障害者とその高齢の親の2人世帯で放火・殺人事件が発生したことを受け、草津市は、地域から孤立しがちな世帯を対象に、抱えている悩みなどの実態調査を独自に実施した。調査結果や対象世帯の情報を民生委員や関係機関と共有し、今後の「見守り」に生かす。同市によると、この種の個人情報を外部の機関などと共有するのは県内初の試みで、全国でも珍しい。
同市では平成24年12月、自閉症だった37歳の長女の首を73歳の母親が絞めて殺害し、自宅に火をつけ全焼させた事件が発生。大津地裁で「『自分が先に死んだら娘は生きていけない』と思い詰めた経緯は同情できる」などと、殺人の法定刑下限を下回る懲役3年の判決が言い渡された。
この事件を受け、市は同市社会福祉協議会と検討会を発足。高齢者と障害者で構成される世帯など、支援が必要と思われる76世帯を対象に、悩みや相談相手の有無などの実態調査を聞き取りで25年度に実施した。
調査では、通所施設などのサービスを毎日利用する人が57%いるなど、大半が外部と何らかのつながりを持っていた。一方、こうした外部とのつながりがある人を含めた全体の約3割が悩みの相談相手を持たず、いたとしても同居していない親族だった。
調査結果を分析した立命館大産業社会学部の峰島厚教授は「従来は福祉サービスなどを受けていない物理的な孤立が指摘されてきたが、今回の調査では、物理的にはつながっていても悩みが共有されない精神的な孤立があることが分かった」としている。
市は夏までに、個々の聞き取り結果や家族構成などについて、担当する民生委員や関係機関と共有化を図る。通常、個人情報は外部に提供できないが、この調査結果の活用については昨年12月の市情報公開・個人情報保護審議会が「公益上必要がある」と判断した。
橋川渉市長は「痛ましいできごとを二度と繰り返してはいけない。情報の共有で支援の輪を広げ、誰もが幸せに過ごせる社会にしたい」と話している。
2014.3.26 05:19 MSN産経ニュース