遊休農地などの活性化を図る国の「農地中間管理事業」で、桑園化が実現した安中市松井田町下足名田地区の農地約3ヘクタールについて同市と地権者、進出企業の三者は29日、「地域振興に関する協定書」を締結した。三者の役割分担を明文化し、障害者雇用など農業と福祉事業の将来的な連携も盛り込まれた。同市では「中山間地でのモデルケースにしたい」と意気込んでいる。
農地中間管理事業は、農業の構造改革推進の一環で平成25年12月に関連法が成立。都道府県に1つ設置される農地中間管理機構が、農地を貸したい人や農業経営をリタイアする人たちから農地を借り受け、新たに農業参入を目指す事業者らに貸し付け、農地の有効利用を進めるもの。
農地を提供する側にとっては安定した賃貸料が、利用する側にはより長期間の借り入れが可能になるなどのメリットがあるという。
本県では26年4月に県農業公社が管理機構としての認定を受けている。農地の出し手と受け手とのマッチング実績は、26年度が83ヘクタール、27年度は373ヘクタールを見込むなど拡大している。
下足名田地区では、農家の高齢化や担い手不足などから未耕作地も多く、15人の地権者が振興協議会(須藤英利代表)を立ち上げ、その活用について話し合いを重ねてきた。その中で農地中間管理事業を知り、昨年12月に農地を機構に引き渡した。
須藤代表は「(農地の活用策について)機構に委ねることは全員即決だった」と振り返る。機構では「中山間地で多くの地権者の考えが一致することは珍しく、波及効果も期待できる」と下足名田地区の事業に注目している。
今回、農地の借り手となったのは、桑を活用したサプリメントの製造販売を行う藤岡市のワイピーファーム(石井功一社長)。同社は事業拡大に伴い、新たな農地を探していた。
石井社長は「大切な農地を生かして、立派な桑園づくりに努力したい」と述べた。最終的には1万本の桑の定植を計画している。
協定の有効期間は38年8月2日までだが、継続も可能となっている。茂木英子市長は「事業者、地権者、県関係者をしっかりつなぐのが市の役割」などと語った。
2016.3.30 産経ニュース