横須賀うわまち病院心臓血管外科

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MICS-CABG 低侵襲冠動脈バイパスの新しいスタビライザー:テンタクルズNeo

2018-10-23 06:59:54 | 心臓病の治療
 人工心肺非使用冠動脈バイパス術=Off Pump Coronary Artery Bypass Grafting =OPCABにおいて、心臓を脱転する際のポジショナーの一つにテンタクルズがあります。これは、Japan Original、東京医科歯科大学教授の荒井教授が開発した画期的なデバイスです。従来のポジショナーは心尖部に吸引する吸盤を装着して、そこを視点に心尖部を持ち上げて脱転するのに対して、テンタクルズは3つの吸盤がついたポジショナーを自在に操ることによって、より三次元的な心臓のポジショニングを可能にすることで画期的です。

 今回の胸部外科学会では、このMICS-CABG用に改良した、テンタクルズNeoを紹介されました。国内で最もMICS-CABGの経験のある、坂口太一先生(兵庫医大教授)が実際の臨床使用について報告されておりましたが、このテンタクルズは、左小開胸の手術において最も威力を発揮できる商品で、改良されたNeoは、より吸盤部分が小さく、さらに牽引する方向について、またポートから挿入することを想定されて設計されているところが素晴らしいです。

 先日、神奈川県内のNOの研究会で坂口教授が講演にいらしたときに、NOではなくMICS-CABGについて懇親会でいろいろ質問させていただく機会がありましたが、坂口先生はMICS-CABGをすでに150例以上も経験されているそうで、まさに国内のMICS-CABGの第一人者の一人です。横須賀市立うわまち病院は先日の学会の会場でのアンケートによると関東では最も多くMICS-CABGを行っている施設の一つとなっているようでしたが、今後専用のデバイスなどを導入予定で、より左小開胸の症例は増加していくものと思います。この中で、テンタクルズNeoが活躍する場も増加していくものと思います。

 小開胸の弁膜症手術のように、左開胸のCABGの手術加算が認められるようになれば、さらに低侵襲の手術が普及して、合併症なく安全に治療が受けられる患者さんが増えると期待しています。
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