横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

腋窩動脈送血を安定した送血路とするための工夫と教育(第49回日本血管外科学会総会発表)

2021-03-11 15:16:23 | 心臓病の治療
第49回日本血管外科学会総会の演題採用通知がきました。今回は、腋窩動脈送血を安定した送血路とするための工夫と教育というテーマで、特に横須賀市立うわまち病院心臓血管外科では腋窩動脈送血についての教育を重視しており、普段のその注意点などについて報告使用と思います。残念ながら今回はオンライン開催で、ライブでのディスカッションがなく、非常に低調な学会になってしまいそうです。一日も早く新型コロナウィルスのパンデミックが終息して、学会場で活発な議論や交流が出来るようになる日を心待ちにしています。

 以下、抄録です。

【背景】腋窩動脈送血は、上行大動脈送血が困難な症例の代替送血路として重要で、特に胸部大動脈手術や粥腫の多い症例に有用であるが、近年は側方小開胸アプローチによる心臓手術に伴って実施される症例が増えている。腋窩動脈を露出、愛護的な取り扱い、人工血管の縫着、送血中の血圧管理など確実、安全に実施することが求められるため、特に若手医師への手技教育が重要である。
【目的】腋窩動脈送血実施における手技およびトラブルシューティングについて検討し、教育的観点から安全、確実な腋窩動脈送血を確立する。
【方法】2002年から2020年の同一術者における人工心肺手術1024例のうち、腋窩動脈送血を実施したのは200例(20%)で、人工心肺における送血路の実情を検討した。術式の内訳は急性大動脈解離53例、下行~胸腹部大動脈置換45例、冠動脈バイパス術25例、小開胸アプローチによる弁手術28例、正中切開による弁手術49例で、特に上行大動脈または大腿動脈送血が危険と判断した症例に多く採用した。人工血管縫着が198例、送血管留置が2例。
【手技】腋窩動脈の露出は大胸筋の背面に到達し、胸肩峰動脈を根部に向かって追跡して腋窩動脈本幹(第二部分)を露出し10分以内を目標にテーピングする。この際、小胸筋は中央で切離して、術野を拡大。最上胸動脈、肩甲下動脈の間で可能な限り長く剥離して人工血管縫着するスペースを確保。遮断は愛護的にブルドック鉗子を使用し、人工血管8~10mmを端側吻合する。人工血管分後部の末梢側にはターニケットをかけて、送血圧を術中に制御する。
【結果】腋窩動脈送血が中止し、送血路変更を要した症例は8例(4%)で、原因として腋窩動脈が細すぎる症例が2例、解離の進展2例、偽腔圧上昇1例、送血圧上昇2例、遮断による部分的な新たな解離発生1例。送血路の変更先として、対側の腋窩動脈1例、心尖部送血1例、解離している上行大動脈の真腔1例、大腿動脈5例であった。術後の脳梗塞発生は3例あり、内訳は、術前からの頸動脈解離していた大動脈解離が2例、循環停止を伴う下行置換1例であったが腋窩動脈送血との関連は不明。
【考察】理論上安全な腋窩動脈送血も4%に実際の送血に問題が発生し、送血路の変更などを必要としていた。人工心肺開始時の循環の変化を注意深く観察し、送血路の追加や変更など迅速かつ的確な対応を要する症例が多い。
【結語】腋窩動脈送血におけるトラブルシューティングから安全なリカバリーが出来るように普段から手技、対応に精通しておく必要がある。
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3D内視鏡システム納入されました!

2021-03-11 12:07:56 | 心臓病の治療


いよいよ三次元内視鏡システム納入されました!これにより、完全鏡視下の低侵襲心臓手術に推進していく予定です。手術の安全性を最優先にしながら、創を小さくして手術侵襲をさらに小さくする予定です。
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Zoomカンファレンス

2021-03-11 11:58:46 | 心臓病の治療


心臓血管外科カンファレンスでは、Zoomでその週の手術症例報告、術前症例検討、連絡事項などを議題に約30分間行っています。
本日のカンファレンスでは、今週末に行われる胸部外科学会関東甲信越地方会の予演を行いました。これによる質問対策なども行いました。
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自動糸結紮器 = コアノット(Cor-Knot)

2021-03-11 06:53:00 | 心臓病の治療
 糸結びは外科医にとって基本手技で、非常に重要視する技術でもありますが、特に心臓外科医は結紮の手技が手術中に多い診療科です。最も結紮する回数が多い手術は胸腹部大動脈瘤でしょうか。
 さて、今月からこの外科医の煩雑さ?を少しでも解消できるかもしれない、また、手の届かない場所で難しい部位の結紮が器械で出来る、そうした装置が国内販売開始されました。
 海外では以前から使われ、特にロボット手術や小開胸アプローチの心臓手術で外科医の指が届かない部位で人工弁などの縫着するのに結紮縫合する糸をこの装置を使って結紮するのにつかわれています。
 昨日は東京都内の病院に手術指導に行きましたが、そこでこのコアノットを都内第一例目の使用症例に立ち会うことができました。ノットプッシャーを使うよりも確実でスピードも速いので非常に有用と感じました。
 問題はコストの部分で、保険償還できない15万円ほどの装置を病院の持ち出しで使うことを良しとするか、ですが、どうしても結紮が難しい部位に関しては確実な手術のほうを優先してもいいのではないかと思います。
 国内ではどのくらい売れるのかは未知数ですが、コストなどを全く気にしない外科医も国内にはたくさんいるので、そうした外科医に好まれる可能性は高いと思います。
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