開場25周年記念特別研鑽公演
・狂言(大蔵流) 『鶏聟』
シテ(聟) 若松 隆
アド(舅) 山本 東次郎
・素囃子 『中ノ舞』
・狂言(和泉流) 『釣狐』
シテ(白蔵主・狐) 深田博治 (披き)
アド(猟師) 野村萬斎
期待していた「釣狐」。白蔵主が揚幕からフッと現れた時から目を離せない一種独特の雰囲気に包まれた。ほのぼのとした笑いをテーマにした曲ではなく、何匹もの狐が罠にかかって仲間を失ったことを嘆いた古狐が、狐を狩るのを止めさせようと猟師の目上の人間に化け説教し、その罠を捨てさせた。ところが捨てた罠にあった油揚げを食べたくてさんざ迷った揚句手を出し、罠にハマってしまい、猟師と格闘して、罠を外し逃げるという話だけれど、狂言師が狐に化け、化けた狐がこんどは人間に化けるというややこしい役でその演技は難しい。狐の縫ぐるみを着た上に装束を着込んでるので、暑いし、不自由だし、その上狂言の約束事を踏まえるのだから難曲なのだ。気力・体力・集中力・演技力、どれもギリギリまで要求される。和泉流ではこの曲を演じて初めて免許皆伝なのだ。先生は去年の暮に「演る」といったから、1年かけて公演の合間に稽古されたのだろう。狐の声は良かった。特に遠吠えが。 萬斎先生は風邪ひいたかな。鼻声だったように聞こえた。