新しい大動脈解離の表記方法について、昨年提案されたものに付随して、その定義についても記載があります。
大動脈解離とは、大動脈内膜の亀裂が中膜を裂いて真腔と偽腔を形成し、その亀裂から偽腔に血流が流れるようになった状態。
内膜血腫とは、真腔と偽腔の間に明らかな交通が認められないもの。大動脈内に、三日月型の高輝度の血腫があることが特徴。
穿通性潰瘍とは、動脈硬化病変が大動脈壁の内弾性板を貫いている状態で、しばしば内膜血腫と間違われる。
日本語の訳が正しく適切かどうかは微妙ですが、大動脈解離に類似した、もしくは関連した病態をもあえて定義説明しています。
そしてB型解離は、Complicated(複雑性)と表記される死亡率の高い症症例と、Uncomplicated(非複雑性)と表記される軽症というか一般的なB型解離を治療方針によって分けています。Complicatedの症例は、破裂と臓器虚血障害を伴うものをいい、このリスク因子として、血圧高値、持続性疼痛、血性胸水、大動脈径>40mm、臨床症状が無くとも画像的に臓器虚血を呈する症例、再入院症例、小弯側にエントリーがある、偽腔径>22mmがあげられており、このハイリスク患者さんの場合は特に注意深く観察する必要があります。それ以外のUncomplicated症例では通常の降圧管理だけでいいということになります。
Complicatedの症例では降圧管理だけでは死亡率が高いため、外科的介入が必要になります。臓器虚血に対する治療として、エントリー閉鎖、バイパスによる血行再建、そして開窓術による偽腔圧の低下と真腔拡大による真腔・分枝血流の増加があります。また破裂に対しては、人工血管置換、エントリー閉鎖による偽腔圧の低下があります。これらを即時に判断することが期待されますし、ハイリスク症例はいつComplicatedの症例に進行するかもしれないのでClose Watchが必要です。