Kちゃん(年長):
Kちゃんが使っているのは「うたえる!ひける!ピアノ曲集1」)の本です。載っているのはKちゃんが今までに習った右手ド〜ソ、左手ド〜ファの範囲の音だけで弾ける歌ばかり。その中で 比較的やさしい歌や知っている歌から選んで弾いているのですが、今日、Kちゃんがピアノの前に座って、譜面台に置いたテキストをパッと開いたら、たまたま開いたページに興味が引きつけられたようです。
「これどんな歌?」と先生に聞きました。
それは「1週間」というロシア民謡のページ。かわいい女の子が、お買い物に行ったり お茶を飲んだり お風呂に入ったりしているイラストがついています。
♪月曜日に市場へ出かけ、糸と麻を買ってきた
テュリャ、テュリャ、…
こんなのよ、と先生が軽く口ずさんだら、Kちゃんも途中から後について歌い出しました。全然知らない歌なのに。しかも子どもの歌にはほとんどない、マイナーキー(短調)の歌なのに。
Kちゃんのセンス、すごいかも。
Kちゃんが気に入ったようなので、先生はもう一度初めから、ちゃんとピアノで伴奏を弾きながら歌いました。
「ほら、ここに言葉が書いてあるから歌おうよ」
見開きページに、1週間ぶんの暮らしを歌った歌詞が書いてあります。
Kちゃんは歌詞を見ながら、わけわかんないながらも一生懸命に歌っています。
サビのところは調子いいので、元気いっぱいです。
テュリャ、テュリャ、テュリャ、テュリャ、テュリャリャ
テュリャ、テュリャ、テュリャ、テュリャリャ〜
「もう一回!先生ピアノ弾いてね」
もう一度大きな声で。
歌い終わって、「弾いてごらんよ」先生が誘いました。
初めは「え〜?」と言っていたKちゃんですが、「ほら、知ってる音符ばっかりだよ」と言われて、両手を真ん中のドに準備し、ひとつひとつ音符を見ながら弾き始めました。
ラド ミミミレ ミミミレ ミレドード、
ミレミー レドレー ドシドシラーラ…
弾ける弾ける!
「この歌ね、1つ記号があるの」
先生は楽譜を指差しました。
「ここのドとドが、線でつながってるね。これは『タイ』って言って、2つの音符がつながった印。だから、2番目の音は『ドード』って弾かないで、『ドーオ』って伸ばすんだよ」
先生は「タイ」記号のカーブした線を、赤エンピツでなぞりました。
「タイ!」
Kちゃんは先生から赤エンピツを受け取って、楽譜にたくさんあるタイ記号をひとつひとつなぞり、その上に「タイ」と書きました。カタカナのイの字が、左右裏返しの「鏡文字」になってる
たくさんあるタイ記号をぜんぶなぞり、鏡文字の「タイ」を書き加えて、エンピツを置き、今度はちゃんとタイ記号を守りながら、Kちゃんは弾きました。
ラド ミミミレ ミミミレ ミレドーオ、
ミレミー レドレー ドシドシラーア…
知ってる歌が弾ける、というのも嬉しいことだけど、こうして知らない歌でも、しかもテキストでは終わりの方で、楽譜も難しくても、心惹かれた曲なら、小さな生徒にもちゃんと弾き通す力があるんだなあ、記号だっておぼえられるんだなあ、と改めて思いました。