今年の日本胸部外科学会総会は東京、品川で開催されました。昨年は札幌で行われ、手術の合間をぬって日帰りで札幌往復するのはなかなかきついものがありました。横須賀から品川までは電車で乗り換えなし、Door to doorで1時間です。京成線の停電や京浜東北線の火災の影響で一日はひどい目にあいましたが、開催4日間のうち、珍しく3日間、会場に足を運ぶことが出来ました。一日は緊急手術の為、卒後教育セミナー、安全講習会は参加できませんでした。また、指導医講習会もスケジュールが合わず、出席できませんでした。心臓血管外科専門医の更新にはこうした、学会出席、卒後教育セミナー、安全講習会の参加が必要で、また、指導医講習も今後必要と言われております。臨床に忙しいから、という理由で学会に出席できなくなると、専門医が維持できなくなる、こうした事例もあると聞いたことがあります。
さて、今回は横須賀市立うわまち病院心臓血管外科からは「僧帽弁再形成術の経験」について口演しました。前任地での僧帽弁再形成が成功した16例中4例のうち、筆者の執刀症例が3例であったため、うわまち病院の症例を含めて筆者の執刀経験をまとめたところ、7例の僧帽弁形成術後の再手術中、最初の1例を除いて、残りの通算6例で再形成術が成功している。僧帽弁再形成には、僧帽弁逆流再発のメカニズムの詳細な分析と、その病変に適した手技で形成に挑戦することが成功のカギである、という内容で発表しました。
会場からは、ただでさえ危険性のある弁膜症再手術で再度形成に挑戦する意味があるのか、というような指摘もありましたが、筆者が考えるに、明らかに僧帽弁形成の方が弁置換を行うよりも術後の生命予後が良好であることは一般に言われていることであり、しかも、再形成のほうが、弁置換よりも手術の手技上の危険性は少ないと考えています。しかも手術時間は再形成する場合も、弁置換とする場合もほぼ変わりはありません。
再形成におけるほとんどの症例で、人工弁輪の再縫着をしていますが、初回手術の症例よりもサイズの小さい人工弁輪を縫着する症例もあります。最近は、小さい人工弁輪を縫着した為に、運動時などに相対的な僧房弁狭窄症を呈する術後症例があり、運動対応能の低下や心房細動の発生率が上昇する、などとする報告もあり、より大きめの人工弁輪を選択するべきと言われてきております。しかしながら、僧帽弁逆流を停止させることが手術の目的であり、確実な逆流の制御に最も適したサイズの人工弁輪を縫着することが最も重要です。小さめの人工弁輪を縫着した症例の中で、左房―左室間の圧格差が有意に上昇した症例はないので、臨床的に問題はないと考えます。
施設によってはほとんどの初回手術症例をMICS、いわゆる小開胸の手術で行い、逆流が再発した症例にはすべて人工弁置換しているという発表をしているところもありました。弁置換よりも弁形成がより低侵襲である、という概念からすると、二回目の手術も可能な症例は弁形成を試みる価値があると思います。
僧帽弁形成術後に逆流が再発する原因として、人工腱索が伸びきってしまう、という事例が各施設で経験されており、現在使用しているゴアテックス(ePTFE)の糸の性能の限界か、という意見もありましたが、これはより複数の人工腱索を使用して、一本一本の人工腱索にかかる緊張を減らす、そして、一本に変化が起きても他の人工腱索でささえることで、逆流再発をしにくい環境を初回手術でつくることが重要と考えます。
さて、今回は横須賀市立うわまち病院心臓血管外科からは「僧帽弁再形成術の経験」について口演しました。前任地での僧帽弁再形成が成功した16例中4例のうち、筆者の執刀症例が3例であったため、うわまち病院の症例を含めて筆者の執刀経験をまとめたところ、7例の僧帽弁形成術後の再手術中、最初の1例を除いて、残りの通算6例で再形成術が成功している。僧帽弁再形成には、僧帽弁逆流再発のメカニズムの詳細な分析と、その病変に適した手技で形成に挑戦することが成功のカギである、という内容で発表しました。
会場からは、ただでさえ危険性のある弁膜症再手術で再度形成に挑戦する意味があるのか、というような指摘もありましたが、筆者が考えるに、明らかに僧帽弁形成の方が弁置換を行うよりも術後の生命予後が良好であることは一般に言われていることであり、しかも、再形成のほうが、弁置換よりも手術の手技上の危険性は少ないと考えています。しかも手術時間は再形成する場合も、弁置換とする場合もほぼ変わりはありません。
再形成におけるほとんどの症例で、人工弁輪の再縫着をしていますが、初回手術の症例よりもサイズの小さい人工弁輪を縫着する症例もあります。最近は、小さい人工弁輪を縫着した為に、運動時などに相対的な僧房弁狭窄症を呈する術後症例があり、運動対応能の低下や心房細動の発生率が上昇する、などとする報告もあり、より大きめの人工弁輪を選択するべきと言われてきております。しかしながら、僧帽弁逆流を停止させることが手術の目的であり、確実な逆流の制御に最も適したサイズの人工弁輪を縫着することが最も重要です。小さめの人工弁輪を縫着した症例の中で、左房―左室間の圧格差が有意に上昇した症例はないので、臨床的に問題はないと考えます。
施設によってはほとんどの初回手術症例をMICS、いわゆる小開胸の手術で行い、逆流が再発した症例にはすべて人工弁置換しているという発表をしているところもありました。弁置換よりも弁形成がより低侵襲である、という概念からすると、二回目の手術も可能な症例は弁形成を試みる価値があると思います。
僧帽弁形成術後に逆流が再発する原因として、人工腱索が伸びきってしまう、という事例が各施設で経験されており、現在使用しているゴアテックス(ePTFE)の糸の性能の限界か、という意見もありましたが、これはより複数の人工腱索を使用して、一本一本の人工腱索にかかる緊張を減らす、そして、一本に変化が起きても他の人工腱索でささえることで、逆流再発をしにくい環境を初回手術でつくることが重要と考えます。