横須賀うわまち病院心臓血管外科

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心臓血管外科のチーム力

2018-10-31 17:57:48 | 心臓病の治療
 心臓血管外科の診療は、チーム医療といわれています。特に最近は、ハートチームといい、循環器内科、心臓血管外科、麻酔科、集中治療部、看護師、薬剤師、リハビリ担当者、栄養士など病院の総合力をあげて治療にあたる体制をいいます。
 特に、TAVIなどにおいては、チームにおいて診断、治療方針などを決定していくプロセスが重要視されています。

 心臓血管外科のチーム力としては、手術中に一人の術者がすべての内容に責任を持つのは当然ですが、手術に参加する一人ひとりのメンバーの能力が手術の結果を左右する重要なファクターになっているとき、初めて実感されるものです。特に重症の症例や、予想外の事態に陥ったとき、急変などで手が足りないときなどは、その実力が試されるときです。

 以前、小開胸での大動脈弁置換手術中、思わぬ部位から出血し、その出血の制御に術者が手を取られて離せないときに、第一助手、第二助手が大腿動静脈から直ちに送脱血管を挿入して人工心肺を装着し、それによって出血のコントロールができて事なきを得たことがありました。最近は毎週、小開胸の心臓手術をしているので、一人ひとりの役割分担も習熟されているので、スムースに対処可能となってきました。心臓血管外科チームとしての能力が充実してきた、と感じた瞬間でした。

 冠動脈バイパス術では、心臓を脱転して心拍動下にバイパス血管を吻合する為、その間の循環動態が不安定になりやすくなります。この辺の、循環管理を上手に行いながら、術後管理もやりやすいような輸液量などで手術を終えること、これは外科医と麻酔科医とのチーム力がものをいう手術です。

 胸部大動脈瘤手術など、複雑な人工心肺回路で、手順が多く、温度管理が重要な手術では、その手術の進行にあわせて適切に温度管理をするなど、外科医と人工心肺技師のチーム力がものをいいます。

 手術全般において、手術室内を手術が滞ることなくスムースに進行するように、全てをオーガナイズしているのはナースです。事前に使用する器材、針糸などを確認の上、流れを止めることなく手術が進む、こうして気持ちよく手術できる環境を作るのも、ナースを中心とした手術室にいるスタッフ全員のチーム力です。

 またICUスタッフ、病棟スタッフ、リハビリ担当者、栄養士、事務職員、薬剤師、ソーシャルワーカーなど全員が一人の患者さんを中心に、ベストな治療と、その流れをスムースに進めていくこと、いい治療には病院全体のチーム力が必要です。
 たくさんのスタッフに支えられて成り立つ心臓血管外科の診療ですので、感謝とコラボレーションの気持ちを忘れずに日々診療にあたっていくことが大切と考えております。

 
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