看護師不足に悩む病院をロボットやAI(人工知能)で助けようと、大手電機メーカーが開発に本腰を入れ始めた。病院ならではの業務の省力化に向けて、各社が取り組みを加速させている。
川崎市の聖マリアンナ医科大学病院では昨年12月中旬から今月11日まで、検体や薬剤をロボット「Relay(リレイ)」が運ぶ実証実験が行われた。薬剤は、エレベーターもはさんで別棟まで約130メートル運ばせた。手がけたのはNECの子会社、NECネッツエスアイ(東京)だ。
病院で薬剤や検体を運ぶ業務は専門スタッフが担っているが、夜間や緊急時は看護師が対応せざるを得ないことも多い。
看護師の負担軽減や業務の効率を高めるために、米ベンチャーが開発し、すでにホテルで客室に備品を運ぶなどの用途で実用化されているRelayを医療現場に応用。薬剤をすり替えられたりしないよう、荷物を入れるケースは専用のカードを使わなければ開閉できないように改良して安全性を高めた。
「操作面は使いやすいと評価された。改善要望を受けた点もあるので、検証結果を踏まえて実用化をめざしたい」とNECネッツエスアイ広報は話す。
パナソニックも病院で薬剤などを運ぶロボット「ホスピー」を開発。2013年に改良発売し、現在は全国で15台が稼働している。
■医師の会話認識→病状記録
看護師が患者の様子を書きとめる「看護記録」に注目するのが富士通研究所だ。患者と医師らが交わした会話をもとに、医療に特化した音声認識AIによって、体温や病状などを記録することができるようにする。
医師や看護師が胸などにつけられるよう、端末を縦7・5センチ、横9・5センチ、幅1センチ弱、重さ65グラムのカード状に小型化。3月までに医療機関で実証実験をする予定だ。
厚生労働省の試算では、25年には看護職員が全国で3万~13万人ほど不足するという。ロボットやAIなどによる病院業務の合理化は、これから本格的な商機を迎えそうだ。
2019年1月15日 朝日新聞