終戦後のひと時、虱が蔓延して困ったことを思い出した。
一説によると外地から復員した兵隊さんが持ち込んだらしい。
虱害は瞬く間に全国に広がった、暖かい着衣類に集団で住みついて、体中ところ構わず吸血する。
もう虱に対面することはないが、衣類の縫い目にモゾモゾうごく小さな吸血鬼を思うと今でも寒気がする。
虱の駆除は捕まえてひねりつぶすか、衣類ごと釜ゆでにするかであった、生命力と繁殖力の強い虱を根絶することは難事であった。
虱が姿を消したのは「DDT」という化学殺虫剤の威力によるものだとおもう。
学校では白い粉末DDTを頭から足の先まで吹きかけられて、首筋から吹き込まれた粉末が袖口から漏れだしたりした。
家でも畳をあげてくまなく散布し、筒型の散粉器を使って寝具や何やらにプカプカとふりかけた。
その後発癌性の嫌疑がかけられたDDTは姿を消した。