横須賀うわまち病院心臓血管外科

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大動脈解離の定義

2021-03-05 14:30:44 | 心臓病の治療


新しい大動脈解離の表記方法について、昨年提案されたものに付随して、その定義についても記載があります。

大動脈解離とは、大動脈内膜の亀裂が中膜を裂いて真腔と偽腔を形成し、その亀裂から偽腔に血流が流れるようになった状態。

内膜血腫とは、真腔と偽腔の間に明らかな交通が認められないもの。大動脈内に、三日月型の高輝度の血腫があることが特徴。

穿通性潰瘍とは、動脈硬化病変が大動脈壁の内弾性板を貫いている状態で、しばしば内膜血腫と間違われる。

日本語の訳が正しく適切かどうかは微妙ですが、大動脈解離に類似した、もしくは関連した病態をもあえて定義説明しています。

そしてB型解離は、Complicated(複雑性)と表記される死亡率の高い症症例と、Uncomplicated(非複雑性)と表記される軽症というか一般的なB型解離を治療方針によって分けています。Complicatedの症例は、破裂と臓器虚血障害を伴うものをいい、このリスク因子として、血圧高値、持続性疼痛、血性胸水、大動脈径>40mm、臨床症状が無くとも画像的に臓器虚血を呈する症例、再入院症例、小弯側にエントリーがある、偽腔径>22mmがあげられており、このハイリスク患者さんの場合は特に注意深く観察する必要があります。それ以外のUncomplicated症例では通常の降圧管理だけでいいということになります。
 Complicatedの症例では降圧管理だけでは死亡率が高いため、外科的介入が必要になります。臓器虚血に対する治療として、エントリー閉鎖、バイパスによる血行再建、そして開窓術による偽腔圧の低下と真腔拡大による真腔・分枝血流の増加があります。また破裂に対しては、人工血管置換、エントリー閉鎖による偽腔圧の低下があります。これらを即時に判断することが期待されますし、ハイリスク症例はいつComplicatedの症例に進行するかもしれないのでClose Watchが必要です。
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B型大動脈解離における新しい分類、表記

2021-03-05 13:45:08 | 大動脈疾患


大動脈解離における分類において昨年、新しい表記方法の提案があり、今後は学会発表や論文などでの表記はこの方式に変更していくものと思われます。
A型かB型かと、それに大動脈解離を呈している範囲(Zone0~12)を表記することでより、大動脈解離の実像が分かりやすくなる可能性があります。

たとえば、下行大動脈の上部から腹部大動脈まで解離している場合は、B4,9と記載します。A型の場合はZone0の表記は不要で、単に末梢側の管理範囲を記載し、たとえばA10などとなります。I型とは、上行大動脈に解離がおよぶがエントリーがはっきりしない、日本で言う血栓閉塞型と言われるものです。血栓閉塞型という分類はこれではなく、内膜血腫=Intramural hematomaという分類をしています。日本の場合は内膜血腫も実はエントリーが見えないだけどどこかに小さいエントリーがあって真腔と偽腔が交通している、という概念で考え、通常の大動脈解離と同じ扱いをしています。

今までのA型、B型、DeBakey分類などは今後表記されなくなるとおもいますが、内膜血腫おける考え方の違いから日本の場合はすぐにこの表記方法が普及するか微妙ですが、洋ものを重視する古来からの日本人の性格からはすぐに一般化するのかもしれません。
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再発性多発軟骨炎に伴う大動脈瘤

2021-03-05 13:32:23 | 大動脈疾患
 再発性多発軟骨炎は原因不明の指定難病で、日本国内に約500人の患者さんがいるそうです。この疾患では大動脈壁の脆弱性から大動脈瘤を形成する可能性があり、その、急速に拡大する大動脈瘤に対してALPSアプローチから上行~弓部~下行大動脈置換術を実施した経験があります。急速に拡大する瘤に対してそれまで軟骨炎に対して大量のステロイド剤を使用していたのを、急速に減量し準緊急での手術となりました。ベーチェット病など、他の結合組織病のように組織が脆弱で吻合や止血に難渋した印象はありません。
 こうした患者さんは他の大動脈組織にも同様の急速な変化を来す可能性があり、バルサルバ洞拡大や大動脈弁輪拡張症から大動脈弁逆流による心不全を起こす可能性もあります。軟骨炎とともに定期的な大動脈の検査も必要です。

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