大動脈解離において人工血管置換術を行う際は、通常は本来の血流路である真腔に血流が通るように吻合し生理的な血流を維持することが通常ですが、下行大動脈置換術や胸腹部大動脈置換術の際の末梢吻合では、偽腔から腹部分枝や腸骨動脈から血流が還流されている場合があり、この場合は真腔と偽腔の両方に血流を流す必要があります。この場合の末梢側吻合は解離によって形成されたフラップ(Intimal Flap)を一部切除し、真腔部分は全層、偽腔部分は外膜だけをつかって人工血管と吻合します。こうした吻合方法をダブルバレル吻合といいます。
実は筆者は長い間、勘違いしていて、このバレル、という言葉、一般的には桶とか樽という意味の英語で、どうして二つの樽なのか、疑問でした。英語の試験では、a barrel of beer =ビア樽、や原油価格の基準である、1バレル=50ドルなどという時にお目にかかります。しかし、このバレルには違う意味があり、銃身という意味もあるそうです。すなわち、二つの銃身を持つ銃のことをまさにダブルバレル、と呼んでいるのです。二連銃といったり二重銃身といったりするようです、写真にあるような銃身、引き金とも二つあるような、よく西部劇で使われているものは、Double barrel shotgunで、まだ弾丸の争点が連続的に銃で可能になる前の時代、次の銃弾の発射までに時間がかかる為、需要がありました。またこのダブルバレルにはパイレーツオブカリビアンに出てくるようなピストルタイプもあります。いずれにしろ、銃の発展の過程で一時的に使われた系統の銃で、そのあと、回転式の銃弾争点装置であるレボルバーや、明治維新の頃に出現したスペンサー銃などマガジンに銃弾を装填できるタイプで現在の主流の銃が出現して、戦争ではその必要性は少なくなったといってもいいと思いますが、現在もクレー射撃では縦並びのダブルバレルが使われていたり、また護身用でポケットに入るようなピストルにもこのタイプのものがあります。また、ノスタルジーの感覚からか、いまだにこのダブルバレル、人気の銃のようです。
先日いった博物館で、戦地で発掘されたものの中にダブルバレルショットガンを見つけ、感慨深いものがありました。
ちなみに、ダブルバレルで吻合する、ということはよく心臓血管外科医では耳にする言葉ですが、誰一人として上記の内容を教えてくれた先輩はいませんでした。常識だったのでしょうか?