こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

ふるさとは近くにありて

2015年11月02日 03時01分32秒 | 文芸
 加西市の公式キャラクター『根日女』を主人公にオリジナルな舞台を作ってほしい。依頼に顔を見せたのは青年会議所のメンバー。
「齋藤さんのお芝居を魅せて頂きました。その上でお願いにあがりました」
 メンバーが観たのは『忠臣蔵』。姫路で主宰するアマチュア劇団の定期公演だった。
「加西在住と伺っておるんですが」
「ええ。生まれも育ちも生粋の加西っ子です」
「ふるさとの町おこし企画にご協力いただけませんでしょうか」「分かりました」
 二つ返事で引き受けた。丁寧な依頼を断る気にはならない。まして『根日女』である。
 播州風土記に記された地元、玉丘古墳にまつわる美女伝説のヒロインが『根日女』。加西っ子の心を魅了してやまない王女を戯曲化して舞台にのせる。考えただけでワクワクする。
『根日女』プロジェクトがスタートした。加西側のスタッフと会合を重ねた。その過程で地元に暮らしながら無知だった加西の魅力に開眼した。(オレのふるさとって、こんなに素敵だったんだ)。心がうちふるえた。
 加西はド田舎。いつもそう卑下していた。だから姫路や神戸に足を伸ばすのが常だった。じっくりふるさとを振り返る機会は皆無だった。いまだって加西に暮らしながら姫路が生活の中心。趣味のアマチュア劇団活動も加西に目を向けることはなかった。
 しかし、街づくりに賭ける若者たちと関わると、それまでの考え方が愚かだったのに気づいた。
 加西市は豊かな自然と歴史を併せ持つ。播州歌舞伎の発祥の地だ。古墳群や寺社仏閣がひしめき合っている。
 曲がりなりにも演劇をやっていて、わが町に連綿と伝わる播州歌舞伎の存在を知らずにいた。恥ずかしく情けなかった。
 加西の歴史を彩った『根日女』についてだけでなく、『五百羅漢』『法華山一乗寺』…と資料を読み漁った。知れば知るほど、ふるさとの限りない魅力につかれた。
 加西の歴史と自然をまともに見据えて書き上げた『根日女』の脚本はスタッフに好評だった。
「こんな魅力に気付かなかったなあ。加西が生活の拠点なのに」「私たちもふるさと加西を見直すいい機会を得られたと思います」
 口々に言い合うメンバーたちにふるさと回帰の思いを強く感じた。

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