な人を亡くした被災者が多く、喪失感が大きいことが関係しているのではないか」と話している。
平成24年1月8日 世界日報
東北大の辻一郎教授(公衆衛生学)らは昨年9~10月、仙台市の仮設住宅で18歳以上を対象に調査。440人のうち50・2%で、夜に目が覚めるなどの睡眠障害が疑われた。心の健康状態では▽絶望的と感じたか▽何をするのも骨が折れると感じたか▽自分は価値のない人間と感じたか-といった6項目の質問の点数評価で、重い心理的苦痛の疑いとされた住民も1割を超えた。
辻教授は「睡眠障害は全国調査の3割弱を大きく上回る。失業で生きがいをなくしたり、仮設住宅になじめず孤立したりすることが影響しているのでは」と分析する。
坂田清美岩手医科大教授(同)のグループは昨年9~12月、岩手県の津波被災地のうち3市町で18歳以上の約1万人を調べた。解析中だが、山田町では睡眠障害の疑いが4割程度、重い心理的苦痛の疑いがある住民も1割が見込まれるという。坂田教授は「震災直後の緊張から解放され、将来を客観的に見られるようになり不安が増幅した」ことを要因に挙げる。
福島県は今月から、東京電力福島第1原発事故の警戒区域などに指定された13市町村の約21万人を対象に心の健康調査を始め、睡眠や飲酒などの生活状況も調べる。福島県立医大の丹羽真一教授(精神医学)は「原発事故では遠方への避難が多く、文化や気候が違う土地での生活は特に心と体の負担が大きく長期に及ぶ」と懸念する。
国立精神・神経医療研究センターによると、新潟県中越沖地震(2007年)から1年後の調査で、重い心理的苦痛の疑いとされた人は6・7%だった。東日本大震災の被災者で高い割合を示している点について、鈴木友理子災害等支援研究室長は「身近な人を亡くした被災者が多く、喪失感が大きいことが関係しているのではないか」と話している。
平成24年1月8日 世界日報