財政・景気対策や原発が争点となる陰で、障害者政策や難病対策が“置き去り”にされている。論戦が低調な上、公約で全く触れていない新党もあり、福井県内障害者団体などからは嘆きの声が聞かれる。来年の通常国会に上程される障害者差別禁止法など重要課題を抱えるだけに、関係者は危機感を強めている。
公示前の今月1日、小規模作業所など全国約1800施設でつくる「きょうされん」福井支部は福井市内で署名活動した。訴えたのは、障害者自立支援法を改め6月に成立した「障害者総合支援法」の見直し。新法検討に当たり、障害者20+ 件が参画して取りまとめられた「骨格提言」を反映していないとし、障害に伴う福祉サービスの原則無料化などを求めている。
「前回衆院選では自立支援法が争点の一つだった。今回は障害者政策に特に力を入れている政党がほとんどないように感じる」。福井支部の吉田謙治支部長は嘆く。
障害者20+ 件の年金は少しずつ減っている。職業訓練的な位置付けの「就労継続支援B型事業所」だと給料を加えても月収が10万円に届くかどうか。自立を促されているが、実際に一人暮らしができる利用者はいない。
吉田支部長は16日の投票日までに、自身が理事長を務める市内の作業所で、利用者向けに各党の政策を比較するため勉強会を開く。「『今回は書く人いないな』って冗談も出るが、関係する人間が少しでも声を上げていかないと」
■ ■ ■
福井市のパート女性(55)は県外に住んでいた10年前、右足がまひし入院した。それまではフルマラソンを走るくらい健康だった。ステロイド投与や種々の検査により、2カ月でかかった費用は60万円。高額療養費制度である程度は戻ってきたが、入院中の収入はなく負担はズシリときた。
状況が変わったのはその3年後。足のまひが原因で階段から落ち、再び入院。数カ月後に医療費助成の対象となる特定疾患「結節性動脈周囲炎」の認定を受けた。
女性は「認定されるまでは、金銭面では中ぶらりんだった。私のように急に病気になることもある。線引きはどこかで必要だが、政治は難病の人の支援にもっと目を向けてほしい」と話す。
県難病患者団体連絡協議会(大田保彦会長)も、難病や慢性疾患の医療費助成充実などを求めていきたいとしている。
県によると、助成対象となる56特定疾患の患者は県内に4830人。国指定の難病130疾患全体では特定疾患の2~3倍の患者がいるとされ、県内でも高額医療費の負担に苦しむ患者は数多くいるとみられている。
■ ■ ■
障害者自身が運営の中心となり取り組む自立生活センター「Com―Support Project(コム・サポートプロジェクト)」(福井市)の吉田知栄美代表は、来年の通常国会に上程される障害者差別禁止法の行方に注目している。
差別禁止法は、差別撤廃に向け「何が差別となるか」の物差しになると期待され、国連の「障害者権利条約」批准に向けた国内法整備の一環として検討が進む。吉田代表は「各国同様、権利条約批准に向けて前進している。この流れを止めてはいけない」と強調する。
なのに今回の選挙は優先順位の低さを感じ、歯がゆさが募る。「障害者にとって今は非常に大事な時期。私たちももっと表に出て行かなければならないし、政党や候補者も障害者の声を吸い上げてほしい」
(2012年12月14日午前7時34分)
公示前の今月1日、小規模作業所など全国約1800施設でつくる「きょうされん」福井支部は福井市内で署名活動した。訴えたのは、障害者自立支援法を改め6月に成立した「障害者総合支援法」の見直し。新法検討に当たり、障害者20+ 件が参画して取りまとめられた「骨格提言」を反映していないとし、障害に伴う福祉サービスの原則無料化などを求めている。
「前回衆院選では自立支援法が争点の一つだった。今回は障害者政策に特に力を入れている政党がほとんどないように感じる」。福井支部の吉田謙治支部長は嘆く。
障害者20+ 件の年金は少しずつ減っている。職業訓練的な位置付けの「就労継続支援B型事業所」だと給料を加えても月収が10万円に届くかどうか。自立を促されているが、実際に一人暮らしができる利用者はいない。
吉田支部長は16日の投票日までに、自身が理事長を務める市内の作業所で、利用者向けに各党の政策を比較するため勉強会を開く。「『今回は書く人いないな』って冗談も出るが、関係する人間が少しでも声を上げていかないと」
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福井市のパート女性(55)は県外に住んでいた10年前、右足がまひし入院した。それまではフルマラソンを走るくらい健康だった。ステロイド投与や種々の検査により、2カ月でかかった費用は60万円。高額療養費制度である程度は戻ってきたが、入院中の収入はなく負担はズシリときた。
状況が変わったのはその3年後。足のまひが原因で階段から落ち、再び入院。数カ月後に医療費助成の対象となる特定疾患「結節性動脈周囲炎」の認定を受けた。
女性は「認定されるまでは、金銭面では中ぶらりんだった。私のように急に病気になることもある。線引きはどこかで必要だが、政治は難病の人の支援にもっと目を向けてほしい」と話す。
県難病患者団体連絡協議会(大田保彦会長)も、難病や慢性疾患の医療費助成充実などを求めていきたいとしている。
県によると、助成対象となる56特定疾患の患者は県内に4830人。国指定の難病130疾患全体では特定疾患の2~3倍の患者がいるとされ、県内でも高額医療費の負担に苦しむ患者は数多くいるとみられている。
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障害者自身が運営の中心となり取り組む自立生活センター「Com―Support Project(コム・サポートプロジェクト)」(福井市)の吉田知栄美代表は、来年の通常国会に上程される障害者差別禁止法の行方に注目している。
差別禁止法は、差別撤廃に向け「何が差別となるか」の物差しになると期待され、国連の「障害者権利条約」批准に向けた国内法整備の一環として検討が進む。吉田代表は「各国同様、権利条約批准に向けて前進している。この流れを止めてはいけない」と強調する。
なのに今回の選挙は優先順位の低さを感じ、歯がゆさが募る。「障害者にとって今は非常に大事な時期。私たちももっと表に出て行かなければならないし、政党や候補者も障害者の声を吸い上げてほしい」
(2012年12月14日午前7時34分)