2019年に本県で全国障害者スポーツ大会が開かれる。同大会は、勝敗を重視したパラリンピックと異なり、障害者の社会参加推進や健常者が障害に対する理解を深めるきっかけづくりを狙いとする。試合結果が全てでないとはいえ、大会を盛り上げ、目的を果たす上でも、指導者の育成や参加選手の増加、競技力を向上させる取り組みは欠かせない。
全国障害者スポーツ大会は、選手と役員合わせて約5500人が参加する国内最大規模の障害者の大会。茨城大会の翌年には、東京五輪とともにパラリンピックが予定されている。障害者スポーツに対する注目度の高まりに期待する県保健福祉部の担当者は「今後の4年間が大事」と、障害者のスポーツ参加や競技普及の好機と捉える。
15年10月の和歌山大会には本県から31選手が参加し、前年を9個上回る合計40個のメダルを獲得した。茨城大会は開催県枠があるため、出場者が大幅に増える。個人競技は例年の約5倍の参加人数が見込まれ、団体競技は関東ブロック予選が免除となるため、全競技で出場が可能となる。
■地道な活動
県知的障がい者サッカー連盟の加藤貴之理事は「応援される体制づくりを進めたい」と意気込む。
同連盟は02年の日韓ワールドカップによるサッカー人気の高まりを受け、03年に設立された。サッカー教室の開催など地道な活動で裾野を広げ、現在は22団体約400人が登録している。
同連盟は県サッカー協会と連携しつつ、県大会や東日本大会に本県選抜チームを派遣するなど強化を進め、本県代表チームは09年の新潟大会で4位、13年の東京大会では準優勝した。毎週日曜日に練習会を開いて実力を磨いている。
地元開催の全国大会に向け、加藤理事は「長年ボランティアで携わってきたスタッフ、選手の思い入れも強い。何とか結果を出したい」と意気込む。
しかし、サッカーのように選手数や練習環境が整う競技は、少ないのが現状。毎年開かれる「茨城県身体障害者スポーツ大会」では、県内で競技がほとんど行われていないグランドソフトボール(視覚障害)やバレーボール(聴覚障害)などの競技が実施されていない。
県などは15年度から、障害者を対象としたスポーツ教室を開いており、各競技を体験する機会を増やして選手増につなげる考え。指導者を増やす対策として、2月には障害者スポーツの普及促進や関係者のネットワーク構築を図るため講習会を開いた。
■環境整備に課題
練習環境の整備も大きな課題。車いすバスケットは床にタイヤの跡や、転倒の際に傷がつくなどの理由で体育館の使用を断られるケースも少なくない。競技用の車いすは形状やタイヤが改良され、床へのダメージが軽減されてきているが、そうした認識が施設側に広まっていないのが現状という。
車いすバスケットボールチーム・T-Rockets(ティー・ロケッツ)の石田和由監督は「もっと使える施設がほしい」としながら、正しく理解してもらう必要性を指摘する。
障害者がスポーツへの関心を高めるためには、情報発信の工夫も欠かせない。これまでは、福祉団体や福祉施設、特別支援学校などを通して大会やイベントを告知してきた。しかし、団体や施設と関わりのない障害者も少なくないことから、情報を広げる効果的な手法を模索する必要がありそうだ。
★全国障害者スポーツ大会
全国身体障害者スポーツ大会と、全国知的障害者スポーツ大会を統合し、20001年に宮城県で第1回大会が開催された。以降は毎年、国民体育大会終了後に同じ開催地で開かれている。各都道府県と政令指定都市の選手団が参加し、個人6競技、団体7競技の計13競技と、オープン競技が実施される。
2016年3月6日 茨城新聞