横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

楽器(Saxophone)を演奏する患者さんに腹部大動脈瘤が見つかったら?

2019-06-04 21:59:45 | 大動脈疾患
 外来でお会いした患者さん、腹部大動脈瘤が見つかったということで紹介されてきました。
 その患者さんは吹奏楽を演奏する趣味をお持ちで、それが生きがいだそうです。腹部大動脈瘤を手術すると、術後に腹圧がかけれなくなって演奏ができなくなるのではないか、と不安だそうです。その演奏にはかなり腹圧を必要とするらしく、手術をしたために演奏ができなくなるのでは、もう生きている意味がないのでたとえ大動脈瘤が破裂しても手術は受けたくない、そうおっしゃいました。

 サックスなどの吹奏楽器を演奏するのに、そんなに腹圧をかけて音を出しているんですね。しかしながら、それだけ腹圧をかけて演奏することをしている時こそ、腹部大動脈瘤が破裂する危険が出てくる、そうも考えられます。
 年齢が若い場合はやはり長期的に不安のあるステントグラフトよりは確実な人工血管置換術が望ましいのですが、それによって腹部正中切開の手術痕が残っても、普通通りの腹圧をかけたりは全く問題ありません。よって破裂の危険を冒して演奏するよりは、手術で大動脈瘤を早急に治してしまって、そのあと好きなだけ演奏をすればいいのではないでほうか。そういう説明をしたところ、納得され早急に手術の方向で準備をすることになりました。

 確かに大動脈瘤は通常破裂さえしなければ症状はありません。しかし、予防的に治療する意義の大きい病気であります。
 病気ってなんでもそうですが、早く治す方が治しやすい、安全に治療できる、などメリットが大きいと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

心臓血管外科がチーム医療

2019-06-03 07:52:03 | 心臓病の治療
 チーム医療、ハートチームなど学会でシンポジウムのテーマになったりしていて、最近の話題とも言えます。今更?って感じでの言葉でもありますが、古典的な心臓血管外科のイメージとしては

①自己中心的
②循環器科と仲が悪い
③手術中に怒鳴る
④病院内でも最もパワハラの被害者を作成する存在
⑤白い巨塔のような上下関係、パワーバランス

ではないでしょうか。実際にそのとおりであり、もちろん紳士的な医師もたくさんいますが、残念ながら現実はイメージ通りの部分もあります。そして、その被害者は若手のドクターだったり、コメディカルだったり、一緒に診療する循環器内科だったりします。その被害者が突然職務継続不能になってしまうと、心臓血管外科の診療そのものが成り立たなくなってしまうことを認識していない外科医が存在していることも原因の一つです。「悪気がない」といってしまえば、それに尽きてしまいますが、現状の把握ができない外科医と働くことほど、そのチーム内のメンバーが可哀想なことはありません。

 ハートチームとは、心臓血管外科医に循環器内科医、麻酔科医、臨床工学技士、看護師、それに加えて診療にかかわるすべての職種で、病院の総合力をもって診療にあたる組織のことであり、その組織がうまく機能するためには外科医は王様ではなく、どちらかといえば、リーダーである反面、調整役でもあることが実際です。その総合力、チーム力によって手術の成績やクオリティも影響されます。外科医は常に最高の結果を出すためにすべてを犠牲にしてでも努力する、そんな風潮があるのも事実ですがチーム力全体を引き上げる意識がその前に必要です。
 そうしたことを理解していない現状からいろんな悲劇が起こってしまっている、、そうした話を聞くたびに悲しくなります。

 一方、チームのメンバーが仕事をしていて楽しいと言ってくれたり、治療や手技がうまくいったり、適切に自分の部署の役目を果たしたことを素直に喜んでいる姿を見ることは非常にうれしく日々思います。

 本日は県外の施設からチームでMICSの手術を見学に来てくれる予定になっていますが、横須賀市立うわまち病院全体のチーム力というか、楽しく仕事をしている様子を見せられたらいいと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする