エコ活動で地域と障害者の壁を取り除く-。沼津市原の障害者就労支援事業所「ウィサポートゆう」は六年前の開所時から、アルミ缶回収箱を置いて、地元住民に利用してもらう取り組みを続けている。市は二月のエコ活動コンテストで金賞に選んだ。所長の植松弘義さん(68)のアイデアが実を結んだ。
ウィサポートの入り口に自動販売機サイズの回収箱がある。缶を投入すると、ポイントがカードに記録され、千個で五百円分の図書カードがもらえる仕組み。週に一度訪れる近所の主婦(58)は「資源ごみの回収は月に一度だけど、ここならいつでも来られる」とほほ笑む。
ウィサポートは、利用者の就労支援や生活能力を高める多機能型就労支援事業所。市内各地から二十人が通い、菓子の箱の組み立て作業を行う。地域の人たちが訪れると、袋などに集められた缶を回収箱に入れるのを、施設利用者も一緒になって手伝っている。
植松さん自身も障害者の父だった。周囲の人からの励ましや援助に感謝を感じる一方、後ろめたさもあった。「もらってばかりではだめ。気持ちのほかに何か返したかった」。市内で衣服製造工場を経営していたが、六十歳を過ぎた二〇〇七年、「障害者を支援するような施設をつくりたい」と事業所開設を決意し、工場を親族に譲った。
事業所から地域の人を含めた周囲へ返すもの-。「環境を中心に考えていたが、地域の人に何か得になることがないと」。友人からアルミ缶回収箱がある東京都品川区の戸越銀座商店街の話を聞いて出向いた。「図書カードをもらおうと住民が楽しそうに缶を入れていくのを見て、利用者も地域住民も楽しく活動できると思った」
〇八年七月の事業所開所に合わせ、回収箱も設置。近くの小中学校にアルミ缶回収活動を呼び掛けた。子どもが来るようになると自然と親も同伴するようになった。昨年は十六万個集め、四十万円の利益を出した。一部を図書カードに換え、事業所内で住民に贈呈式を行った。これまでに五百枚以上を渡した。
市障害福祉課の担当者によると、市内の就労支援事業所は三十八カ所。どの施設も地域貢献活動を行っているが利用者の工賃向上で手いっぱいだという。担当者は「環境対策をシステム化し、地域に広めている事業所は珍しい」と話す。
現在、施設には毎日二十人以上の老若男女が訪れる。植松さんは今後も「エコ活動を通じ、地域に溶け込みたい」と期待を膨らませている。
<障害者就労支援事業所> 国が定めた障害程度の6区分の中で、主に1~3の中軽度障害者が通う。仕事の場の提供や生活能力の向上を目指す。区分4~6の重度障害者が通う生活介護施設より、行政側からの補助が少ない。事業所は利用者の工賃を上げるため、仕事の確保に追われている。
2014年3月4日 : 中日新聞
ウィサポートの入り口に自動販売機サイズの回収箱がある。缶を投入すると、ポイントがカードに記録され、千個で五百円分の図書カードがもらえる仕組み。週に一度訪れる近所の主婦(58)は「資源ごみの回収は月に一度だけど、ここならいつでも来られる」とほほ笑む。
ウィサポートは、利用者の就労支援や生活能力を高める多機能型就労支援事業所。市内各地から二十人が通い、菓子の箱の組み立て作業を行う。地域の人たちが訪れると、袋などに集められた缶を回収箱に入れるのを、施設利用者も一緒になって手伝っている。
植松さん自身も障害者の父だった。周囲の人からの励ましや援助に感謝を感じる一方、後ろめたさもあった。「もらってばかりではだめ。気持ちのほかに何か返したかった」。市内で衣服製造工場を経営していたが、六十歳を過ぎた二〇〇七年、「障害者を支援するような施設をつくりたい」と事業所開設を決意し、工場を親族に譲った。
事業所から地域の人を含めた周囲へ返すもの-。「環境を中心に考えていたが、地域の人に何か得になることがないと」。友人からアルミ缶回収箱がある東京都品川区の戸越銀座商店街の話を聞いて出向いた。「図書カードをもらおうと住民が楽しそうに缶を入れていくのを見て、利用者も地域住民も楽しく活動できると思った」
〇八年七月の事業所開所に合わせ、回収箱も設置。近くの小中学校にアルミ缶回収活動を呼び掛けた。子どもが来るようになると自然と親も同伴するようになった。昨年は十六万個集め、四十万円の利益を出した。一部を図書カードに換え、事業所内で住民に贈呈式を行った。これまでに五百枚以上を渡した。
市障害福祉課の担当者によると、市内の就労支援事業所は三十八カ所。どの施設も地域貢献活動を行っているが利用者の工賃向上で手いっぱいだという。担当者は「環境対策をシステム化し、地域に広めている事業所は珍しい」と話す。
現在、施設には毎日二十人以上の老若男女が訪れる。植松さんは今後も「エコ活動を通じ、地域に溶け込みたい」と期待を膨らませている。
<障害者就労支援事業所> 国が定めた障害程度の6区分の中で、主に1~3の中軽度障害者が通う。仕事の場の提供や生活能力の向上を目指す。区分4~6の重度障害者が通う生活介護施設より、行政側からの補助が少ない。事業所は利用者の工賃を上げるため、仕事の確保に追われている。
2014年3月4日 : 中日新聞