自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

キクバヤマボクチとの出合い

2013-01-06 | 花と実

山道の斜面で,アザミの枯れた頭花を見かけました。

一本の細い茎の先に数個の花の名残りがありました。とても弱々しい茎で,ノアザミのそれとはずいぶん違っています。葉も,枯れたままではありますがちゃんと付いています。棘はありません。

冠毛は見た目,とても頑丈で硬そうです。実際,大した硬さです。外敵から身を守るのにかなりの威力を発揮していると思われます。

調べると,どうやらキクバヤマボクチのようです。漢字で書くと“菊葉山火口”。『山に咲く花』(山渓ハンディ図鑑)の解説に「山地の草原や林縁に生え,高さ0.7から1㍍になる多年草」とあります。 

和名にボクチ(火口)ということばが使われているので,気になりました。発火法で使うホクチを指すことばだからです。他のことばと合成で使われているため,たまたま濁音になったのでしょう。

では,このことばが使われた事情があるのでしょうか。

もちろん当たってみました。結果,すぐにわかりました。その昔,この植物の葉を乾燥させて叩いた後,あの裏にある毛を集めて火口にしたのだそうです。これはヨモギからモグサを作って利用するのとそっくりではありませんか。

わたしは,元気な葉の裏をそう思って見たことがありません。今度元気な姿を見たら,それを確認して,できれば実際に毛をたくさん集めたいと思います。そんな気持ちで参考までに一株だけ家に持ち帰って植木鉢に植えました。たくさんの葉が手に入らなくても,まずはちょっと確認できればしめたものです。 

もう一つおもしろいことがあります。この植物は愛知県以西にしか分布していないのだそうです。岐阜県から北海道にかけてはオヤマボクチ(雄山火口)が生えていて,四国には両方があるといいます。

さらに,ハバヤマボクチ(葉場山火口)という種もあるようです。やはり名に“火口”が付いているのは,発火時に利用されたことを表しているのでしょう。

こんなわけで,キクバヤマボクチとの出合いは印象記憶として脳裏に刻まれることになりました。