寂 寥 感
末期癌を抱え
歩くこともままならぬ老女は
長年住み慣れた家を離れた
空き家になってしまった我が棲家
いまはサービス付き高齢者住宅の一室
申し訳程度の腰窓だけのせいか殺風景
掃き出し窓ならば季節の風も感じるのだが
過去の思い出から遮断された時空間
妹 老いた父母 弟 を見送り
独り身で暮らしてきた老女
老女は呟く
「こうして独りでいると言葉まで忘れてしまう」
髪の毛が抜け落ちるように 記憶までも失っていく
残るのは寂寥感
癌の痛みにもじっと耐え
泣き言ひとつこぼさない老女
痩せ細った老女の手を握り返し
「また来るね」と手を振る
遣る瀬無く
せつなく
どうしようもない
老女の最期を見送り
ささやかな葬式と家族が埋葬されている墓に納骨した
末期癌を抱え
歩くこともままならぬ老女は
長年住み慣れた家を離れた
空き家になってしまった我が棲家
いまはサービス付き高齢者住宅の一室
申し訳程度の腰窓だけのせいか殺風景
掃き出し窓ならば季節の風も感じるのだが
過去の思い出から遮断された時空間
妹 老いた父母 弟 を見送り
独り身で暮らしてきた老女
老女は呟く
「こうして独りでいると言葉まで忘れてしまう」
髪の毛が抜け落ちるように 記憶までも失っていく
残るのは寂寥感
癌の痛みにもじっと耐え
泣き言ひとつこぼさない老女
痩せ細った老女の手を握り返し
「また来るね」と手を振る
遣る瀬無く
せつなく
どうしようもない
老女の最期を見送り
ささやかな葬式と家族が埋葬されている墓に納骨した