「ほんとの空」が広がる安達太良山麓に国際協力機構(JICA)二本松青年海外協力隊訓練所はある。今年度第4次隊の訓練生が70日間の課程を修了し、間もなくそれぞれの任地へ出発する。
訓練生の中に全盲の女性がいる。発足から半世紀、4万人を超す青年海外協力隊の歴史の中で全盲の隊員は初めてだ。大阪府出身、病気で2歳の時に視力を失った。大学で国際貢献を学びJICA職員となった。「開発途上国で活動したい」との思いが強まり、休職して協力隊に応募した。タイに2年間派遣され、視覚障害者らを支援する。
女性に気負いはない。不安よりも新たな世界で経験を積める期待の方が大きいという。訓練期間中、二本松市内の仮設住宅に数回足を運び、浪江町民と交流した。「目が見えないからと特別扱いせず、自然に接してもらえたことがうれしかった」。心が通い合うのを感じた。長引く仮設住宅暮らしの苦労や故郷を離れたままのつらさも実感した。
タイでは災害時の障害者支援にも関わりたいと意気込む。「避難者と直接話し、現状に触れたのは貴重な体験だった。福島の本当の姿を伝えたい」。被災地への思いも胸に女性は旅立つ。

映画「最強のふたり」