キャノンが3日、天体撮影専用モデルの「EOS 60Da」を発表しました。
お! キャノンがまた新たな需要に応えましたね。
下はキャノンのホームページ。
販売開始は4月中旬。同社直販サイト価格(ボディ単体)は154,800円。
◇星雲の赤みを再現
オリオン座大星雲(フリー画像)
「EOS 60Da」は、性能のほとんどが60Dと同じで、違うのは「Hα線の透過率を約3倍に上げた赤外カットフィルター」というところだけ。これによって、赤い星雲が鮮やかに写せるとのこと。
天体写真ファンの間でもデジタルカメラが主流になっていますが、悩みはデジタルカメラの撮像素子の前に付けられたローパスフィルター(正確にはローパスフィルターと一緒についている赤外線カットフィルター)が、Hα線という星雲の赤い波長の光をほとんどカットしてしまうことです。
このため、赤い星雲が赤く写らないのです。
撮像素子は人間の目以上に敏感で、赤外線にも感応。このため赤外線カットフィルターがないと赤っぽく写ってしまうので、同フィルターは必要なのですが、それが天体撮影にはじゃまになっています。
◇改造相次ぐ現状
そこで、ローパスフィルターごと赤外線カットフィルターを取り去ってしまう、荒っぽい改造が流行っています。価格的に安いEOS Kissの旧型から、60D、はては高価な5DMarkⅡまで改造してしまう人がいます。
改造を自分でやる人もいますが、とても難しく、下手をするとカメラが使えなくなってしまうため、専門のショップが2~3万円で請け負っています。
ローパスフィルターを取り外すことによって、ピントも変わってしまいますが、その辺は色々工夫されているようです。
こうした改造があまりに多いので、キャノンも見かねて(?)天体撮影専用の機種を出すことにしたのでしょう。ちょうど今年は、金環食をはじめ天体のビッグイベントが目白押し。天体撮影に興味を持つ人が増えるだろうと見込んだのかもしれません。商魂たくましきキャノン!
ただ、このカメラは普通に撮影すると赤っぽく写るはず。キャノンのページでも「赤外反射光の多い一般の被写体を撮影した場合は、実際より赤みがかった撮影画像になり、適切なカラーバランスが得られないため、一般被写体の撮影はお勧めできません。」と、お断りを入れています。あくまで天体撮影専用のカメラです。
馬頭星雲(下方)と、オリオン座の散光星雲。初心者でもこんな写真が撮れる?(フリー画像)
◇いまや風景写真の一分野
星を写すという限られた目的のために、これだけのお金を出すのか---というのは一般の人の考え方。天文ファンにとっては待望のカメラでしょう。
天体写真というのは、これまで「難しい」「特殊なこと」というイメージがありました。「星を見るのが好き」というと、変わった人として冷やかす風潮も根強いものです。しかし、デジタルカメラの登場で、間口は広がり風景写真の一分野になってきたと「アサヒカメラ」4月号で特集しています。
それによると、手軽に使える赤道儀や、ペンタックスのアストロレーサーのように、ボディー内の手ぶれ補正機構を利用して星を追尾するアクセサリーもあるようです。
天体写真の垣根が低くなり、それほど苦労せずに撮れる時代になってきたのかもしれません。