「おとうさん、おとうさん!」
血相を変えた娘。かなり混乱している。家の裏手にある畑へ飛んでくるとは、よほどの一大事?振り上げた備中鍬が宙ぶらりんで止まった。父親の顔になって振り返った。
「どないしたんや?ビックリさせてからに」
「はよ、はよ来て、マジやばいんや」
「やばい?」
娘の部屋は洋服でごった返している。久しぶりに身の回りを片付ける気になったのだろう。それにしても一大事はどこにある?娘を振り返ると、部屋に入れないでいる。表情は固まったままだが、手を伸ばして指した。
「……カ、カメムシ!」
「カメムシ?」
拍子抜けした。屁こき虫と別名を持つカメムシ、いやな奴だ。刺激を与えると臭い匂いを出す。田舎家ではどこにでも出現して、珍しくもなんともないが、始末となれば困る。
「そこの!シャツにくっついとるやろ!」
よく見ると、確かに白いシャツに黒いものが張り付いている。思わず笑ってしまった。
「こんなもん、自分で退治せんかいな」
軽口を叩きながらも、ティッシュで手早く丸め込んで、部屋を出た。外に捨てればいい。
「ありがとう、おとうさん」
娘の言葉で父親は久しぶりのヒーローになった。(父親離れしてる娘との距離を縮めてくれたカメムシを、悪者扱いしとる、俺)苦笑しながら、カメムシをゴミ箱に放り込んだ。
「
血相を変えた娘。かなり混乱している。家の裏手にある畑へ飛んでくるとは、よほどの一大事?振り上げた備中鍬が宙ぶらりんで止まった。父親の顔になって振り返った。
「どないしたんや?ビックリさせてからに」
「はよ、はよ来て、マジやばいんや」
「やばい?」
娘の部屋は洋服でごった返している。久しぶりに身の回りを片付ける気になったのだろう。それにしても一大事はどこにある?娘を振り返ると、部屋に入れないでいる。表情は固まったままだが、手を伸ばして指した。
「……カ、カメムシ!」
「カメムシ?」
拍子抜けした。屁こき虫と別名を持つカメムシ、いやな奴だ。刺激を与えると臭い匂いを出す。田舎家ではどこにでも出現して、珍しくもなんともないが、始末となれば困る。
「そこの!シャツにくっついとるやろ!」
よく見ると、確かに白いシャツに黒いものが張り付いている。思わず笑ってしまった。
「こんなもん、自分で退治せんかいな」
軽口を叩きながらも、ティッシュで手早く丸め込んで、部屋を出た。外に捨てればいい。
「ありがとう、おとうさん」
娘の言葉で父親は久しぶりのヒーローになった。(父親離れしてる娘との距離を縮めてくれたカメムシを、悪者扱いしとる、俺)苦笑しながら、カメムシをゴミ箱に放り込んだ。
「