横須賀うわまち病院心臓血管外科

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たばこ税増税=たばこ値上げを禁煙のチャンスに

2018-10-02 05:58:56 | 心臓病の治療
 10月1日よりたばこ税の増税に伴い、たばこが値上げになります。メビウスが480円となり、昔は一箱220円だったのが、2倍以上になります。とは20本で480円で1本あたり24円です。そのうちの税金が13円ほどだそうです。これが今後段階的に増税をして、3年後には1本あたり15円になるそうです。

 新聞に報道されたアンケート結果などでは、この増税を機会に禁煙するという人は、喫煙者の1割ほどとのことです。これは少ないと考えるべきか、多いと考えるべきか。缶ジュースが1本130円ということを考えると、たばこ10本分に相当する。缶ジュース1本飲むよりもたばこ10本吸った方が楽しめる、というのが喫煙者の心理でしょう。1本で5分間楽しめるとすると、10本で1時間以上楽しめるということでしょうか。缶ジュース1本で1時間も楽しめる人はいないと考えると、喫煙はかなり安上がりな娯楽です。これに匹敵する娯楽はおそらく世の中にないのではないでしょうか。缶ジュースと同等の娯楽レベルとするには、今の5倍まで値段を引き上げるのが妥当でしょう。すると、1箱2500円、いかがでしょうか?この値段なら禁煙するという人は多いのではないでしょうか。
 喫煙者の患者さんに、いくらになったら禁煙しますか?と質問すると、だいたい1000円を超えたら、って答える人が多いですね。

 医師の立場としては、病気の悪化の防止、病気発生の防止、国の医療費の削減、家族を残して突然死をする人を少なくする、という意味で禁煙を呼び掛けています。娯楽としての喫煙よりも、健康や幸福を最優先に考えての患者さんへの教育です。

 他にはオリンピック2020を機会に社会マナーの改善を目的に、店舗内や路上、公共の場での喫煙を禁止する動きも出ています。昔は、小学校の職員室に行くと、ほとんどの男性の教諭は喫煙していて、子供が行っても喫煙しながら応対するというのが普通でした。また、市役所などでも、喫煙しながら対応する光景も普通に見られていました。それに比べると、ずいぶん日本社会も成熟してきたものだ、と思います。文明社会に喫煙が登場するのは、コロンブスの新大陸発見によりヨーロッパにもたらされたのがきっかけで、それから400年たって、禁煙という概念がここ2~30年になってようやく前に進んできたといえます。


 値段がいくらになったから、とか、よりも、健康な社会生活、大人としてのマナーを考えて禁煙がすすみ、より健康な日本人が多くなることを期待してやみません。
 少なくとも欧米並みに、1箱1000円までは早急に引き上げるべきでしょう。

 禁煙指導をしているとき、最初に聞くのは、「朝おきてすぐにたばこを吸いますか?吸いたくなりますか?」という質問です。YESの場合の禁煙の成功率は20%以下です。喫煙に対する依存症には、精神依存と身体依存があります。精神依存はこころも持ちようで制御が可能なケースがおおいのですが、これに身体依存が加わると制御不能な可能性が高いといわれています。夜間の就眠中に喫煙していないので、その間にニコチンの血中濃度が下がり、朝起きたときにニコチンの欠乏感が体を襲い、喫煙したいという衝動にかられるのです。こうした人の、禁煙への第一歩は、朝起きてすぐに吸わない、そして出来るだけ午前中は吸わない、こうした努力をすることから始まります。午前中に喫煙しなくなると、必然的に喫煙本数が減少するので、より禁煙に一歩近づきます。

 「喫煙していることが、犯罪なのか?」と開き直る人もいますし、喫煙自体が罪といって犯罪者にたいするような視線を浴びせる人もいるもの事実ですが、要は喫煙本数を減らす、喫煙者を減らすことが重要なのであって、この最終目標に到達する為にはお互いの状況を理解して、ある程度の譲歩、歩み寄りが必要と思います。これはイデオロギーや体制の違う国家間が矛盾を抱えながらも歩み寄ってお互いにWin Winになる関係を模索する国際政治の関係に似ているように最近は感じています。
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