■同行・介助の「介護トラベル」
高齢者や障害者に同行し、介助付きの旅行を提案する介護トラベル(東京)。丸(まる)直実社長(53)が平成27年に設立した。
旅行には資格を持つスタッフが同行して移動や食事を介助する。「『体が思うように動かせなくても、もう一度旅をしたい』という人の希望をかなえ、諦めていた外出の機会を提供したい」と語る。
利用者は80~90代が中心で、娘など家族からの依頼も多い。90代女性の「戦争で生き別れた初恋の人に会いたい」という願いもかなえた。
昨年は都内に1人で住み、車いすで生活する90代男性に同行した。「元気なうちに故郷で墓参りしたい」との希望で、新潟県の佐渡島に渡った。「10年ぶりの帰郷を喜んでもらうことができ、今年も同行した。『来年は北海道に行きたい』と、体を動かす練習に励む姿がうれしい」と話す。
要介護度など体の状態を本人や家族から聞き、主治医の許可を得た上で、場所や日程など希望に沿ったプランを作る。交通や宿泊費は同行者分も負担してもらう。症状に応じた時間ごとのサポート料金などが必要だ。
「費用はかかるが、介護する家族も一緒の場合、スタッフに介助を任せてゆっくりした時間を過ごせる」と話す。都内なら専用タクシーで自宅への送迎も可能だ。
丸社長は、老人施設でのボランティアを機に介護福祉士などの資格を取得、約10年前から訪問介護の仕事を始めた。利用者から「車いすでの旅行は他の人に迷惑がかかる」「連れて行ってくれる人がいない」といった声を聞いて起業を決意した。自身も旅好きで「苦労もあるが、同行は楽しい」と話す。
散歩や外食など日常の外出に付きそう「手つなぎサポート」事業にも力を入れる。丸社長は「出掛けたいという前向きな気持ちに寄り添いたい」と話している。
90代男性に同行する「介護トラベル」の丸直実社長
2017.12.14 産経ニュース