それは突然に訪れた。
一つ違いの兄。それも二人きりの兄弟との別れだった。当時の私は厄年、兄は後厄。総ての厄を兄が引き受けてくれたとしか思えない出来事が起きた。
その日、いつも朝早く仕事に出かけて顔を合わせる機会のない兄が珍しく顔を覗かせた。
「おはよう。いまから仕事に行ってくるわ」
それが兄の声を耳にした最後だった。にこやかに挨拶をする兄の顔を今でも思い出す。
兄が仕事に出かけた四時間後。入った電話は兄の死を知らせるものだった。仕事の現場は増築中の工場。5メートル近い足場から足を踏み外したのだ。脳挫傷で即死だった。
当時、他のことは考えられない日々が続いたが、落ち着いたころに、ふと考えた。あの朝久し振りに顔を見せたのは、なにか兄自身に別れの予兆があったのだろうか?
災厄を引き受けてくれた兄のおかげで、人生六十六年、無事今日に至っている。
一つ違いの兄。それも二人きりの兄弟との別れだった。当時の私は厄年、兄は後厄。総ての厄を兄が引き受けてくれたとしか思えない出来事が起きた。
その日、いつも朝早く仕事に出かけて顔を合わせる機会のない兄が珍しく顔を覗かせた。
「おはよう。いまから仕事に行ってくるわ」
それが兄の声を耳にした最後だった。にこやかに挨拶をする兄の顔を今でも思い出す。
兄が仕事に出かけた四時間後。入った電話は兄の死を知らせるものだった。仕事の現場は増築中の工場。5メートル近い足場から足を踏み外したのだ。脳挫傷で即死だった。
当時、他のことは考えられない日々が続いたが、落ち着いたころに、ふと考えた。あの朝久し振りに顔を見せたのは、なにか兄自身に別れの予兆があったのだろうか?
災厄を引き受けてくれた兄のおかげで、人生六十六年、無事今日に至っている。
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